前人未到の道を切り開くBTS(防弾少年団)への兵役特例適用を求め、世論を追い風に発議された兵役法改正案はひとまず保留に終わった。
兵役特例者の基準と公平性に対する深い議論もなく、ただ世論に押されるがまま拙速に作られた法案であるだけに、審査通過は容易ではなかった。結局、改正案審議で結論が下されることはなかった。
韓国国会国防委員会の法案審査小委員会は11月25日、国益への寄与度が高い大衆文化芸術人が、軍入隊の代わりにボランティア活動などで兵役を代替できるようにするという内容の兵役法改正案を審議したが、最終的に法案議決は保留された。
ARMY(BTSのファンネーム)の立場としては残念な結論だろう。それでも、国会で議論が始まったことに意義がある。
BTSが登場するまで、兵役特例制度の対象に大衆文化芸術人は含まれてこなかった。
既存の兵役特例制度は、国内外の特定の芸術コンテストや、オリンピックとアジア大会のメダリストに限り代替服務が認められてきた。
彼らに兵役特例が適用された理由は、海外に国家の名誉を轟かせたという“国威宣揚”の意味が込められている。
1973年に兵役特例制度が作られた当時は、韓国で韓国語の歌を歌う大衆芸術文化従事者が国威を宣揚する機会があるとは考えられない時代だった。
韓国の歌手がアメリカ3大音楽授賞式の一つである「American Music Awards(AMA)」で「アーティスト・オブ・ザ・イヤー(Artist Of The Year)」を受賞し、「MTV Europe Music Awards」で「最優秀ポップ賞(Best POP)」に選ばれると誰が想像できただろうか。
国防委は同日の会議を経て、BTSの兵役特例について与野党はもちろん、議員間でも意見が食い違っていることを確認した。今後は公聴会などを通じて公論化の手続きを進める予定だ。
誰かにとっては、BTSの業績は欧州で活躍するサッカースターのソン・フンミンや、世界的ピアニストのチョ・ソンジンが成し遂げた業績それ以上のものに感じられるだろう。一方で、ほかの誰かにとってはそこまで及ばないかもしれない。
法は社会構成員の合意を明文化するものだ。それだけに、新しい状況に対する合意には時間がかかるだろう。
同日、国防委では兵役特例に関する多様な意見交換が行われた。現行の兵役特例制度の不公平性に関する議論も行われ、管轄の兵務庁が兵役特例の制度改善に対して検討が不十分だと叱咤も受けた。
BTSの兵役特例をめぐって立法機関が議論を繰り広げるなか、当のBTSはこれからも韓国の大衆文化歌手が歩んだことのないような道を切り開いていくだろう。
BTSの“兵役議論”は大衆文化歌手の国威宣揚に対する新たな社会的合意を作り出した。それだけでも大きな意味のある第一歩だ。
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