突然この世を去ったイ・ソンギュンさんの「最後の70日」、韓国調査報道番組が特集放送へ

2024年01月15日 テレビ

2023年12月27日、大物韓国俳優が突然この世を去った。

【注目】イ・ソンギュンさんの“最後のメモ”を報じたメディア、猛非難

違法薬物疑惑で警察の捜査対象となっていた俳優イ・ソンギュンさんのことだ。享年48歳。

悲報が飛び出した日は、警察が内偵中だという報道が出てから70日目だった。最近では、映画監督のポン・ジュノら文化人が中心となり、警察の捜査やマスコミの報道が正しかったのかという問題が提起された。

そんななか、韓国MBCの調査報道番組『PD手帳』(原題)は、元麻薬捜査担当検事の弁護士、心理学教授、人権活動家など、専門家たちの深層分析を通じてイ・ソンギュンさんの“最後の70日”を振り返る。

本事件の発端は、遊興店の女性スタッフ、キム氏の供述だった。被疑者でもある彼女の証言をもとに、警察はイ・ソンギュンさんを立件した。

キーとなる女性の調書を入手

イ・ソンギュン
(写真提供=OSEN)イ・ソンギュンさん

『PD手帳』はキム氏の“被疑者尋問調書”を入手。番組が調べた結果、11回の被疑者尋問の内、警察とキム氏が“イ・ソンギュン”に言及した回数は196と確認されたという。

このことからわかるのは、イ・ソンギュンさんに対する集中的な調査が行われたということだ。具体的な投薬日について、キム氏は昼夜逆転の生活をしているため、日付の概念が正確ではなく、過去のことは覚えていないという話もしていた。

仁川(インチョン)警察庁・麻薬犯罪捜査係が、薬物容疑でキム氏を初めて調査したのは、2023年10月19日のこと。初の被疑者尋問が終了したのは同日14時19分頃だった。

ところが、わずか3時間後の17時17分頃、ある韓国メディアが、イ・ソンギュンさんが薬物容疑で内偵を受けているという事実を初報道。これは捜査機関が発表しなければ分からない情報だった。『PD手帳』は当該記事を報道した記者に対し、情報入手の経緯を尋ねたとのことだ。

「被疑事実をマスコミに知らせて報道されれば、裁判を受ける前にその人に対する判断が終わってしまいます」「被疑事実を公表する人たちが警察官や検事たちなので(刑法第126条の被疑事実公表は)、事実上、死文化されています。処罰をしないのです。自分の犯罪を自分で罰しなければならないから」とオ・チャンイク人権連帯事務局長は語る。

以降、イ・ソンギュンさんの簡易試薬検査(尿)、毛髪・体毛の精密鑑定結果は全て「陰性」だった。ところが約1カ月後、警察は再びイ・ソンギュンさんを召喚。計3回行われた公開召喚で、彼が警察に出頭する姿はリアルタイムで報道された。

『PD手帳』はイ・ソンギュンさんの召還日をマスコミが把握していた理由と、3次調査で当事者の非公開出席要求がなされなかった理由を警察に尋ねたりもした。

警察の捜査姿勢にもメス

先立って2022年10月、韓国政府は麻薬との戦争を宣言。ユン・ヒグン警察庁長は、「チーム全体の特進などの褒賞を設け、昨年の麻薬捜査特進者を、2022年と比べて6倍以上増加した50人に増やす」と明らかに。この影響か、2023年の麻薬類事犯は2万人を超え、史上最高を記録した。

『PD手帳』は警察の麻薬捜査過程に問題を提起する人々にも会っている。昨年1月、警察が大々的に広報した、いわゆる“麻薬パーティールーム”の摘発だ。

麻薬流通業者の元恋人を性的暴行で警察に通報した女性に、警察は大麻畑の位置など薬物捜査に必要な情報を6つ提供せよと要請。大麻畑の位置を苦労して突き止めると、警察は「芸能人がパーティーをするタイミングを知りたい」とし、10月中旬になってようやく検挙に乗り出した。捜査機関が芸能人などの有名人を捜査し、処罰を受けるようにした場合、明確な実績となり、評価に良い影響を与えるという指摘だ。

1月12日には、ソウル中区のプレスセンターで、29の文化芸術関連団体と約2000人の文化芸術家が、イ・ソンギュンさんの死に関して捜査当局に真相究明を促した。また、メディアの報道が国民の知る権利のための公益的目的で行われたのかと問うなど、無分別なプライバシー報道を批判した。『PD手帳』は麻薬事件と関連して、有名人の被疑事実公表問題、警察が実績を重視した麻薬捜査疑惑の背景と問題点を調べる。

『PD手帳 <70日、故イ・ソンギュン俳優の最後の時間>』は1月16日21時放送。

(記事提供=OSEN)

◇イ・ソンギュンさん プロフィール

1975年3月2日生まれ。2001年、MBCのシチュエーションコメディ『恋人たち』(原題)でデビュー。2007年のドラマ『白い巨塔』韓国版で正義感の強い“チェ・ドンヨン(日本の里見脩二)役”を演じてブレイクし、『コーヒープリンス1号店』『パスタ~恋が出来るまで~』『ゴールデンタイム』『マイ・ディア・ミスター~私のおじさん~』と数多くの人気ドラマに出演した。映画『僕の妻のすべて』『最後まで行く』『パラサイト 半地下の家族』などでも高い演技力を発揮。プライベートでは2009年5月に女優チョン・ヘジンと結婚しており、同年11月に長男が、2011年8月に次男が産まれている。2023年12月27日、48歳でこの世を去った。

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