サッカー韓国代表が6月の国際親善試合で使用するスタジアムが、「代表戦に相応しくない」として議論の的となっている。
韓国サッカー協会(KFA)は、来る6月16日に行われるペルー代表との国際親善試合の会場として、韓国南東部にある釜山(プサン)広域市の釜山アジアド主競技場で決定した。
釜山での代表戦は、2019年12月に行われたE-1サッカー選手権以来、約3年6カ月ぶりだ。
試合を開催する名分はある。
釜山は韓国で2番目に大きい都市であるにもかかわらず、サッカー代表戦の開催とは程遠かった。
E-1選手権を開催したとはいえ、同大会は欧州組なしで行われたため、FWソン・フンミン(30、トッテナム)などといった代表の主力選手が出場しなかった。
サッカー代表戦は首都圏を中心に開催されるが、最近では大田(テジョン)や蔚山(ウルサン)などの地方大都市でも開催されている。地方のサッカーファンが楽しみ権利のためにも、各地方都市での試合開催は必要だ。
何より、韓国政府をはじめとする国内企業は現在、「2030釜山国際博覧会(釜山万博)」誘致に注力している。
ソン・フンミンをはじめDFキム・ミンジェ(26、ナポリ)やイ・ガンイン(22、マジョルカ)など、韓国サッカー界を代表するスター選手が釜山に登場するとなれば、少なくない広報効果を得られることは間違いない。
公的レベルでも、釜山でサッカーの国際親善試合を開催することは推進に値するイベントだ。
問題は、試合が行われる釜山アジアド主競技場の状態だ。
今月27日、同会場では「第29回ドリームコンサート」が開催される。多くの人気K-POPアイドルが出演する同イベントには大規模な人員が会場を訪れる予定であり、芝生が傷む可能性が高い。
釜山は2018年9月にも韓国対チリの国際親善試合を誘致しようとしたが、芝生の状態が深刻だったため、撤回したことがある。現在の芝生の状態も、ほかのワールドカップ競技場と比べて良くない。
芝生はパフォーマンスに大きな影響を与えるだけに、選手たちは芝生の状態に敏感だ。
現在の韓国代表の主力選手たちは、イングランドやイタリア、ドイツ、スペインなどのサッカー先進国でプレーしている。どこもスタジアムのピッチコンディションがトップクラスの国だ。
国内Kリーグでも近年は芝生の管理に注力しており、以前と比べて良い環境でプレーができている。
ただ、芝生の状態が代表戦を開催するに値しないレベルであれば、選手たちのプレーの妨げになる可能性がある。最上のパフォーマンスを発揮するうえで障害になりかねない。
とあるサッカー関係者は、「選手たちは会場に来たら芝生の状態からチェックする。非常に敏感で重要だと思う。代表選手たちはなおさらで、監督も同じだ。芝生は今や国際Aマッチ開催にあたり非常に重要な要素となっている」と伝えた。
釜山アジアド主競技場が代表戦を開催するに適していない理由はほかにもある。
協会の国際大会承認及び運営規定第18条(競技場及び付帯施設)によると、タッチライン及びゴールラインから芝生区域は最低1.5m以上、安全区域は最低5m以上確保しなければならない。ただ、釜山アジアド主競技場は現在、この条件を満たしているとはいいがたい。
ラインから1.5m離れた部分まで芝生があるため、芝生エリアは問題ないが、芝生の外にすぐ陸上トラックが露出している。
協会はラインと広告板の距離が5mであるため、陸上トラックが規定に明示されている“安全区域”に該当すると説明したが、現場関係者の意見は異なる。
最近、国際Aマッチを行った競技場を管理していたKリーグ関係者は、「陸上トラックは安全区域と見るには曖昧な部分がある。選手が速いスピードで走っている途中、ラインの近くで速度をコントロールできなければ、陸上トラックで転んで大怪我をする可能性が高い。試合中に十分発生し得る事故だ」と伝えた。
また、「選手たちがこの部分を気にするので、全力疾走の妨げにもなる。そのため、ほとんどのワールドカップ競技場では、芝生をラインから少なくとも3~4m離れた地点まで植える。5mまで植えた競技場もある。釜山アジアド主競技場は芝生の部分が短すぎる。選手にとって危険な環境に見える」と憂慮した。
協会は外観上の問題などにより、人工芝の設置を勧告すると伝えたが、ピッチから直接つながる天然芝でなければ選手の安全にはあまり役立たないという問題が残る。
今や韓国代表選手たちは世界的に認められる水準まで達した。
移籍専門サイト『トランスファーマルクト』によると、韓国代表選手たちの市場価値は1億7483万ユーロに達する。ソン・フンミン一人だけでも6000万ユーロの価値を持ち、キム・ミンジェも5000万ユーロ、イ・ガンインは1500万ユーロとしている。
ほかにも、FWファン・ヒチャン(27、ウォルヴァーハンプトン)は1200万ユーロ、FWファン・ウィジョ(30、FCソウル)は500万ユーロ、MFイ・ジェソン(30、マインツ)は400万ユーロ、MFファン・インボム(26、オリンピアコス)は350万ユーロとしている。
国を代表する選手としても意味があるが、選手個人の価値を認めざるを得ない。
万が一、彼らが基準を満たしていないピッチや質の悪い芝生でプレーして怪我をすれば、この試合を開催したKFAと芝生管理に責任がある釜山市には、耐えがたいレベルの非難が寄せられることになるだろう。
選手だけでなく、試合を観戦するファンも危険にさらされる恐れがある。
現在、釜山アジアド主競技場の屋根は2020年の台風9号によって9カ所が破損し、そのままの状態で放置されている。KFAによると、代表戦までに屋根を完全に補修することは不可能だという。そんななかで試合を開催し、仮に雨などが降れば、その被害はそのままファンに及ぶことになる。
なお、6月20日に行われる韓国対エルサルバドルの試合は、大田ワールドカップ競技場で開催される予定だ。
(構成=ピッチコミュニケーションズ)
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