結局、「1-0」は危険なスコアだったわけだ。
ホン・ミョンボ監督率いる蔚山現代(ウルサン・ヒョンデ)は4月24日、敵地・横浜国際総合競技場で行われた横浜F・マリノスとのAFCチャンピオンズリーグ(ACL)準決勝第2戦でPK戦の末に敗れた。
ホーム第1戦をMFイ・ドンギョン(26)のゴールで1-0と辛勝した蔚山は、第2戦の90分間を2-3で終えた。試合は2戦合計3-3で延長戦突入も決着つかず、最後はPK戦で5人目のキッカー、MFキム・ミヌ(34)が失敗し4-5。ACL決勝の切符を逃した。
“1点リード”が足を引っ張った。蔚山は横浜FMの約束された前線プレスに苦戦し、序盤から不安定な姿を見せた。
DFキム・ヨングォン(34)、MFイ・ギュソン(29)らの失策性プレーも目立ち、結果として開始30分で3失点を喫した。FW植中朝日(22)が2得点、FWアンデルソン・ロペス(30)が1得点を記録した。
その後も横浜FMの攻勢が続き、もはや“八方塞がり”の状況と見られたが、前半34分にホン・ミョンボ監督が取り出した「ボヤニッチ・カード」が戦況を覆した。
イ・ギュソンを下げて元スウェーデン代表MFダリヤン・ボヤニッチ(29)を投入した1分後、蔚山はMFイ・ドンギョン(26)のコーナーキックをブラジル人MFマテウス(28)がヘディングで合わせ1点を返した。
さらには5分後、ボヤニッチの精巧なパスに抜け出したFWオム・ウォンサン(25)がペナルティエリア内に侵入すると、相手DF上島拓巳(27)がハンドの反則を犯し、レッドカードで一発退場。
これで得たPKをボヤニッチが冷静に沈め、2戦合計スコアをイーブンに戻すとともに、数的優位というアドバンテージまで確保した。
その後は前半30分までの“悪夢”が嘘かのように、蔚山がほぼ一方的に10人の横浜FMを攻め立てた。
しかし、信じられないほどに得点が生まれなかった。途中出場のMFキム・ミヌ(34)はゴール前の決定機でポストを叩くなど、実に120分間で40本、まるで“夕立”のようなシュートの雨を浴びせ続けたが、それもすべて無意味だった。
結局、勝敗は“運試し”とも言えるPK戦に委ねられ、ACL決勝行きのチケットは横浜FMに渡ることになった。
蔚山は第1戦で勝利こそしたものの、後半終盤のFWチュ・ミンギュ(34)やイ・ドンギョンのシュートがポストに嫌われるなど追加点に失敗し、ギリギリのスコア「1-0」でアウェイに臨まざるを得なくなった。
結果的に、ホームで数多く迎えた決定機のうち一つでも決め切れていれば、第2戦の悲劇はなかったかも知れない。
ホン・ミョンボ監督も試合後、「相手の(1人)退場後に多くの攻撃を試みたが、第1戦と同じく第2戦も(望むほどの)得点が出なかった」とチームの決定機逸を残念がっていた。
ただ、運がなかったこともあるが、そもそもパフォーマンスが低調だったことも事実だ。
第2戦では激しい雨が降り注ぐなか、守備陣の機動力が著しく落ちた。
また、後半から投入されたハンガリー代表FWアーダーム・マルティン(29)など、“フィニッシャー”の役割を果たすべき攻撃陣が苦しんだ。
蔚山は試合2日前の22日午前まで韓国国内で練習し、午後遅くに日本に入国した。
横浜現地では一日のみ適応のためのトレーニングに臨み、実戦を戦ったが、急な天候変化もあって主力のコンディションが良くなかった。
蔚山は来る28日、ホームで行われる済州(チェジュ)ユナイテッドとのKリーグ1(1部)第9節から国内での試合が再開する。
直近では5月1日の第10節大邱(テグ)FC戦、4日の第11節FCソウル戦まで3連戦が予定されているが、まずは体と心の傷を早く癒すことがカギだ。
ちなみに、蔚山がACL決勝進出に失敗したことで、全北現代(チョンブク・ヒョンデ)モータースの2025年クラブW杯出場も可能性が途絶えた。
クラブW杯のアジア勢出場枠が4枚配分されたなか、2021年ACL王者のアル・ヒラル、2022年ACL王者の浦和レッズがすでに出場権を獲得。
そして、蔚山が準決勝第1戦で勝利したことでAFCクラブランキング2位に上がり、出場権を手にした(同1位はアル・ヒラル)。
ランキング3位の全北は、蔚山がACLで優勝した場合にクラブW杯に出場できるチャンスがあったが、今回の敗戦でその可能性は潰えた。
なお、決勝では横浜FMとUAEのアル・アインが優勝の座をかけて激突する。
(構成=ピッチコミュニケーションズ)
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