韓国プロサッカーKリーグが、またしても“政治介入”騒動に悩まされている。
というのも、Kリーグ2(2部)の忠南牙山(チュンナム・アサン)FCが去る3月9日に行われたホーム開幕戦の富川(プチョン)FC 1995戦で、本来の青色のホームユニホームではなく、赤色のサードユニホームを着用していたからだ。
プロサッカーの舞台において“色”が象徴するものは大きい。単なる色であるにとどまらず、そのチームのアイデンティティと文化を代表するからだ。
だからこそ、新シーズンの始まりを告げるホーム開幕戦で本来の色を“放棄した”こと、さらには対戦相手の富川が本来チームカラーとする赤色のユニホームを着用したことは、十分に問題となり得る。
何より、今回の“色変え”には政治的意図を疑わざるを得ない。
地方自治体が運営する市民クラブの忠南牙山は、本拠地・牙山市のパク・キョンギ市長がオーナーを務め、同市が属する忠清南道(チュンチョンナムド)のキム・テフム道知事が名誉オーナーを務めている。
2人はいずれも、韓国与党「国民の力」所属という共通点を持つ。そして、同党を象徴する色は「赤色」だ。
パク市長とキム道知事はホーム開幕戦同日、李舜臣(イ・スンシン)総合運動場を訪問して試合を現地観戦した。これが、4月に行われる総選挙を控えて“選挙運動”の一環だったのではないかと指摘されている。
政治介入疑惑が浮上したことで、キム道知事と忠南牙山のイ・ジュンイル代表取締役は、それぞれ同件に関する記者会見を急きょ実施した。
ただ、キム道知事は「ユニホームの色は知らなかった。(赤色だったことを)現場で初めて見た。意図的に(色を)合わせたわけではない」と疑惑を否定。「赤色の服が国民の力を連想させるというが、そのように考えたファンがどれほどいたのかはわからない。選挙シーズンだから内容を拡大したのだろう。(ユニホームを政治利用したのであれば)キム・テフムの器を小さく見ている」と反論した。
さらには、「アルマダ(忠南牙山サポーターズ)には政治的にとても強い色を持つ方々がいるようだ。だから問題提起がより大きくなったという報告を受けた」とサポーターについても言及し、「(忠南牙山が)一部ファンを説得できず、スムーズではない部分があったようだ。意見を聴取する過程を疎かにしたのだろう。ファン全体、牙山市民と疎通すべきだった。ただ、政治的な意図があったからと言って、道知事を引き入れて攻撃するのは問題がある」と、クラブ側に問題があると指摘した。
その忠南牙山のイ・ジュンイル代表取締役も、ホーム開幕戦でサードユニホームを使用したことについて「選手たちが国家代表になった気持ちで試合に臨むことを願い、サッカー韓国代表に従って赤色のユニホームを準備した。政治的な意図はまったくなく、議論になるとは思わなかった」と、政治介入を真っ向から否定していた。
もっとも、道知事からクラブに至るまで「政治的意図はなかった」と釈明しても説得力は薄い。Kリーグを主管する韓国プロサッカー連盟は今回の件で政治的意図を疑い、懲戒を検討している。
Kリーグにおいて、正確には地方自治体が運営する市・道民クラブにおいて、政治介入騒動が起きたのは昨日今日の話ではない。
かつて、一部の自治体候補は公約として「プロサッカーチームの解体」を掲げた。前市長の功績をなくすための手段としてKリーグを利用したわけだ。
また、とあるチームはスタジアム内で起きた直接的な選挙運動を防ぐことができず、重懲戒を受けたこともある。
ただ、市・道民クラブは政治論理に弱い。オーナーの一言でクラブ状況が大きく左右されるため、そうせざるを得ない構造だからだ。
市・道民クラブの運営は各自治体の予算に含まれ、基本的に本拠地の市長や道知事がオーナーを務める。当然、実質的な権力者の影響力が大きく働くことになる。
加えて、オーナーにサッカーへの理解が足りないとなれば、なおさら“事故”が発生する可能性は高い。今回の忠南牙山も似たようなケースだ。
Kリーグには15の市・道民クラブがある。1・2部合計25チーム中、実に過半数の60%が地方自治体によって運営されているのだ。
韓国プロサッカー連盟のハン・ウンス副総裁がKリーグを率いる実質的なリーダーとなって以降、韓国各地に市・道民クラブは“雨後の筍”のように増えた。
Kリーグに昇降格制度が導入される以前の2012年まで、国内に市・道民クラブは全体16チーム中7チームに過ぎなかった。
それが、2013年からカテゴリーが1部と2部に分かれて以降、約10年間で市・道民クラブは2倍以上も増え、Kリーグで大きな比重を占める存在となった。そして、今後も市・道民クラブは増える見通しだ。
韓国プロサッカー連盟は、昇降格制度の定着と量的膨張のため、市・道民クラブをプロサッカーに多く引き入れた。さまざまな利害関係によって設立を導き、結果的に昇降格制度が定着する形となった。
これにはポジティブな側面も当然あるが、一方でネガティブな側面も少なくない。その代表的な例が、まさに政治介入だ。
ただ、頻繁に起きる事例であるにもかかわらず、韓国プロサッカー連盟がこれを阻止できない事態が繰り返されている。
今回の忠南牙山の件も、韓国プロサッカー連盟がユニホームの変更を許可していなければ起きなかったことだ。
韓国プロサッカー連盟は2013年から2部リーグが発足された当初から、「2部を放置している」という指摘を受けてきた。
それから13年が経ち、2024年シーズンのKリーグ2では全13チーム中9チームが市・道民クラブとなっているが、韓国プロサッカー連盟は依然として予測可能な問題をまともに防止できずにいる。
必要に応じてチーム数を増やしておいて、いざ誕生したら早々に手を離す無責任な態度を繰り返している。ただ、それによって発生した問題の矢先はKリーグに向けられ、リーグとしてのブランド価値を大きく毀損することになる。
市・道民クラブのとある関係者は、「韓国プロサッカー連盟がもう少し積極的に再発防止対策を用意しなければならない。自治体ではサッカーに対する理解度が低い。そもそも、何が問題なのかもよくわかっていない。韓国プロサッカー連盟の方から几帳面に制度化し、Kリーグが政治論理によって傷つかないようにしなければならない」と指摘した。
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