これは暴行なのか、それとも愛弟子への親しみの表現なのか。
韓国プロサッカーチーム、蔚山HDでの“初対面”の場で起きたシン・テヨン監督の行動をめぐり、議論が広がっている。
シン・テヨン監督は今年8月、蔚山HDの選手たちと初めて顔を合わせた場で、かつての教え子であるチョン・スンヒョンと再会した。チョン・スンヒョンは、サガン鳥栖(2017~2018)、鹿島アントラーズ(2018~2019)でもプレーした経歴を持ち、日本のサッカーファンにも馴染み深い選手だ。
その際、シン・テヨン監督は再会の喜びを表した行動だったとして、右手でチョン・スンヒョンの頬を叩いた。この場面は、蔚山HDが制作していたドキュメンタリー映像の中に記録として残されていた。
しかしシーズン終了後、チョン・スンヒョンが「シン・テヨン監督から暴行を受けた」と主張したことで状況は一変する。師弟関係は崩れ、両者は暴行の加害者と被害者という構図に置かれることになった。
チョン・スンヒョンは「性暴力であれ暴行であれ、加えた側が“違う”と思っていても、受け取る側が暴行だと感じれば暴行だ。私だけでなく、ほかの選手たちも同じ考えだと思う」と語り、強く批判した。
その後、チョン・スンヒョンの主張を裏付けるかのように、問題の映像が流出。映像を見る限り、シン・テヨン監督が頬を叩いたという事実自体は否定できない。
ただし、その意図や力の強さをめぐっては意見が分かれている。暴行と呼ぶには力が弱く、監督と選手の間にある親密な関係の中で起こり得る行動だと受け止める声も少なくない。
論争が拡大する中、シン・テヨン監督は「親しみを込めた表現だった。もしスンヒョンが暴行だと感じたのであれば謝罪する。ただし、実際に暴行や暴言があったのであれば、今後は監督職を務めない」と反論した。
映像が公開されたことで、ファンの間でも意見は分かれている。一部のファンからは「久しぶりに再会した教え子に対して、指導者が取り得る範疇の行動だ。これを暴力と断じ、ベテラン選手たちが監督を解任へと追い込むのは適切ではない」と、監督側を擁護する声が上がっている。
一方で、「暴行であること自体は事実であり、“親しみの表現”という説明は成り立たない」という意見も根強い。チョン・スンヒョンに怪我を負わせるほど強く叩いたわけではないとしても、行為そのものが問題だという指摘だ。
さらに「重要なのは力の強さではなく行為そのものだ。多くの選手の前で受けた屈辱感も考えるべきだ。暴力を振るう指導者は、いかなる理由があっても指導者であってはならない」とする声もある。
シン・テヨン監督は、蔚山HDでの成績不振や選手団との不和に対する責任を取り、すでに退任している。チョン・スンヒョンがシン・テヨン監督を暴行罪で告訴しない限り、この問題は大事には発展せず、収束に向かう可能性が高いとみられているが、議論は今後も続きそうだ。
(記事提供=OSEN)
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