韓国で開催されたE-1選手権の観客動員が振るわなかったのは、決して偶然ではない。
7月7日から15日まで、龍仁(ヨンイン)ミルスタジアムで行われた男子決勝大会全6試合の総観客数は「3万2136人」。1試合あたりの平均はわずか「5356人」だった。
最終日の“日韓戦”を除いて1万人を越えた試合はなく、結果的に「失敗した大会」と言わざるを得ない。男子でこの状況なら、女子の動員は言うまでもない。
もちろん、E-1選手権が元から大規模な集客を見込める大会ではないのも事実だ。
3年前に日本で開催された同大会も観客数は計3万8378人にとどまっており、今回と大きな差はない。当時は新型コロナウイルスの影響が残っていたとはいえ、そもそも一般的な人気を得にくい大会といえる。
特に、韓国と日本は本来の主力である欧州組が出場しないため、話題性が欠けてしまうのは避けられない。2019年に釜山(プサン)で行われた大会も観客は計4万181人で、1試合平均は7000人程度だった。この年もやはり欧州組は出場していなかったが、当時はDFキム・ミンジェ(バイエルン・ミュンヘン)やMFファン・インボム(フェイエノールト)など、後に欧州進出を果たす現在の主力選手が参加していた。
もっとも、今さら興行失敗を責める声が上がっても意外なことではない。ある程度予想された結果だったというべきだろう。
ただ、考えるべき点はある。E-1選手権は東アジア3カ国、日韓中の持ち回りで開催される大会だが、4年に一度のアジアカップであればどうだっただろうか。
韓国サッカー協会(KFA)のチョン・モンギュ会長は長らく「アジアカップ誘致」を公約として掲げてきたが、いまだ実現には至っていない。
2022年にはコロナの影響で開催を断念した中国に代わって大会を招致しようと尽力したが、最終的に開催権はカタールに渡った。今年初めに4選連続で会長職を続けることが決まったチョン会長は、主要な公約として再びアジアカップ誘致を掲げた。2031年大会を韓国で開催するという意志だ。
アジアカップで興行に成功した代表例として知られるのが、2015年のオーストラリア大会だ。当時は1万人未満の観客しか入らなかった試合がわずか6試合。多文化・多民族国家という特性に加えて1月の真夏という観光シーズンも追い風となり、「興行的成功」を収めることができた。
2019年のUAE大会、2023年のカタール大会は西アジア諸国が地理的に有利で、ワールドカップのインフラを活かしたカタール大会では平均観客数が2万9565人に達した。
近年の韓国はK-カルチャーの影響もあり国際舞台で存在感を高めているが、それでも韓国でアジアカップを開催した場合に「興行成功」となる可能性は高くない。例え欧州組が出場する韓国代表の試合が注目を集めたとしても、「それ以外」の試合が関心を呼ぶとは考えにくい。
観客動員を増やすためには、海外から遠征する各国のサポーターだけでなく、韓国国内の一般観客の動員も必要だ。しかし、例えばUAEやカタール、ウズベキスタンといった「馴染みのない国同士」の試合に、果たしてどれだけの一般の韓国人が興味を持つだろうか。
アジアカップは開催国や韓国だけのための大会ではない。全24カ国が参加する「アジアの祭典」だ。観客動員力が決して強いとはいえない韓国に対して、アジアサッカー連盟(AFC)が慎重な姿勢を見せるのも当然だ。これが過去に誘致失敗し続けている理由のひとつといえる。
さらに言えば、韓国はスポーツマーケティングの分野でも他国に後れを取っている。
今回のE-1選手権もそうだが、現在AFCの公式スポンサーに名を連ねる韓国企業は存在しない。人気・興行・財政面のいずれをとっても、韓国に開催国としての「説得力」は乏しい。
言い換えれば、基本的に韓国は「アジアのサッカー大会を開催する環境ではない」ということになる。
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