BTS(防弾少年団)が意味のあるメッセージを伝え、話題となっている。最近、アメリカで横行しているアジア系市民へのヘイト問題に、断固として反対したのだ。
BTSは去る3月30日、公式ツイッターに「#Stop Asian Hate」とハッシュタグをつけ、長文を書き込んだ。「Stop Asian Hate」は、アジア系に対するヘイト犯罪撲滅を意味する。
長文では「僕たちは人種差別に反対します。僕たちは暴力に反対します。僕、あなた、我々は皆尊重される権利があります。ご一緒します」というメッセージを伝えているのだが、注目を集めたのは「僕たちもアジア人という理由で差別された記憶があります」という一文だ。
BTSは「今起きていることに比べると些細なこと」としながらも、「道を歩いていると突然悪口を吐かれたり、見た目を卑下されたりもしました。さらにはアジア人がどうして英語をしゃべるのか、と聞いたこともあります」と告白した。
BTSは控えめに差別を受けた記憶を表現したが、彼らにちなんだ人種差別の問題は、その程度のものではないと感じた人も多いはずだ。
直近では、アメリカの大手カード会社が第63回グラミー賞を記念してリリースした商品が問題視された。
ブルーノ・マーズ、ビリー・アイリッシュ、テイラー・スウィフトなど授賞式に参加したアーティストを絵で表現したカードなのだが、BTSのイラストは、なぜかメンバーの顔に傷やあざが描かれた。さらにそのカードでBTSメンバーは、“モグラ叩き”のモグラとして表現された。
【画像】BTSを醜い“モグラ叩き”で表現した米カード会社が炎上…人種差別騒動で謝罪
理解しがたい表現は当然ながら問題となり、人種差別の議論にまで発展したが、カード会社が謝罪したことで一段落はした。
今年2月にはドイツの有名ラジオDJが、BTSが英国ロックバンド・コールドプレイの『Fix you』をカバーしたことについて言及し、「冒涜」と表現。「BTSはコロナウイルスのような略語で、彼らに対するワクチンがあることを願っている。BTSは北朝鮮で20年間休暇を過ごす資格がある」などと発言して議論を呼んだ。
オーストラリアの放送局がBTSを侮辱したこともある。同番組はBTSに対して「最も人気のあるグループ」と紹介したのだが、番組の男性MCは「アメリカで1位を獲得したくせに、英語を話せるメンバーが1人しかいない」「メンバー7人のうち1人は確実にゲイ」「韓国でブレイクしたと聞いて、北朝鮮の核のことだと思った」などの問題発言を繰り返した。
他にもギリシャの女性タレントがテレビ番組で、BTSメンバーらのヘアカラーとメイクを皮肉るように「女みたいな顔をしている」と侮辱し、「韓国人男性はみな不細工」「アジア人のような顔つき」といった人種差別に近い発言で物議を醸したこともあった。
つまるところアメリカに限らず、世界中で問題発言があることがわかる。だからこそ今回BTSが伝えた明確なメッセージには、強い思いを感じることができる。
BTSは昨年、黒人差別が大きな問題になったときも「私たちは人種差別に反対します。私たちは暴力に反対します」と発表し、黒人の人権運動キャンペーンに100万ドルを寄付していた。
政治的なメッセージを避けるアーティストも少なくないが、人種差別の問題に関してBTSは一貫している。彼らの呼びかけが一人でも多くの人に届くことを願う。
(文=慎 武宏)
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