「10年前よりはさまざまな経験を通じて学び、監督として成長した感覚がある」
2014年ブラジルW杯の惨敗から10年。再び韓国代表の指揮を執ることになったホン・ミョンボ(洪明甫)監督はそう語った。
ホン・ミョンボ監督率いる韓国代表が9月2日、高陽(コヤン)総合運動場で北中米W杯アジア最終予選に向けて始動した。
アジア最終予選・グループBの韓国代表は、来る5日にホームのソウルワールドカップ競技場でパレスチナ代表、10日にアウェイのスルタン・カーブース・スポーツコンプレックスでオマーン代表と対戦する。
ホン・ミョンボ監督は10年前、初めて韓国代表を率いて臨んだ2014年ブラジルW杯で失敗を経験した。グループステージで1分2敗とし、未勝利の最下位で敗退という屈辱を味わった。
韓国サッカーの英雄と呼ばれたレジェンドは、あっという間にどん底に落ちた。2002年日韓W杯ベスト4の主役であり、2012年ロンドン五輪で韓国に銅メダルをもたらした栄光は跡形もなくなった。
それから長い年月が過ぎた。
代表指揮官を退いたホン・ミョンボ監督は、中国の杭州緑城(現・浙江FC)監督、韓国サッカー協会(KFA)の専務理事を経て、Kリーグ1(1部)で長年“無冠”に苦しんだ蔚山(ウルサン)HD FCを2年連続リーグ優勝に導き、指導者の力量を取り戻した。
今回の代表監督就任をめぐっては、一部の蔚山ファン・サポーターから厳しい批判も飛んだ。とはいえ、ホン・ミョンボ監督が10年前と比較し、“監督”として一段階スケールアップしたのは明らかだ。
実際、この10年間で指揮官の心情にも変化があったという。
2日の練習前、報道陣の取材に対応したホン・ミョンボ監督は「胸が高まる思いもあるが、一方で恐れる思いもある。過去に(代表監督を)経験したからだ」と率直な考えを語った。
世代別からA代表まで各世代で指導経験があり、KFAの要職を務めたこともあるだけに、“王冠の重さ”は誰よりもよく理解している。
不安こそあるが、監督自身はある程度の“確信”を得たようだ。「10年前よりはさまざまな経験を通じて学び、監督として成長した感覚がある」と、初のW杯で苦汁をなめた40代中盤から明確に変化した点を伝えた。
問題はホン・ミョンボ監督、さらには韓国サッカー界を取り巻く世論だ。
最近、KFAの拙速かつ密室的な行政、チョン・モンギュ会長再選の動きによって、韓国サッカー界は過去に類を見ない批判の嵐に苦しんでいる。政府や文化体育観光部までもが代表監督の選任過程を問題視するほど深刻な雰囲気だ。
ただ、合理的な批判もある一方で、なかには根拠のない非難もKFAとホン・ミョンボ監督を攻撃している。一般大衆が韓国サッカー界を見つめる視線も厳しい。ホン・ミョンボ監督は、10年前よりもさらに恐ろしい大衆の視線を乗り越えなければならないと伝えられている。
そうは言っても、ホン・ミョンボ監督体制はもう始動した。「成長した感覚がある」と言うのであれば、指揮官自ら試合を通じて証明しなければならない。言葉ではなく、試合で見せるものがすべてだ。
アジアカップ直後に解任されたユルゲン・クリンスマン前監督、そして2人の暫定監督とは確実に変わった姿を見せてこそ、批判的な声も鎮めることができる。
10年前から韓国代表は大きく変わった。FWソン・フンミン(32、トッテナム)、MFイ・ガンイン(23、パリ・サンジェルマン)、DFキム・ミンジェ(28、バイエルン・ミュンヘン)など欧州トップレベルで活躍する選手をはじめ、海外でプレーする選手が過去と比べて非常に増えた。
それぞれ強い個性を持つ選手を一つに束ね、創意工夫を凝らしてアジアトップクラスのチームを構築しなければならない。
選手が代表入り時にスーツを着ようが着まいが、ピッチ外のことは重要ではない。リーダーシップと戦術的な力量、その2つで代表のバランスを取ることがホン・ミョンボ監督に課された使命だ。
ホン・ミョンボ監督は「選手たちが代表に集まり、良いパフォーマンスだけを考えることができるように文化を作るつもりだ」とし、パレスチナとの初戦に向けて「韓国にとって重要な試合だ」と強調していた。
(構成=ピッチコミュニケーションズ)
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