イ・ビョンフン監督はなぜ「韓国時代劇の傑作」を次々に制作できるのか?

イ・ビョンフン監督は、日本で韓国時代劇が定着するうえでもっとも貢献した演出家である。『宮廷女官 チャングムの誓い』は“好きな韓国時代劇”のアンケートで常に上位にランクされるし、『イ・サン』と『トンイ』も傑作の評価を得ている。最近では、『オクニョ 運命の女(ひと)』も人気を集めた。

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イ・ビョンフン監督の作品がなければ、日本でこれほど韓国時代劇が受け入れられなかった、と言っても過言ではない。

このようにイ・ビョンフン監督の作品が愛されるのは、主人公のキャラクターが魅力的だからだ。

チャングムにしても正祖(チョンジョ)にしてもトンイにしても、みんな逆境の中で塗炭(とたん)の苦しみを味わうが、決して希望を失わず、自分を信じて前向きに精進し、最後は努力が実って夢をかなえる。

それだけに、視聴者はドラマを通して主人公が成長する過程を一緒に体験するような気持ちになれる。そういう意味でも、困難な時代になればなるほど、イ・ビョンフン監督の作品は見ている人を励まし勇気を与えてくれる。

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このイ・ビョンフン監督の題材選びは独特だ。

いつも膨大な歴史書の中からドラマの主人公にふさわしい人物をさがしだすのだが、『イ・サン』の次の作品を準備しているとき、最初は昭顕(ソヒョン)を取り上げようとしていた。

昭顕は16代王・仁祖(インジョ)の長男で世子(セジャ/王の後継者)に決まっていたが、1636年に朝鮮王朝が清に攻められて屈伏したとき、人質として清に連れ去られている。その清で開化思想に触れて世界的視野を持った点がイ・ビョンフン監督も気に入ったようだが、最終的には昭顕を主人公にすることを見送っている。

それは、彼が最後に悲劇的な死に方をするからだった。

これでは希望が持てるドラマをつくれないと感じたイ・ビョンフン監督は、さらなる検討を重ねた結果、歴史の中で埋もれていた淑嬪(スクピン)・崔氏(チェシ)を選び出し、明るく力強く生きる女性の王宮一代記として『トンイ』を制作した。

この『トンイ』が世に出た意義は大きい。なぜなら、『イ・サン』と連動することによって、朝鮮王朝時代の17世紀後半から18世紀末までの100数十年の歴史が網羅できたのである。

すなわち、粛宗(スクチョン)から英祖(ヨンジョ)、正祖に至る名君の系譜を理解しやすくなった。

ドラマはフィクションとはいえ、根底にある歴史的部分は事実である。当時の人たちがどう生きたか、ということは興味深い。その点でもイ・ビョンフン監督の作品は、好奇心を大いに刺激してくれる。

(文=康 熙奉/カン・ヒボン)
 

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