450万ドル(日本円=約6億8000万円)ではなく、1600万ドル(約24億5000万円)だった。元通訳・水原一平氏が大谷翔平(29、ロサンゼルス・ドジャース)の口座から盗んだ金額だ。
このレベルになると恐ろしい。もはや“大胆”とも言える行動だ。ギャンブルの終着点はいつの時代も破滅しかない。
『ジ・アスレチック』『USAトゥデイ』『ESPN』などのアメリカメディアは4月12日(日本時間)、一斉に「大谷の元通訳・水原氏が連邦検察に銀行詐欺の疑いで起訴された。水原市は違法スポーツ賭博のために大谷の口座から1600万ドルを盗んだ」と報じた。
今回の一件は内国歳入庁(日本の国税庁に相当)と国税庁と国土安全保障省が捜査を進めた。
結果を発表したマーティン・エストラーダ検事は、「水原氏は大谷選手の口座から1600万ドルを強奪した。自分の地位を悪用した。水原氏を銀行詐欺の疑いで起訴した」と明らかにした。
続けて、「大谷選手は今回の事件の被害者と考えている。大谷選手が水原氏の賭博に関与したり、賭博の借金を代わりに返すために銀行口座を使ったりしたという証拠がない」と付け加えた。大谷への疑いが晴れた瞬間だった。
水原氏は2021年から違法賭博に手を出し、2024年1月まで続いた。実に1万9000回だ。1日平均25回も賭博を行った。
ベッティング額は10ドル(約1530円)から最大16万ドル(約2450万円)まであり、平均1万2800ドル(約196万円)だった。
賭博を通じて獲得した金額は1億4200万ドル(約218億円)だが、一方で失った金額は約1億8300万ドル(約280億円)。実に4068万ドル(約62億円)の純損失となった。
最初はただの娯楽で始めたのが、徐々に泥沼にハマった。
借金はどんどん積み重なり、返済ができなくなると、親切だった違法賭博業者のマシュー・ボウヤー氏もますます乱暴になった。
この過程で、大谷の金を1600万ドルも盗んだ。
手口も緻密だった。銀行に電話をかけた際、水原氏は自分を大谷と名乗った。
電話番号とメールアドレスも自身のものとするなど、自分の口座情報が他人に知られないために徹底的に統制した。
大谷も捜査に応じた。
携帯電話を当局に出し、フォレンジックを行った結果、大谷と水原氏の間に賭博関連の話が交わされた形跡はなかった。水原氏が徹底的に大谷には内緒で金を引き出したわけだ。
MLBソウルシリーズ途中の3月20日、水原氏は「大谷が自分の賭博の借金を返してくれた」と話したが、その後すぐに「大谷は知らなかった」と発言を翻した。また、最初に盗んだ金は450万ドルだと伝えた。
すると、徐々に疑いの声が大きくなった。「(大谷が)知らないわけがない」という主張だ。
これに大谷は自ら乗り出し、水原氏が自身の口座からお金を盗んだこと、自分が被害者であること、本当に知らなかったことを訴えた。
それでも、世間の視線は依然として厳しかった。
ただ今回の捜査によって、大谷の潔白は証明されたものと見られる。
完全に「疑いがない」と決定づけたわけではないが、「大谷は被害者と考える」と伝えた。この程度なであれば、状況は終わったと見なければならない。
『ジ・アスレチック』は「大谷に罪があるならば、友人を信じすぎたことしかない。これは犯罪ではない。資格停止の懲戒を受けることでもない。不注意、または管理ミスでお金を失ったスポーツスターは以前にもいた」と伝えた。
水原氏は最大30年の懲役刑と罰金100万ドル(約1億5000万円)の処罰を受ける可能性がある。
大谷は今回の賭博スキャンダルから脱却できる見通しだ。あとはMLB機構による“嫌疑なし”の発表を待つだけだ。
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