“15禁”韓国ホラーのタイトル変更要求騒動、「実在する地名問題」で過去のケースを振り返る

2023年08月29日 映画 #韓国映画

「大衆は客観的な視点で観るため、むしろ広報効果となり得る」

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「恐怖、ミステリージャンルを信じる市民がいるので心配だ」

バラバラ死体をテーマにした韓国ホラー映画『雉岳山』(原題)の公開可否に注目が集まっている。

というのも、本作は、江原道・原州市(カンウォンド・ウォンジュシ)に実在する山岳・雉岳山(チアクサン)がタイトルに使われていることから、地方自治体が強く反発し、上映禁止仮処分申請と損害賠償請求訴訟など、強力な法的措置を取る計画だと明らかにしたからだ。

原州市が“雉岳山”使用を拒否するワケ

内容は、1980年代にバラバラ死体が発見されたという“雉岳山怪談”がテーマで、15歳以上が観覧可となっている。この怪談はあくまでも虚構のものだ。

『雉岳山』ポスター

だが最近、韓国では全国的に凶悪犯罪が相次いで起きており、住民たちが不安を訴えて模倣犯罪の発生を憂慮しているという理由で、原州市は雉岳山をタイトルに使うことに強く反発している。

『雉岳山』製作会社は23、24日の2日間、原州市との協議を行った。その過程で、原州市は「実在の地名である雉岳山がそのまま使われたタイトルの変更」「劇中の雉岳山という台詞の削除、または無音処理」「劇中の事件と、実在する地域で起きた事件は無関係で、虚構の内容を加工したことを告知する」「ネット上に広がった監督個人の非公式ポスターの削除」などを要求した。

しかし、製作会社は、映画が虚構であることを告知する字幕が入っているため問題はないという立場を示している。原州市が要求した台詞の削除などは、主演俳優の一人が兵役中のため難しいという現状も明かした。

このように、双方の意見が交錯する中、地域住民と専門家たちは相反する反応を見せている。江原道原州市出身で、春川(チュンチョン)の大学に在学中のある学生は、「以前公開された映画『コンジアム』もそうだが、ホラー、ミステリー作品の場合、実際に起きたことだと信じる人がいるため、このような現象は控えてほしい」と話した。

反面、大衆文化評論家のキム・ソンス氏は、こう語る。

「地名が特定の作品と繋がることで、周知される効果がより大きい。作品で実際の地名と事件は関係がないと知らせれば、大衆はより客観的に見ようと思う」とし、「むしろ、映画の舞台になった場所や地域が観光名所に変わるケースも多いので、地方自治体では一つのコンテンツとして、どのように使うか戦略を立てることが重要だ」と助言を送っている。

過去にも、地方自治体が実際の地名をコンテンツに使うことに強く反発したケースが複数ある。

むしろ注目集め大ヒットのケースも

2016年には、全羅南道・谷城郡(チョルラナムド・コクソングン)が、日本の俳優・國村隼も出演した映画『哭声/コクソン』に憂慮の意を表わした。だが結局、谷城郡と製作会社が映画名を漢字の『哭聲』(原題)と表記し、冒頭に「この映画は実際の地名とは関係ない」という字幕の挿入することで事なきを得た。

このような交渉を経て公開された『哭声』は、わずか1週間で損益分岐点である300万人を突破し、累計観客動員数687万人を記録する大ヒット作となったのだ。

そして2018年に公開された映画『コンジアム』も、京畿道広州市(キョンギド・クァンジュシ)に実在する“昆池岩精神病院”から取ったタイトルだ。本作も公開前に一部近隣住民が反発しただけでなく、精神病院の建物および敷地所有者が名誉毀損を主張して上映禁止仮処分申請をした。

『哭声/コクソン』ポスター
『コンジアム』ポスター

しかし、裁判所は当時「『コンジアム』は所有者個人をテーマにした映画ではないので、所有者の名誉と信用が毀損されるという主張は受け入れられない」として、「怪談は映画が製作される前から世間に広がっており、色々なメディアでも報じられてきた」と、タイトルの使用に問題がないという判断を下した。

こうした過程が注目を集め、青少年観覧不可作品だった『コンジアム』は損益分岐点の70万人を越えて計267万人の観客を動員し、異例のヒット作となった。

前出のケースは韓国国内でのことだが、海外を舞台にした作品でも問題になったことがある。

昨年9月に公開されたNetflixのオリジナルシリーズ『スリナム』(原題、邦題『ナルコの神』)は、南米の国家スリナムを支配した麻薬王に濡れ衣を着せられた民間人が、韓国・国家情報院の秘密任務を受諾して起きる事件を描いた作品だ。

世界規模のプラットフォームを通じて190カ国で公開されたこのドラマは、英題に“スリナム”を使ったことで、スリナム政府から抗議を受けた。当時、スリナム外交部長官は、国家のイメージ毀損に対する強い不満を提起し、法的措置まで示唆したほどだ。結局、本作の英題を『ナルコス・セインツ』(Narcos-Saints)に変更することで合意に至った。

このように、地名と作品タイトルを巡って、韓国ではさまざまな議論が行われてきた。今回の『雉岳山』に関しては、『哭声』のケースに倣って折衷案で終結するのか、それとも『コンジアム』のように司法に委ねられるのか、注目が集まる。

『雉岳山』は9月13日より韓国で公開予定。15歳以上が観覧可。

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