「残留王」と呼ばれ、降格圏で苦戦を続けてきたかつての姿はもうない。指揮官もキャプテンも「強いチームへと成長している」と自信を持って話す。
AFCチャンピオンズリーグ(ACL)グループステージで横浜F・マリノスと同組に入り、クラブ史上初のACLの舞台を戦う仁川(インチョン)ユナイテッドの話だ。
仁川は2023年シーズン、3つのコンペティションを並行している。Kリーグ1(1部)はもちろん、ベスト4まで勝ち残ったFAカップ、そしてプレーオフを突破して初の本大会進出を果たしたACLだ。
地方自治体が運営する市民クラブとして唯一降格経験がない仁川は、かつては毎年のように残留争いを繰り広げながら、最終的に劇的な1部残留を成し遂げることで「残留王」「生存王」と呼ばれてきた。
ただ、今ではそのイメージから“脱皮”し、より高い順位を目指すことのできるチームへと生まれ変わっている。
まず、今季開幕前の移籍市場では、ギニアビサウ出身FWジェルソ・フェルナンデス(32)や、2020年に蔚山現代(ウルサン・ヒョンデ)キャプテンとしてACL優勝を経験したMFシン・ジンホ(34)など即戦力を補強。ACLはもちろん、Kリーグでの上位進出を見据えて意欲的に新シーズンを迎えたが、序盤から厳しい戦いが続いた。シーズン中盤までは12チーム中7~9位と中位にとどまっていた。
分岐点となったのは7月からだ。徐々にチーム全体で安定感を取り戻し、連勝を積み重ねて順位を引き上げてきた。
そして、夏の移籍市場でのモンテネグロ代表FWステファン・ムゴシャ(31)の獲得が、チームにさらに勢いをもたらした。
昨年夏のヴィッセル神戸移籍から1年で復帰したムゴシャは、チームメイトと息の合った連係で前線の起点となり、仁川の攻撃を支えている。
仁川は7月から8月までの公式戦10試合で7試合2分1敗を記録した。直近では、8月25日にアウェイで行われた水原(スウォン)FCとのKリーグ1第28節で後半アディショナルタイムに劇的な逆転ゴールを決め、勝ち点3獲得に成功した。
水原FC戦のわずか3日前の22日には、ハイフォンFCとのACLプレーオフを延長戦まで戦い、3-1で辛くも勝利していた。夏の連戦で体力的な負担もあったが、Kリーグでの勝ち点獲得とACL本大会進出の“二兎”を着実につかんだ。
仁川を率いるチョ・ソンファン監督は、「(現在の好調を)足掛かりに、ACLに“オールイン”できる順位まで上がり、必ず結果を出したい」としつつも、「試合で勝ち続けることで、選手の凝集力と力強さがチームに生まれた。そのようなことがさらにより良い結果へとつながる。前向きに見ている」と、チームの変化について伝えた。
キャプテンのDFオ・バンソク(35)も同じだ。「チームが強くなっている気がする。そのような雰囲気が自然に形成された。選手たちがそれぞれやるべきことを要素ごとにこなしている」と彼は語った。
Kリーグ1第28節終了時点で、仁川は10勝10分8敗の勝ち点40で12チーム中6位につけている。3位の光州(クァンジュ)FC(勝ち点42)とはわずかに2ポイント差だが、一方で8位の大田(テジョン)ハナシチズン(勝ち点37)とも3ポイント差しか離れていない。
本当の戦いはこれからだ。一度でも油断すれば下位に落ち、集中力を継続できれば上位争いに食い込める。また、リーグ戦やカップ戦と並行して、横浜FM、カヤ・イロイロ、山東泰山と同組のACLグループステージも戦い抜かなければならない。
オ・バンソクはシーズン後半戦を見据え、「チームが目標としている場所がある。今は降格圏ではなく上位圏で競争をしている。気分が良い」とし、「まだ進行過程だ。今年を基点により良いチームになれると思う」と自信を示した。
(構成=ピッチコミュニケーションズ)
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