日々巧妙さと危険度を増し、誰もが無関係ではいられないデジタル性犯罪。「n番部屋事件」以降、関連法が改正され厳罰化が進んだ韓国でも、依然社会問題として存在し続けている。
もし、自分の恋人が今にも危険にさらされようとしていたら?という、決して誰しもが無関係ではない問いを投げかける映画『配信犯罪』から、監督インタビューが解禁。彼女にとって長編初監督作品となる本作について語ってもらった。
―この映画を撮ろうと思ったきっかけは?
2018年に偶然とある短編動画を見たことがきっかけで、デジタル性犯罪に対する関心が生まれ、今後被害者が増えないことを祈る気持ちで長編映画としてシナリオの執筆を始めました。
―「n番部屋事件」が未だ記憶に新しいですが、作品に影響を及ぼしていますか?
シナリオを書き始めた当時(2018年12月)は、「n番部屋事件」とその他オンライン犯罪などデジタル性犯罪の深刻性が知られる前だったんです。もし、自分自身が加害者になったらどうしただろうか?という想像を元にシナリオを書き、闇サイトの被害と実際に起きた類似のデジタル性犯罪事件を探しました。シナリオを書きながらたくさん苦しみました。初稿が完成して、周りの人たちに意見を聞いたのですが「話が残忍すぎて、リアリティがない」と言われたんです。しかしその後、「n番部屋事件」について報じられるようになっていきました。執筆したシナリオと似た内容の事件が現実で起こっていたことで、私も大きな衝撃を受けました。現実のほうがさらに残忍だったことにも。その後、シナリオを修正していきました。
―大変意欲的な作品ですが、撮影はどのくらいの期間で行われたのでしょうか?また、多くの女性スタッフが参加されていますね。
撮影自体は3週間~1カ月ほどでした。予算も限られていますが、自分が世の中に伝えたいことを映画に込めることのできる唯一無二のチャンスだということを理解していたので、最善を尽くしました。実は、制作会社の代表や、出資をしてくれた会社の代表も女性だったんです。私をはじめ、もちろんスタッフにも多くの女性、今回は特に若い人たちが多く関わってくれています。
―デジタル性犯罪という題材ですが、映像化する際に配慮した点はありますか。
誰もが被害者に、または逆の立場である加害者にもなり得るんだということは伝えたいと思っていました。どのように観客に見せるかという点では、主人公ドンジュの恋人、スジンがジェントルマンの手中に落ちてから、彼女のシーンについての描写については最後まで考え抜きました。直接的な表現はなくとも、例えばジェントルマンの表情などから観客に憤りを覚えてもらうようにしたいと思い、それが映像でも伝わるように腐心しました。
―ジェントルマンを演じたパク・ソンウンさんとパク・ソンホさんは今回敵対する役柄を演じています。また撮影も別だったとのことですが、2人の演技のトーンを揃えるため心を砕かれたことはありますか?
2人は『RUGAL/ルーガル』というドラマ(日本ではNetflix配信)で共演経験があり、ジェントルマンを演じたパク・ソンウンさんにパク・ソンホさんが主人公ドンジュを演じることを伝えると「彼はとてもかわいい弟だよ」と喜んでいました。そんな2人の役者同士の信頼関係があってこそのドラマになりましたし、2人の演技の呼吸がとても合っていたことは、映画をご覧になった方なら異論はないと思います。まるでリアルタイムで攻防戦を行っているような、2人の呼吸が最も記憶に残っています。
映画『配信犯罪』は、10月13日よりシネマート新宿、10月20日よりシネマート心斎橋にて公開。
■【動画】韓国震撼のホラー映画『トンソン荘事件の記録』とは…
前へ
次へ