『クモの巣』の主演ソン・ガンホが語る“演技の本質”「正解ではない正解を必ず作ること」【インタビュー】

2023年09月30日 映画 #韓国映画

俳優のソン・ガンホと初めて会った後輩俳優たちが一番驚く点は、依然として熾烈だという点だ。個性が強くキャラが濃い人物を、余裕そうに、散歩するように演技している裏には、ものすごいエネルギーと集中力が伴うということを背中で悟らせる。

【注目】カンヌ映画祭で披露…ソン・ガンホの新作

33年間、演技だけに没頭してきたソン・ガンホは、依然として与えられた神を前にして深い分析と苦悩の時間を持つ。そばでこの姿を見てきた後輩たちには、このような姿が新鮮な衝撃として感じられたりもする。優れた才能よりも凄絶な努力が勝るという事実を目撃し、さらに演技に精進するようになるという話も出ているほどだ。

ソン・ガンホの現場では先輩後輩間で好循環が生まれているのだ。

(画像=Barunson Enter & Arts)

では、ソン・ガンホは演技をするにあたり、どのようなことを中心に考えるのだろうか。映画『クモの巣』(原題)の封切りを控えていた9月18日、ソウル市鍾路(チョンノ)区三清洞(サムチョンドン)にあるカフェでインタビューを行った。ソン・ガンホは、「後輩たちから、どう創意的に演技するのかと質問されます。そんな時に言うことがあるのですが“皆が知っている正解を描くのではなく、皆が知らない正解を出さなければならない”と話します」と答えた。

多少深みのある答えに、しばらく静寂が流れた。記者は何と答えたらいいか分からず、「哲学的ですね」と、“ありきたり”返答しかできなかった。どこか答えが足りなかったと判断したソン・ガンホは、パク・チャヌク監督とキム・ジウン監督の話を取り出してきた。

「パク・チャヌク監督が23年前に“ソン・ガンホは正解ではない正解を描いたが、振り返ってみれば一つだけが正解ではない多くの正解を描いた”と言われました。そしてキム・ジウン監督は、私の演劇演技を見て“けしからん”と言いました。おそらく2人とも似たようなことを言いたかったのでしょう。けしからんということは、望む正解をもらえなかったということです。これも正解ではない正解なわけです。これを後輩たちに伝えています」

パク監督とキム監督が感じたポイント「正解を与えないこと」

ソン・ガンホの発言を整理してみると、誰もが分かるような演技はあまりにもわざとらしく感じられ、感動がない。だからといって求められている答えではない演技をしてしまえば、理解と共感を得ることはできない。良い演技とはリズムと呼吸、声のトーン、話し方、目つきなどさまざまな技術を活用して観客が考えられなかった人間の気質を表わすことだ。彼は、「“正解ではない正解を探し、それが正解になるようにすること”が芸術家の本質」という言葉も付け加えた。

(画像=Barunson Enter & Arts)

すでに5回目のタッグとなるキム・ジウン監督との新作『クモの巣』でもソン・ガンホは、“正解ではない正解”を見つけたようだ。『クモの巣』は、映画を全て撮り終えたあとに、結末だけを変えれば傑作が誕生するかもしれないと判断した映画監督のキム・ヨルが、製作会社と俳優たちを説得し、望む場面を再撮影するために孤軍奮闘する過程を描いた映画だ。ソン・ガンホはキム・ヨル監督に扮する。

芸術魂を持った監督と言えば、とても敏感でヒステリックだと思うが、ソン・ガンホが演じた映画監督は不安と欠乏を持つと同時に、巧みなコミュニケーションを土台に目的を達成していこうとする営業社員のような印象を与える。希望する場面を様々な危機を乗り越えて撮り、後半には芸術魂を越えた狂気も見せてくれる、印象的な映画だ。

「キム監督は劣等感も激しく、一流監督になりたいという欲望にとらわれた人物です。絶えず自分の能力を疑っています。普遍的な観点から見れば、そのような面を持つ人はキム・ヨルだけではないでしょう。誰にでもそんな感情があります。そういう普遍性を見せようと思いました。特定の映画監督の話ではなく。私もハンサムな俳優たちを見ると劣等感を感じます。ハハハ」

続ける挑戦、韓国映画と自負心

数十年間、映画監督たちと仕事をしてきた彼だが、特にリファレンスをチェックした監督はいなかったという。キム・ヨルが抱える状況が特殊だったため、新たに一つずつ構築したのだそうだ。親交のある監督の癖のようなものをあえて持ってこなかったということだ。自分のキャラクターより重要なのは、仲間たちと作るアンサンブルだと話した。

(画像=Barunson Enter & Arts)

「キム・ヨルもキム・ヨルですが、この映画はアンサンブルが重要です。光を放つには結局、リズム感が必要でした。動線に沿って動く時や台詞が行き来する時、アクションとリアクションがぶつかる時、すべてリズミカルに作動しなければなりませんでした。その点に集中し、そのリズム感をエンディングまで引っ張っていこうと思いました」

世界3大映画祭の一つであるカンヌ国際映画祭のレッドカーペットを最も多く踏んだ韓国俳優であり、アカデミー賞の作品賞を受賞した映画の主人公も務めた。数十年間、韓国最高俳優の座を維持しているソン・ガンホは、どのような敢闘よりも芸術家の姿勢を維持していることに自負心を感じるという。

「誰もが知っている正解を差し出したところで、観客の胸を打つことはできません。映画を見た人への熱い響きが必要です。そうしてこそ正解ではない正解を見つけたのです。この巨大な地球上で小さな国がダイナミックな映画を作るのも、常に安住せずに絶えず踏み出す挑戦と情熱があるからだと思います。それが韓国映画の自負心であり、私の自負心でもあります」

【写真】コン・ユ、色気あふれる“困り眉”SHOT

【写真】ヒョンビンの“妻”ソン・イェジン、息子を初公開!

離婚したソン・ジュンギとソン・ヘギョのキスシーンが大々的に上映…「あえてなぜ」

前へ

1 / 1

次へ

RELATION関連記事

RANKINGアクセスランキング

PHOTO写真

TOPIC「BTS」特集