日本で今、絶大な人気を呼んでいる韓国料理は何か。
キムチでもプルコギでもない。チーズタッカルビだ。どれほど人気なのかは、チーズタッカルビを出す店舗の種類を知ればわかるだろう。
東京・新大久保のコリアンタウンにタッカルビ専門レストランがあるのは当たり前。日本の全国各地に点在する韓国風居酒屋のメニューにも、チーズタッカルビはかならずあると言ってもいい。それどころか、日本のファミリーレストラン・チェーンである『デニーズ』でも“デニーズ風チーズタッカルビ”があるし、サラリーマンの胃袋を満たす牛丼チェーン『松屋』も“チーズタッカルビ定食”を発売している。
日本のコンビニエンス・ストア『ファミリーマート』では、“タッカルビチキンステーキ”、“チーズタッカルビ丼”、“チーズタッカルビまんじゅう”、“チーズタッカルビおむすび”まで発売している状況だ。
まさに日本で今、もっとも有名な韓国料理は“チーズタッカルビ”というわけだが、実はその予兆は昨年からあった。
端的な例が昨年12月に発表された『JC・JK流行語大賞2017』だ。JCとは英字表記した“女子中学生”を略した言葉で、JKとは“女子高校生”を短縮した略語。つまり、10代の女子たちの間で流行っている「人」「モノ」「言葉」「アプリ」を決めようというランキングなのだが、チーズタッカルビは「モノ」部門で1位だったのだ。ちなみに「人」部門では人気K-POPグループのTWICEが選ばれている。
日本では昔から「流行の始発点は10代の女子高生たち」と言われ、「女子高生から支持を得られればかならずヒットする」という都市伝説があるが、チーズタッカルビ(TWICEも)、見事にその都市伝説を再現したことになる。
最近は外食としてチーズタッカルビを楽しむだけではなく、人気レシピサイト『クックパッド』の食トレンド大賞でもチーズタッカルビが1位になるなど、自宅でチーズタッカルビに舌鼓みを打つ人までいるというのだから、まさに一大旋風を呼んでいると言えるだろう。
韓国では2年ほど前にブームとなっていた印象があるが、それが日本でこれほど浸透するとは想像していなかった。
しかも、日本のチーズタッカルビ人気は単なるブームに終わりそうもないという見方もあるのだ。
「2017年に引き続き韓国のアーティストや料理への人気は高く、2018年は“クール・コリア現象”が起こるのではないか」。そう発言したのは、15歳で起業し、高校時代から“日本一かわいい女子高校生社長”として有名だった株式会社AMFの社長、椎木里佳氏だ。
椎木氏は、女子中高校生向けのマーケティング支援などを手掛ける言わば“トレンドセッター”だが、その彼女が、2018年は女子中高校生たちの間で、“クール・コリア”現象が起きると予想したのだ。
実際、最近、日本のメディアでは“第3次韓流ブーム”という言葉も囁かれるようになった。前出のTWICEだけではなく、BTS(防弾少年団)などが日本で絶大な人気を呼んでいる。
BTSは3月5日付けの朝日新聞の文化面で、その人気を探り分析する特集記事まで組まれたほどである。
チーズタッカルビにTWICEにBTSまで。日本のティーンエイジャーたちが夢中になっていることは、筆者も肌で感じている。13歳になる筆者の一人娘もまた、この3大ブームに夢中なのだ。
ただ、ブームは“香り”のようなもので一過性のあるものである。果たしてとろーり溶けたチーズタッカルビの“香り”がいつまで続くだろうか。注目してみたい。
(文=慎 武宏)
初出:『スポーツソウル』(2018年3月22日)