韓国Kリーグ1(1部)で新型コロナウイルス感染症のクラスターが発生したなか、韓国プロサッカー連盟はリーグ戦の正常開催を宣言した。
これを受け、“当事者”である蔚山現代(ウルサン・ヒョンデ)、FCソウルはメンバー編成で危機的状況に陥っている。
来る3月19~20日に行われるKリーグ1第6節で、蔚山現代は20日にホームの蔚山文殊サッカー競技場で浦項(ポハン)スティーラースと対戦。
FCソウルは前日の19日、ホームのソウルワールドカップ競技場で済州(チェジュ)ユナイテッドと対戦する。FCソウルは本拠地の芝生補修工事によって開幕5試合をすべてアウェーで戦い、第6節で遅れてのホーム開幕戦を戦う。
両カードともにサッカーファンの注目を集めるマッチアップである一方、両チーム、そして韓国プロサッカー連盟の関係者たちは連日頭を悩ませている。
というのも、蔚山現代とFCソウルは去る11日の第5節で対戦した後、各チーム内でクラスターが発生したからだ。
蔚山現代は、15日に行われたアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)プレーオフのポートFC戦前までに12人が感染した。このため、試合では本職ウィングのFWユン・イルロク(30)を左サイドバック、本職中盤のMFキム・ソンジュン(33)をセンターバックで起用し、ベンチにはプレイングコーチのMFイ・ホ(37)を含めるなど、まともな戦力を立てることができなかった。
同じく、FCソウルも16日までに9人の陽性が発覚した。
両チームともに、喉の痛みなど新型コロナ変異株であるオミクロン株の症状を訴える選手、スタッフが続出しているという。結局、蔚山現代はACLプレーオフ以降の15~17日までに新たに10人の感染が確認され、現在までに選手だけで計22人が陽性となった。
蔚山現代では今シーズン、30人を選手登録している。つまり、17日基準で陰性である選手は、全30人の中で3分の1にも満たない「8人」のみということだ。
FCソウルもこれまで選手11人に陽性が確認。そこに加えて、10人以上も負傷者が発生している状況だ。
韓国では17日、国内における新型コロナの新規感染者数が過去最多の60万人を突破し、新型コロナによる死者数も初めて400人台を記録した。
こうした国内の感染状況を受け、Kリーグ内では「クラスター発生は両チームだけの問題に限ったことではない」と、さらなる感染拡大を恐れる声も挙がっている。
ただ、Kリーグを管轄する韓国プロサッカー連盟は、今年1月に行われた第1次理事会で議決された「出場可能選手が最低17人以上(GK1人含む)で、▲新型コロナ検査の結果陰性、▲無症状、▲隔離非対象の要件を満たせば延期せずに開催する」という、新型コロナ感染者発覚時のリーグ運営案に関する原則に遵守し、リーグ戦を正常開催する方針を立てた。
前述の通り、蔚山現代で陰性の選手は現時点で8人のみだが、浦項戦までに10人が隔離解除されるという。このため、韓国プロサッカー連盟の原則に基づけば、エントリー最低人数の「17人」を確保でき、試合も正常通り開催できる。
ただし、それまでに新たに2人以上が新型コロナに感染してしまえば、その「17人」を満たすことはできなくなる。
韓国プロサッカー連盟はこのような点を考慮し、蔚山現代対浦項の試合を、カタールW杯アジア最終予選が行われる代表ウィークの翌週に延期する案も検討しているという。
蔚山現代の関係者は、「例え17人のエントリーが可能となり、試合をするといっても、隔離を終えたばかりの選手を出場させることはあらゆるリスク、負担がある。だからこそもどかしい」とため息をついた。
ただ、蔚山現代よりさらに頭が痛い状況なのがFCソウルだ。
FCソウルでは今シーズン、蔚山現代を上回る40人の選手を登録したが、今後さらに感染者が続出した場合でも、“規定上”は「17人」を満たせる可能性が高い。というのも、韓国プロサッカー連盟がエントリー最低人数「17人」の構成要件に負傷者も含めたためだ。
このため、FCソウルからは「負傷者をエントリーに入れてまで試合をする必要があるのか」と不満の声が挙がっている。
チーム内ではアン・イクス監督もオミクロン株の症状が出て、検査を受けた状況と伝えられている。済州戦を翌日に控えた18日、チーム内でさらに感染者が発生することが懸念されている。
現時点で、蔚山現代もFCソウルも正常な試合開催がほぼ不可能な状況であることは確かだ。それでも韓国プロサッカー連盟は原則に基づいて開催を強行するのか、今後の動向を見守りたい。
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