現役時代に韓国プロサッカー選手初の「年俸1億ウォン時代」を切り開いたホン・ミョンボ監督が、指揮官しても新しい道しるべを書いた。
韓国プロスポーツの監督として、初めて「最短期年俸10億時代」を切り開いたのだ。
韓国プロサッカーKリーグ1(1部)の蔚山現代(ウルサン・ヒョンデ)は8月2日、ホン・ミョンボ監督と2026年まで3年間の契約延長に合意したことを発表した。
現役時代にベルマーレ平塚(現・湘南ベルマーレ)や柏レイソルで活躍したホン監督は、3年総額30億ウォン(日本円=約3億円/年俸10億ウォン=約1億円)の契約条件にサインしたという。
本紙『スポーツソウル』が取材した結果、韓国国内のプロスポーツにおいて年俸が10億ウォン台に到達した韓国人監督は、2005~11年、2013~2018年の計13年間で全北現代(チョンブク・ヒョンデ)モータースを率いたチェ・ガンヒ監督(現・山東泰山監督)に次いでホン監督が2人目だ。
ただし、チェ監督は“勤続年数”の意味が含まれた金額だ。
チェ監督は韓国プロサッカー界では珍しく、一つのチームで長く指揮官を務めて全北を成功に導き、最後に契約延長を結んだ2016年当時、5年契約を結ぶ際に年俸10億ウォンの監督となった。そして、2018年から中国で指揮を執るようになった。
ホン監督は就任3年目で十億ウォン台での契約延長を結び、「最短期年俸10億監督」の歴史を築くことになった。
サッカーとともに韓国プロスポーツの二大種目と呼ばれるプロ野球KBOリーグでは、歴代最高年俸(契約金を除く)を受け取った韓国人監督は、2018年にSKワイバーンズ(現・SSGランダース)の監督に就任したヨム・ギョンヨプ監督(現・LGツインズ監督)、2019年に斗山(トゥサン)ベアーズと契約延長を結んだキム・テヒョン元監督(現・SBSスポーツ解説)で7億ウォン(約7000万円)だ。
そんななか、ホン監督が切り開いた監督最短期の10億年俸の記録は、サッカー界を越えてプロスポーツ界全体において、監督に対する価値と評価を新たに確立する契機になるものとみられる。
ホン監督は現役時代の1994年アメリカW杯で2ゴールを決め、“ワールドスター”の仲間入りを果たした後、翌年に浦項製鉄(現・浦項スティーラーズ)と年俸1億ウォン(約1000万円)で契約を結んだことがある。
それまで年俸5280万ウォン(約528万円)を受け取っていたホン監督は、前年比89.4%上昇された金額にサインし、韓国プロサッカー選手として初めて年俸1億ウォン台の選手になった。
それから28年が経ち、今度は年俸10億ウォン台の監督に生まれ変わり、韓国サッカーを代表するレジェンドとしての歩みを続けることになった。
何より、年俸10億ウォンを受け取ることに対して何の異論の余地もない。
これまでU-20代表、U-23代表、A代表と各世代の韓国代表を率い、韓国サッカー協会の専務理事も務めたホン監督は、2021年から蔚山の新指揮官に就任し、3年6カ月ぶりに指導者の現場に復帰した。
2012年ロンドン五輪銅メダル獲得、2014年ブラジルW杯グループステージ敗退など、指導者として成功と失敗のすべてを味わったホン監督の経験値は、“準優勝トラウマ”に苦しんできた蔚山を変貌させるきっかけになった。
ホン監督は現役時代と変わらぬ卓越したリーダーシップで、主力や控えを問わずすべての構成員を同じ目標に向かせ、チーム内に“ワンチーム”の文化を植え付けるうえで大きな役割を果たした。
MFイ・チョンヨン(35)やFWパク・チュヨン(38)など代表監督時代に指導したベテラン選手を中心にコミュニケーションの幅を広げ、スター選手が揃うチーム内の秩序を正した。
特に、「ALL FOR ONE, ONE FOR ALL」というスローガンで一つになったチーム、チームに対するロイヤリティと献身を強調し、個人の特性を活かす部分的な戦術とチームマネジメントを披露してきた。
その結果、蔚山は昨季リーグ戦でこれまで準優勝に終わってきた恨みを晴らし、17年ぶりの優勝に成功。クラブ通算3個目の星を付けた。
ホン監督と構成員が築き上げた“勝者のメンタリティ”は、シーズンを重ねるごとに進化している。
昨シーズン、蔚山は逆転勝利による勝ち点3獲得を9回経験した。ホームで4勝、アウェイで5勝という内訳だ。会場やコンディションにこだわらず、「勝つ」という信念を持って危機を克服してきた。
今季もリーグ戦第24節までにホームとアウェイそれぞれ2回ずつ、計4回の逆転勝利を記録している。
昨季の優勝の勢いを得て、今季も圧倒的なパフォーマンスを見せつけている蔚山は、第24節終了時点で18勝2分4敗の勝ち点56とし、2位の浦項(ポハン)スティーラーズ(勝ち点44)と12ポイント差を離している。
ホン監督を中心にコーチ陣、選手、フロント、さらにはファンとの信頼関係も強くなり、蔚山はクラブ創設以後2度目の全盛期を迎えている。
ホン監督自身もやはり、“優勝監督”として生まれ変わり、指導者として第2の全盛期を謳歌している。
「これまで過ぎた時間がチームを把握し作り上げていく時間だったとすれば、今後は蔚山がKリーグを代表する“リーディングクラブ”になるよう努力するだろう。何より、ファンは私と我々の選手がさらに一歩進むための力であり、原動力となる存在だ。蔚山を愛し、応援してくださる皆様のために最善を尽くすことを約束する」
契約延長に際し、クラブを通じてこうコメントしたホン監督。Kリーグ2連覇へまい進する蔚山のさらなる飛躍を期待したいところだ。
(構成=ピッチコミュニケーションズ)
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