横浜F・マリノスのFW水沼宏太(34)が、元同僚のPK失敗に複雑な心情を明かした。
4月24日、横浜国際総合競技場(日産スタジアム)で行われた横浜FM対蔚山現代(ウルサン・ヒョンデ)とのAFCチャンピオンズリーグ(ACL)準決勝第2戦は2-3(2戦合計スコア3-3)とし、横浜FMがPK戦5-4で決勝進出を決めた。
PK戦までもつれる死闘となった今回の一戦では、かつてサガン鳥栖でチームメイトだった“同い年コンビ”がピッチで対峙した。
横浜FMの水沼、そして蔚山のMFキム・ミヌ(34)だ。
ともに1990年生まれで誕生日も3日違い(水沼が2月22日、ミヌが2月25日)という2人は、2012~2015年の4年間で同じユニホームに袖を通した。
2014年5月10日に日産で行われたJ1リーグ第13節の横浜FM戦では、水沼のミドルシュートのこぼれ球をキム・ミヌが押し込んで先制するなど、2人の活躍でチームを勝利(2-1)に導いたこともある。
昨季まで中国の成都蓉城でプレーしたキム・ミヌが蔚山に加入し、ともに準決勝まで勝ち進んだことで実現した今回の対決。
蔚山ホームの第1戦では水沼が後半44分から途中出場も、キム・ミヌは投入されず。再び両者ベンチスタートとなった横浜での第2戦、水沼が後半36分、キム・ミヌが同37分と偶然にも“1分違い”のタイミングで、ともに同じピッチに立った。
「この前の試合(第1戦)で僕は5分ぐらいだけ出場して、でもミヌが出られなくて。“次は絶対一緒にピッチに立とう”というなかで(今回は)僕が先に出て、ミヌが後から出てきて一緒に(ピッチに)立てたんですけど…」
試合は数的優位の蔚山が猛攻を仕掛ける展開のなか、キャプテンマークを巻いたキム・ミヌが後半終盤にゴール前でポスト直撃のシュートを打ったと思えば、水沼も延長前半12分に決定機。
キム・ミヌは延長後半10分、コーナーキックの混戦からこぼれ球を押し込むもオフサイドで得点取り消しとなったが、同13分にはわずかに枠を外れるシュートを放つなど、ともに相手の脅威となるプレーを見せ続けていた。
そして最後のPK戦、水沼も2人目で成功させるなど両チーム4人目まで失敗なく続いたなか、蔚山5人目でキム・ミヌが登場。長めの助走から振り抜いた左足のシュートは、横浜FM守護神ポープ・ウィリアム(29)に防がれ、無情にも枠を外れた。
結局、5人目のDFエドゥアルド(30)も成功した横浜FMがACLファイナルの切符を獲得した。ただ、場内が大歓声に包まれるなかキム・ミヌは顔を上げられず、蔚山の同僚に慰められていた。
「PKをあいつが外したっていうのは、自分の中ですごく苦しいものがあります」
劇的な幕切れとなった一戦を終え、率直な心情を吐露した水沼。そのうえで「でも…」と言葉を続けた。
「2020年ACLのベスト16で対戦したときにあいつ(ミヌ)が水原三星にいて、僕はマリノスにいて。(結果は)僕は試合出られなくて負けて、ミヌが決めて(水原三星が)勝ったので、そのリベンジは果たせたかなと思います」
「でも、めちゃくちゃ大好きな奴なだけに、(PKを)外したのはすごい…僕のなかでは“あっ”て思うところはあります」
そんな元同僚との激闘を経て、アジア王者を決める最後の舞台に進んだ水沼。最後、感慨深い表情でこう話していた。
「勝負の世界を超えて、またしびれる試合を昔の仲間と一緒に戦えたっていうのはとても刺激になりますし、また戦うことができたら良いなと思います」
(取材・文=姜 亨起/ピッチコミュニケーションズ)
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