チーム年俸は最下位ながら、実際の順位は中位につけている。韓国Kリーグ2(2部)で最も“コストパフォーマンスの良い”クラブである忠南牙山(チュンナム・アサン)FCの中心には、パク・ドンヒョク監督がいる。
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パク・ドンヒョク監督率いる忠南牙山は、リーグ戦24試合を終えた時点で9勝9分6敗の勝ち点36を記録し、11チーム中5位に位置している。
2位の大田(テジョン)ハナシチズン(勝ち点41)とはわずかに5ポイント差であり、事実上、上位グループのなかで競争を繰り広げている。
想像以上の成績だ。というのも、忠南牙山はKリーグ全体で最も人件費の少ないチームだからだ。
昨季までセミプロのK3リーグ(3部相当)に所属し、今季からプロに参入した金浦(キムポ)FCとはほぼ同じ水準の人件費である忠南牙山。外国人選手が一人も在籍していないため、むしろ人件費は昨年より減少した。
そんな低予算で、昨季は10チーム中(金浦FC参入以前)8位で終えただけでも高く評価された。ところが、今季はそれ以上に高い成績を維持し、プレーオフ進出圏内の5位以内も視野に入っている。
忠南牙山の躍進によって、パク・ドンヒョク監督のリーダーシップが再注目されている。
現役時代にガンバ大阪、柏レイソルでプレーしたパク・ドンヒョク監督は、1979年4月生まれの43歳と、Kリーグ全クラブの監督のなかで最も若い。
ただ、実際の経験は豊富な方で、2016年に蔚山現代(ウルサン・ヒョンデ)コーチとして指導者生活を始めてから、今年でもう7年目となる。2018年には牙山ムグンファ(忠南牙山の前身)の監督を務めてKリーグ2優勝も経験しているだけに、若くして多くの経験を積み上げた監督と見ることができる。
サッカー関係者が高く評価するパク・ドンヒョク監督の最大の能力は「選手を見る目」だ。彼はリーグで注目されなかったような選手を抜てきし、育てる才能に長けている。
その代表例が、忠南牙山での活躍から複数チームのラブコールを受け、大田へと移籍したFWキム・インギュン(23)だ。彼はデビューイヤーの2020年こそ12試合無得点に終わったが、翌2021年には35試合8ゴール3アシストの活躍でKリーグ2のヤングプレーヤー賞に選ばれ、今季から大田に移籍した。
今季のチームではFWユ・ガンヒョン(26)が挙げられる。ユ・ガンヒョンは現在まで24試合12ゴール2アシストを記録しており、Kリーグ2得点ランキングで首位タイを走っている。忠南牙山の上昇ムードをけん引する選手こそ、ほかならぬユ・ガンヒョンというわけだ。
もっとも、ユ・ガンヒョンは昨季に慶南(キョンナム)FC所属で公式戦5試合出場にとどまった無名のフォワードだった。それでも、そんなユ・ガンヒョンにパク・ドンヒョク監督は注目した。
「一度相手にしてみたが、可能性を感じた。動きが(元湘南ベルマーレ、現江原FCの)イ・ジョンヒョプに似ていて非常によかった。シュート能力も兼ね備えているので、上手く育てられれば才能が開花すると思った。期待通り活躍してくれて嬉しい」とパク・ドンヒョク監督は語る。
パク・ドンヒョク監督はモチベーターとしても非常に優秀な指揮官だ。
忠南牙山のような低予算のチームでは、リーダーの役割がとても重要となる。パク・ドンヒョク監督は、選手たちを激励するときと、発破をかけるときとでしっかりと区分する。緊張感のコントロールが優れていることで有名だ。
「環境や条件で我々がほかのチームを上回ることはできない。そのため、自分たちで良い雰囲気を維持することが重要だ。“できる”、“やってみよう”というメッセージを与え、選手たちをもっと走らせることが私の役割だ」というパク・ドンヒョク監督は、「我々が上手くやっているという評価も聞くが、私の能力というよりは、選手たちが本当に上手くやっている」と謙虚な姿も見せた。
Kリーグ2の日程も半分が過ぎた。今では忠南牙山としても、パク・ドンヒョク監督としても、プレーオフへの欲を示さない理由はない。
パク・ドンヒョク監督は「昨季まではチームに起伏があった。まったくダメな試合、上手く行った試合とで差が大きかったが、今年はその起伏が格段に減ったので満足している」とし、「ここまで来たからには、我々もやってみる必要があるのではないか。本来の目標はリーグ戦6位だったが、これからはプレーオフ進出を狙いたい」と意気込みを語った。
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