なんでもかんでも「OUT」と叫ぶ。成績不振に陥れば、すぐに監督の辞任を求める。近年のKリーグで見られる光景だ。
監督は成績の責任を負う最も重要な人物だ。チームの成績が振るわなければ、周囲の“圧”を受けるのは当然のことだ。
SNSが発達した最近では、ファンがオフライン・オンライン問わず積極的に意思を表明する。特に、監督の辞任を要求する姿が簡単にみられるようになった。
ただ、現在のKリーグは、あまりにも簡単に監督交代を要求する雰囲気が形成されている。
監督交代は最も極端な方式の変化だ。チーム全体の方向性が変わるため、すべての選択肢のなかで何よりも最後に出なければならない答えである。
特に、シーズン途中の監督交代というのは、まさに劇薬の処方が必要なときに用いる方法であるにもかかわらず、ファンはあまりにも簡単に「OUT」という単語を吐き出す。まるで、監督を交代すれば状況が必ず良くなると確信しているような雰囲気だ。
監督交代が万能薬ではないことを示す事例はいくつもある。今シーズンだけでも容易にみられる。
まず、元日本代表MF齋藤学(32)が所属するKリーグ1(1部)の水原三星(スウォン・サムスン)ブルーウィングスは、直近9試合で4分5敗と勝ち星がない。開幕2か月後の4月に監督交代に踏み切ったが、入れ替え戦圏内の11位を脱出できずにいる。
Kリーグ2(2部)にも、似たようなチームが2つある。全南(チョンナム)ドラゴンズと釜山(プサン)アイパークだ。
今季アジア・チャンピオンズリーグ(ACL)にも出場し、日本人MF佐藤優平(31)が所属することでも知られる全南は、新監督体制で未だ初勝利を収められていない。釜山の事情はさらに悪く、監督交代後、むしろ最下位に転落してしまった。
これらのチームが、監督交代をすべきではなかったという意味ではない。当時の事情を鑑みれば、監督交代は避けられなかった。それに、新しく就任した監督たちは、いずれもそれなりの長所と経歴を備えた人物だ。実際、就任当初は大きな期待を受けていたし、今後改善される余地もある。
ただ、監督に変化を与えたからといって、今すぐにすべてが良くなるわけではないという事実は、必ず指摘する必要がある。
監督交代で成功するためには、多くの要件が伴わなければならない。
過去には仁川(インチョン)ユナイテッドが、降格危機に陥りながらも、監督交代によって残留する歴史を何度も築いてきた。
このためには、基本的には新監督に能力が備わっていなければならない。ピンチを脱出するノウハウとメンタルの強さ、リーダーシップが必要だ。選手との相性も合わなければならない。ここでいう「相性」とは、監督が追求するスタイルに合う人材が必要という意味だ。
また、シーズン途中からチームに入るだけに、それまでに何が問題だったのかをしっかり把握して、それを解決できる能力も必要だ。
そして、交代のタイミングも適切でなければならない。最も重要な瞬間、避けられない時点で監督を変えてこそ、効果を極大化することができる。これらすべての要件がそろわなければ、大きな効果を得られることは難しい。
韓国で監督は“魔法使い”にならなければならない。監督一人があまりに多くのものを背負い、レースを引っ張らなければならない。
ただ、実際にサッカーをするのは選手たちだ。監督の役割が大きいのは確かだが、成績に直結する最も重要な要素は選手構成だ。監督の能力でチームが上手く行くケースもあるが、そんな監督でも、新しい環境では失敗するケースが多い。
あくまで監督も一人の人間だ。監督にすべてを抱え込ませ、多くのことを期待してはならない。現在のようにむやみに交代を要求する文化は、結局のところ「ファンタジー」に過ぎないということを理解する必要がある。
あまりにも頻繁で軽率な監督交代の要求は、自分が応援するチームの雰囲気を台無しにするということを知らなければならない。
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