姓が自国の文字で一文字、名も二文字がほとんどである韓国では、日本に比べて同姓同名が多い。
例えば、韓国最大のポータルサイトNAVERで「ユナ」と検索すると、タレントから歌手まで30人もの著名人が表示される。
同姓同名が多いために起こる混乱は、芸能界でも見受けられる。最近では、少女時代のテヨンが被害を受けた。
きっかけは、全羅北道・長水(チャンス)郡の「韓牛&リンゴ祭」に、テヨンが出演するという内容のポスターが拡散されたことだ。
そのポスターにはテヨンの名前と写真が大きく掲載されており、一部ユーザーが長水郡庁にダイレクトメッセージで出演確認を行ったとする投稿も広まり、大きな関心を集めた。
しかしテヨンの所属事務所SMエンターテインメントは「テヨンは当該イベントに出演しない。そもそも出演オファー自体を受けていない」と否定。実際に出演が予定されているのは、同名のトロット歌手キム・テヨンだったという。少女時代・テヨンの本名も「キム・テヨン」だ。
この騒動は、少女時代・テヨン側が「オファー自体がなかった」と明確に述べているにもかかわらず、郡庁側が「最終的に不発になった」と説明したことで、「あたかもテヨンがオファーを断ったかのように見える」と今も批判が噴出している。
さらに、出演が決まっていたキム・テヨンの所属事務所が「キム・テヨンは今回の件を通じて大きな混乱と傷を受けた」と述べ、出演を取り下げることを決定した。
少女時代のテヨンとキム・テヨンに傷だけを残した今回の騒動。このような苦労を避けるため、本名がすでに有名人に使われている韓国スターは、対策として“芸名”を使うケースが多い。
例えば、『イカゲーム』や『椿の花咲く頃』で知られる俳優カン・ハヌルは、2023年9月に出演したバラエティ番組で、自身が芸名を使う理由について明かしている。
彼は「僕の本名は“キム・ハヌル”だ。ところが、すでにとても有名な先輩が活動していて、自分の名前を変えたほうがいいと思い、デビューするときにカン・ハヌルに変えた」と語った。その「とても有名な先輩」とは、女優キム・ハヌルのことだ。
興味深いのは、2人の誕生日や干支までまったく同じという点である。カン・ハヌルは1990年2月21日生まれ、キム・ハヌルは1978年2月21日生まれ。本名のまま活動していたら、性別や年齢差があっても混同される可能性は高かっただろう。
『太陽を抱く月』や『建築学概論』で知られる女優ハン・ガインも、本名ではなく芸名で活動している。彼女の本名は「キム・ヒョンジュ」だが、すでに同じ名前の先輩女優キム・ヒョンジュがいたため、芸名を使うことにしたという。
ハン・ガインは過去のインタビューで「ガインの代わりに“テラン”になりそうだった。当時の所属事務所の社長が“イ”という姓だったので、イ・テランという案もあった。最終的に“ガイン”に決まり、家ではいまも本名の“ヒョンジュ”と呼ばれている」と明かしている。もし本名で活動していたら、2人の“キム・ヒョンジュ”が共演する作品が生まれていたかもしれない。
シン・ミナと長年交際している俳優キム・ウビンも同様だ。彼の本名は「キム・ヒョンジュン」で、SS501の元メンバーでありソロ歌手としても知られるキム・ヒョンジュンと完全に一致する。
キム・ウビンは、2011年のシットコム『ヴァンパイア・アイドル』に出演するまでは本名で活動していたが、芸名に変えた理由として、「同じ名前の有名人に望まぬ被害を与えているようにも感じたし、新しい事務所に入り、本格的に俳優としてスタートを切る気持ちもあって、名前を変えることにした」と語っている。
本名のままでは、ネット検索でも混同される可能性が高く、俳優としての独自性を築くうえでも障害となりかねなかった。
特殊な例だが、女優キム・ジョンウンも悩みが多い。北朝鮮の金正恩総書記と、ハングルで同姓同名だからだ。彼女は2016年に出演したバラエティ番組で、名前によるストレスについて「私の記事を見つけることができない。名前を変えたいとも考えた」と吐露したことがある。
いずれにしても同姓同名が多い韓国であっても、具体的な対策は芸名くらいしかないのが現状だ。
それでも俳優ウォンビン(本名キム・ドジン)とRIIZEのウォンビン(本名パク・ウォンビン)のように被るケースも見受けられ、完全には防げない可能性がある。世界的に人気が高まっているだけに、韓国芸能界における識別性の確保は、ますます重要な課題になっていくのではないだろうか。
(文=スポーツソウル日本版編集部)
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