2022年5月、ある女優がソウル中心地で飲酒運転事故を起こした。
彼女の名はキム・セロン(22)。映画『アジョシ』(2010)では俳優ウォンビンと共演し、大韓民国映画大賞新人女優賞を最年少で受賞したこともある“元”天才子役女優だ。
そんなキム・セロンは最近、生活苦を訴えている。
というのも、キム・セロンは事故で街頭の変圧器などにぶつかり、現場一帯に停電を引き起こした。被害を受けた近隣商店街への賠償金をはじめ、裁判に伴う訴訟費用や罰金も払わなければならない。
また、イメージダウンによって生じた広告の解約の違約金も多く、収入がないことから、生活苦に苦しんでいるという。
この過程で判明した事実も多い。これまでキム・セロンがバラエティ番組などで公開してきた家は所属事務所名義で借りており、収入の大部分が両親の事業資金、家族の生活費として使用されたことで財産がほとんどないことが分かっている。
事故後にかかった被害補償金、違約金、訴訟費用などはすべて事務所が一旦負担しており、キム・セロン自身は会社に大きな借金をすることになった。
そこで今回、事故によって発生した被害賠償金と違約金、そして訴訟費用などを所属事務所のスタッフに対する会社負担の経費として処理できるか、それともキム・セロンの個人費用で所属事務所が優先支給し、スタッフに対する債権・債務として処理しなければならないのかを調べてみた。
法人や所属事務所のスタッフで発生する被害補償金や違約金、訴訟費用などは、法人の事業と関連して発生したり、支出された損失または費用として、一般的に認められる収益に直接関連したものは、法人が負担する費用として処理できる。
例として、他の会社に勤務するタレントやアスリート、そしてスタッフをスカウトして採用する際、スカウトと関連したすべての民事・刑事上の問題に責任を負うことに約定したあと、支出する訴訟費用は訴訟の対象となる行為が法人の業務遂行と関連することとなり、また故意と重過失によるものでない場合には、その支出した訴訟費用は法人の各事業年度の所得金額計算上損金、すなわち費用として処理できる。
法人が、業務と関係なく株主の個人的な経営権紛争などと関連して負担した訴訟費用は、訴訟内容、業務関連性、当事者可否を問い詰めてみなければならないが、個人株主を相手に提起した訴訟ならば、法人の費用として処理できない。
税法では会社の役職員がたとえ会社の事業と関連があっても、役職員の故意と重過失、そして私的な活動による訴訟や被害要求が入ってきたとすれば、会社の費用として処理できない。また、役職員が支給する能力がなく、資金を代わりに支給したとすれば、債権・債務関係が発生する。
従って、キム・セロンの飲酒運転事故は個人のミスによって発生した事件であることから、個人的に費用を支払わなければならず、むしろ所属会社と結んだ契約条件によって、所属会社にも支払う違約賠償金が発生する恐れがある残念な状態だ。
現在、キム・セロンの費用を代わりに支給した所属事務所も貸与金として処理し、適正な利子を受けなければならない。
税法では、法人が役員またはスタッフに金銭を無償、もしくは低利率で貸与した場合、不当行為計算の類型に該当するので、役員・使用人に当該法人の業務と関連のない資金の貸与額は、業務と関連のない仮支給金と見なされる。
現在、仮払金に対する適正利率は年間4.6%で、キム・セロンは非常に高い利子を会社に払うこととなる。
キム・セロンの飲酒運転事件は、人気スターは一般人よりもはるかに自己管理を徹底しなければならないことを改めて教えてくれるケースだ。
◇キム・セロン プロフィール
2000年7月31日生まれ。9歳から子役として活動を始め、スクリーンデビューとなった2009年公開の主演映画『冬の小鳥』では孤児院に捨てられた少女を熱演。カンヌ国際映画祭に韓国の役者史上最年少で招待された。2010年に公開された『アジョシ』ではウォンビンと共演し、大韓民国映画大賞新人女優賞を最年少で受賞した。現在は実力派女優として多方面に活躍。特に、2019年に韓国で放送されたドラマ『レバレッジ:詐欺操作団』では、凄腕の女泥棒役を見事に演じて魅力的な姿を披露した。
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