韓国人歌手キム・ジョンミンとハロプロ出身歌手・谷ルミコの息子で「キム・ドユン」の韓国名も持つU-17日本代表FW谷大地(16)が、U-17アジアカップの舞台で存在感を示した。
【写真】「兵役問題あるから日本代表に?」谷大地めぐり韓国で“不毛な論争”
谷は4月11日(日本時間)に行われたU-17アジアカップ・グループB第3節のオーストラリア戦で後半33分から途中出場すると、わずか8分後の同41分に左足で大会初ゴールを決めた。
試合は日本が2-3で敗れ、UAE、オーストラリアとともに3カ国が1勝1分1敗の勝ち点4で並んだ。ただ、日本が得失点差で上回ってグループ1位となり、決勝トーナメント進出とともにU-17ワールドカップ出場権を獲得した。
ゴールを決めた谷大地は韓国人の父と日本人の母の間に生まれ、韓国と日本の二重国籍を持つ。
父のキム・ジョンミンは韓国の人気歌手で、過去にはラッツ&スターの名曲『め組のひと』を『ドナルド&将軍』なる曲名で韓国語カバーしたことがある。
母の谷ルミコは1999年に「三佳千夏(みよし・ちなつ)」の芸名で「モーニング娘。&平家みちよ妹分オーディション」に出場し、第1回グランプリを獲得。その後歌手デビューし、『Unchain My Heart』『Love, Yes I do!』『あなたのシャツとLove song』などの楽曲をリリースした。
そんな両親のもとで育った谷大地は、過去に韓国でFCソウルU-15ユースの五山(オサン)中学で韓国名「キム・ドユン」としてプレーし、韓国サッカー界の有望株に成長した。現在は日本でサガン鳥栖U-18に所属している。
ただ、谷大地が日本に渡り、世代別の日本代表としてプレーすることには韓国国内で論争と惜しむ声が上がっている。
ほんの数年前まで「韓国の有望株」として注目された選手が、日本代表のユニホームを着て国際大会でゴールを決めた姿は、韓国で衝撃とともに受け止められている。
実際、谷大地は身長184cmという恵まれた体格とテクニックを武器に、日本のユース世代でも早くから頭角を現しており、長身フォワードが少ない日本サッカー界において希少価値の高い存在と評価されている。
谷大地の選択は、単なるいち個人の進路決定ではなく、韓国サッカーのユース育成システムが抱える構造的問題を浮き彫りにしている。
韓国のユースシステムは依然として「全国大会の成績重視」という旧態依然なシステムにとどまっており、インフラ不足や兵役問題も重なって、多くの有望株がサッカー以外の悩みに苦しんでいるのが現実だ。
韓国代表FWソン・フンミン(32、トッテナム)がアジア大会金メダル獲得で兵役特例の恩恵を受けたエピソードや、欧州で長くプレーした元韓国代表FWソク・ヒョンジュン(33)の兵役をめぐる物議などは、こうした構造的問題の断面を示している。
ただ、父キム・ジョンミンは「息子の夢を支持する」と語っている。実際のところ、日本のサッカー環境がより整っているだけに、息子のために両親として現実的な選択をしたというわけだ。
韓国サッカーは今、人口減少と有望株の流出という二重の危機に直面している。
谷大地のように、他国のユニホームを着て韓国代表と対峙するケースは今後さらに増える可能性がある。
実際、今大会で韓国はグループCを2位通過しており、準決勝で“日韓戦”が実現する可能性もある。仮にその舞台で谷大地が韓国相手にゴールを決めたり、勝利に貢献する活躍を見せたりすれば、再び韓国サッカー界に大きな波紋が広がることだろう。
今からでも、ユース育成システムの改革やインフラへの投資拡大、そして選手たちが夢を追い続けられる制度の改善が急がれる。
谷大地という存在は、韓国サッカーが失いつつある“何か”を赤裸々に突きつけている。
(記事提供=OSEN)
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