韓国サッカー協会(KFA)のキム・パンゴン国家代表戦力強化委員長が下した選択は正しかった。
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今から3年6カ月前のことだ。当時、キム・パンゴン委員長は多くの候補と会った末、現在のパウロ・ベント監督を次期指揮官に選んだ。
就任初期のベント監督に対する一部の世論は否定的だった。ただ、ベント監督が異例のスピードでW杯本大会出場を決めたことで、キム・パンゴン委員長と協会が下した決定が間違っていないことが証明された。
キム・パンゴン委員長が分析するW杯アジア最終予選での成功要因は、ベント監督をはじめとするコーチングスタッフの基本的能力の高さにある。
ベント監督は長年ともに活動をしてきたスタッフと、徹底的に分業化されたトレーニングシステムを構築している。練習セッションやプログラムも、選手たちが満足できる水準で組まれている。
これまで韓国代表を率いてきた指導者たちは、選手の要求を満たすことができず、チームをコントロールすることができなかった。
ただ、ベント監督体制の今の韓国代表は違う。監督、スタッフ、選手の間で、確固たる信頼関係が築かれている。
キム・パンゴン委員長は「選手たちの満足度が高い。選手が満足すれば、それだけアウトプットができる仕組みが生まれている。それが選手たちを能動的にさせる要因だ」と語る。
明確な哲学、推進力、そして粘り強さもベント監督の長所だとキム・パンゴン委員長は説明する。
ベント監督は後方からのビルドアップを通じて、短いパスをつないでゴールに迫るスタイルを打ち出してきた。ただ、このスタイルは韓国代表にハマらないという評価も多く、実際、これまでの国際Aマッチではパフォーマンスが良くない試合も多かった。
それでも、ベント監督は自らの理念を貫き通した。その結果、どんな相手であっても確固たる試合モデルを構築し、メンバーが変わってもスタイルが崩れることのないチームを作り上げることに成功した。
何より、協会の支援があったからこそ、ベント監督体制の基盤が整ったことは言うまでもない。
欧州クラブや母国ポルトガル代表での指導歴もあるベント監督をはじめ、コーチングスタッフをめぐっては多額の人件費がかかる。それでも、チョン・モンギュ協会長は「お金の心配はせずに選べ」とキム・パンゴン委員長を後押しした。それがベント監督の抜擢につながり、結果としてW杯アジア最終予選での順調な突破ももたらしたのだ。
昨年には東京五輪とW杯予選が重なる時期もあった。そこでも、協会は五輪代表ではなく、A代表のメンバー招集を最優先に据えた。結果的にその決断がベント監督を支え、問題なくチームを編成して予選を戦うことができた。
最終予選での日程変更も的中した。韓国代表は当初、第2戦で予定されていたアウェーでのレバノン代表戦をホーム開催に変更し、初戦からの3試合をすべてホームで戦った。
この過程ではレバノン代表に対する費用も発生し、チョン・モンギュ協会長の決断によって決して少なくない支出もあったが、結果として選手の負担を減らした。
また、アウェーでのイラン代表戦に際してチャーター機を飛ばしたのも、選手のコンディションに大きな力となった。そのおかげで、“地獄のアザディ遠征”で貴重な勝ち点を確保することができた。
今になっての話ではあるが、最終予選が始まった当初、韓国代表のパフォーマンスが良くなかったときには、協会内でもベント監督に対する否定的な見方もあったという。一部役員は監督交代という極端な主張もしたほどだ。
それでも、協会長をはじめとする全面的な信頼を背に、ベント監督は現在までW杯アジア最終予選を無敗で戦っている。
キム・パンゴン委員長は「協会と会長の支援がなかったら、ベント監督がこんなにも早くW杯本大会出場を確定することはなかったはずだ」と力強く伝えた。
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