“元・国民的アイドル”中居正広氏による性的暴行が、日本列島に衝撃をもたらした。
【画像】「“重要部位”を触ってきて…」韓国モデルが性被害告白
初報から4カ月が経った現在、第三者委員会の調査によって疑惑が事実と認定された。その決定打となったのが、「デジタルフォレンジック」という技術だった。
「デジタルフォレンジック」とは、スマートフォンなどのデジタルデバイスに残された情報を復元・解析し、証拠を収集・分析すること。パスワードなどのセキュリティも解除し、メタデータ、削除ログも復元する。スマートフォンのほか、PCやタブレット、クラウド、USBメモリなども対象で、別名「デジタル鑑識」とも呼ばれている。
日本では、一般的にあまり知られてこなかったワードだが、中居氏の事件を機に関心が一気に高まった。「フジ問題に迫ったデジタルフォレンジック 活用の契機はオウム事件」(朝日新聞)、「中居正広氏の隠蔽工作暴いた『デジタルフォレンジック』って? 今や『見たら削除して』は通用しない時代」(東京新聞デジタル)など、複数の媒体がその仕組みや活用事例に迫っている。
この「デジタルフォレンジック」、実は韓国ではすでに刑事・民事を問わず広く活用されており、国を揺るがすような重大事件でも数多くの使用実績を持つ。
最も新しい例としては、俳優キム・スヒョンをめぐる騒動がある。キム・スヒョンは最近、2025年2月に亡くなった女優キム・セロンさんが未成年だった時期に交際していたのではないかという疑惑が浮上。遺族がスマートフォンを解析し、交際を裏付けるやり取りが復元されたと主張し、大きな注目を集めた。
もちろん、芸能ゴシップに限らない。韓国史上初の大統領罷免にまで発展した「崔順実(チェ・スンシル)ゲート事件」では、朴槿恵(パク・クネ)元大統領の親友チェ・スンシルが処分したとされるタブレットPCを、テレビ局JTBCが入手。デジタルフォレンジックによる解析により、政権私物化の証拠が明るみに出た。
芸能界では、韓国史上最悪のスキャンダルとも称された「バーニングサン事件」が記憶に新しい。BIGBANGの元メンバー、スンリ(V.I)を中心に、クラブ経営や薬物、性接待斡旋疑惑、さらには警察との癒着までが取り沙汰されたこの事件では、削除されたはずのカカオトークのグループチャットが復元され、実名と具体的な発言内容が次々と浮かび上がった。
そのほかにも、「セウォル号沈没事故の犠牲者の携帯電話復元」(2014年)、「ク・ヘソン&アン・ジェヒョンの離婚騒動」(2019年)、「新天地大邱教会での新型コロナ集団感染」「n番部屋事件」(2020年)など、あらゆる事件で証拠として活用されている。
韓国では現在、検察や警察に加えて民間のフォレンジック専門企業も急増中だ。また、韓国インターネット振興院が運営し、サイバーセキュリティ専門人材を育成するKISA(Korea Internet & Security Agency)アカデミーでは、デジタルフォレンジックの専門家を育成するための教育カリキュラムも整備されている。
一方で、プライバシーの侵害や違法なデータ復元といった副作用も懸念されており、取り扱いに関する法的・倫理的な議論は今も続いている。
いずれにせよ、情報がこれまで以上に“可視化”され、“証拠化”される時代が到来しているのは間違いない。消したはずのメッセージ、破棄したつもりのファイルが、時を超えて“語り出す”可能性は高まる一方だ。「見たら削除」では、もはや逃げ切れない。
今回の中居氏の一件をきっかけに、日本の芸能界でも、韓国の「バーニングサン事件」のように一気に“浄化”が進むのか。世間の視線は、日に日に厳しさを増している。
(文=スポーツソウル日本版編集部)
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