「チームが1%でも勝てる確率があるのであれば…」
大邱(テグ)FCのキャプテンを務めるキム・ジンヒョク(28)は、韓国Kリーグでも屈指の“マルチプレーヤー”だ。
2015年に大邱FCでプロデビューした当時はFW登録だったが、ともにプレーした外国人FWの壁を超えられず。そこからセンターバックへのコンバートを決意し、今は主力に定着している。
そして、攻撃陣に空白が生じた際はキム・ジンヒョクがその代わりを務める。今シーズンもその起用法は変わらず、開幕当初はセンターバックで出場していた彼は、ブラジル人FWエドガー(34)や元FC岐阜のFWパク・ギドン(32)ら前線が相次いで離脱するなかで“ストライカー”の役割をまっとうした。
キム・ジンヒョクはリーグ前半戦にDFとして6試合、FWとして9試合に出場し、5ゴール1アシストを記録している。
「大邱FCに来た当時はFWとしてほとんどプレーできなかった。“なぜ今さら…あの頃は自分を認めてくれなかったのに”と愚痴をこぼしたこともある。チャンスすら与えてもらえなかったんだ」
苦しんだ過去をこう振り返るキム・ジンヒョク。「実際、FWの方が準備が楽だし面白い。でも、今は守備の選手として認められ、いつかは韓国代表になりたいと思っている。自信はあるが、残念なことにチャンスがない」と話す彼は、「FWは“愛憎”だ。プレーできることはありがたいことだが、あの頃もっと上手く行っていたらどうだったか、と思うこともある」と明かした。
キム・ジンヒョクは今シーズンから初めてキャプテンを任された。高いリーダーシップを評価されてのことだ。
だが、就任早々に困難を強いられた。大邱FCは直近10試合で無敗(8勝2分)と好調だが、開幕当初は下位に沈み、浮上のきっかけをつかめずにいた。「地獄と天国を行き来したかのようだ。眠れない日もあった」とキム・ジンヒョクは振り返る。
「ただ黙っているわけにはいかなかった。第4節の江原FC戦で敗れた後、選手同士で集まって虚心坦懐な話をした。全選手が一言ずつ話したことで、チームが一つになったと思う。絶望的な状況から巻き返しに成功したときは大邱FCの持つ力の大きさを感じた。“優勝も不可能ではない”というムードが選手内にある」
大邱FCは今回、2年ぶりの出場となるアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)で、川崎フロンターレ(日本)、ユナイテッド・シティ(フィリピン)、北京FC(中国)と同じグループIを戦う。6月27日(日本時間)の初戦では早々に川崎と激突する。
2年前の初出場時は、パフォーマンスこそ悪くなかったもののグループステージを突破できなかった。大邱FCはサンフレッチェ広島、広州恒大(現・広州FC)、メルボルン・ビクトリーと同居したグループを3勝3敗の3位で終えていた。
現在のチームには日本人MF西翼(31)をはじめ、当時の悔しさを知る選手が多くいる。さらには蔚山現代(ウルサン・ヒョンデ)でACL制覇を2度経験した元ジュビロ磐田、ガンバ大阪のFWイ・グノ(36)や、チェンライ・ユナイテッド(タイ)から新たに加入したMFイ・ヨンレ(35)など、経験豊富なベテランもそろっている。
キム・ジンヒョクは初の決勝トーナメント進出に向け、「どの大会でもすべての試合で勝ちたい。ACLは国を代表して出場する大会だ。しっかり準備を進めており、“アジアでもできる”という自信をつかみ取りたい」と意気込んだ。
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