ソン・フンミンが母国でトッテナムでのラストマッチを終え、涙とともに新天地での活躍を誓った。
ソン・フンミンは8月3日、韓国のソウルワールドカップ競技場で行われたニューカッスル・ユナイテッドとのプレシーズンマッチで先発出場し、後半20分に交代するまで約65分間プレーした。試合は1-1の引き分けに終わった。
前日会見で今夏でのトッテナムを明言したソン・フンミン。この日の試合は、まさに彼のために用意されたような一戦だった。
試合前のキックインセレモニーは親友関係で知られる俳優パク・ソジュンが務め、熱い抱擁も交わした。会場には韓国代表の後輩イ・ガンイン(パリ・サンジェルマン)や実父ソン・ウンジョン氏らも駆けつけた。
前半にトッテナムの先制ゴールを決めたブレナン・ジョンソンは、ソン・フンミンの代名詞である「カメラセレモニー」を披露。6万4773人が来場したスタジアムにはソン・フンミンのチャント「Nice One Sonny」が響き渡り、スタンドからの拍手も途切れることはなかった。
交代時にはニューカッスルの選手も加わった花道が作られ、ピッチを退いたソン・フンミンの目には涙が。試合後にはトッテナムのチームメイトやスタッフによって胴上げされ、温かく送り出されていた。
「まだサッカー人生は終わっていない」
ソン・フンミンは試合後、報道陣の取材に「いろんな感情が込み上げてきた。本当に泣かないと思っていたけれど、長い時間をともにしたチームを離れることを思うと心が楽ではなかった」とし、こう伝えている。
「選手たちの一言一言を聞いているうちに、自然と涙が出てきた。幸せな試合だった。ここにいる記者の皆さんやサッカーファン、チームメイト、対戦相手のおかげだ。本当に嬉しくて、今夜は眠れないかもしれない」
「チームメイトが本当に良い話をしてくれた。自分の口から言うのが恥ずかしいくらいだ。10年間をともにしながら仲間にインスピレーションをもたらし、支えられる選手だったことを感じ、幸せだった。自分が一体どれだけの福を受けてこんな選手に成長できたのか、こんなに愛されているのかがわからない。ファンのおかげでこの場にいる。本当に感謝している」
トッテナムとは別れを告げるが、ソン・フンミンの挑戦はこれからも続く。「まだサッカー人生は終わっていない。もっと楽しさをもたらさなければならない。やるべきことがまだ残っている。幸せな姿で皆さんにお会いしたい」と、新天地での活躍を誓った。
この日はチーム最古参の“親友”のベン・デイヴィスもともに先発出場。試合後に涙も見せたという彼に関する質問には、「ベン・デイヴィスは一番親しい友達なのに、何度も“横に来るな”と言っていた。彼の顔を見ると目が真っ赤で、涙ぐんでいたんだ。本当にありがたかった。自分は彼の息子の代父(ゴッドファーザー)でもある。サッカー選手として、一人の人間としてもっと素敵な姿を見せていきたい」と答えていた。
また、同郷で2006年生まれの若手MFヤン・ミンヒョクも後半終盤に出場し、アグレッシブなプレーを披露。今夏に川崎フロンターレから加入したDF高井幸大とともに、同じアジア人選手としてトッテナムの将来を担う後輩へのエールも忘れなかった。
「ヤン・ミンヒョクとは今ではすっかり仲良くなって、冗談も言い合う関係になった。14歳差もあるのに冗談を言い合うからまだ慣れないが、それでも気持ちが良い。今日もピッチで本当に一生懸命プレーしていた。若い選手があのように戦う姿を見ると、自分も新たな環境で頑張らなければならないと思える。また一つ、学ばせてもらった」
そのうえで、「若い選手を守ってあげないといけない。あまり早くから過度に期待をかけず、ケガをしないように見守ってほしい。記者の皆さんもぜひ力になってあげてほしい」と報道陣に呼びかけていた。
なお、移籍先については「まだ決まっていない。もう少し待ってほしい」と明言せず。8日に控えるバイエルン・ミュンヘンとのプレシーズンマッチに向けてトッテナムはすでに英ロンドンへと発ったが、ソン・フンミンは帯同せず韓国にとどまっていると報じられている。
現時点では米メジャーリーグサッカー(MLS)のロサンゼルスFCなどが有力視されているが、はたして。33歳で次なる舞台へ挑むソン・フンミンの今後に注目が集まる。
◇ソン・フンミン プロフィール
1992年7月8日生まれ。韓国・江原道出身。身長183cm。サッカー大韓民国代表キャプテン。小学校と中学校ではサッカー部に所属せず、韓国代表経験のある父ソン・ウンジョン氏から直接指導を受けた。2010年にドイツ・ブンデスリーガのハンブルガーSVでプロデビュー。その後、2013年に移籍したバイエル・レバークーゼンで2年連続二桁ゴールを披露し、2015年にプレミアリーグのトッテナム・ホットスパーへと移籍。2021-2022シーズンにアジア人初のプレミア得点王に輝いた。2025年8月2日、10年在籍したトッテナム退団を表明。愛称は「Sonny(ソニー)」。
■【写真】父が語るソン・フンミンの“晩年”「最後は行きたいクラブに…」
前へ
次へ