2023年WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)での“惨敗劇”を受けて、韓国野球に提案したいことがある。
それは危険と言えば危険な提案かもしれない。既存の枠組みを破らなければならないため、簡単にできることでもない。
ただ、“できない”わけではない。我々はWBCで限界を感じさせられた。この先良くなるためには、今変わらなければならない。
今回のWBCで韓国は1次ラウンド・プールBに属した。日本、オーストラリア、チェコ、中国と同組だった。
大会前には「プールBが(相対的に)一番弱い」という評価もあった。だが、いざふたを開けてみるとまったく様相が違った。
その結果が、韓国の準々決勝進出失敗だ。
3大会連続の1次ラウンド敗退。オーストラリアに敗れ、日本には計り知れないほどの格差を突きつけられて惨敗した。
それでも、韓国野球にはもっと上手く戦える底力がある。少なくとも、これほどまでに野球ができない国ではない。
今大会を控え、韓国野球委員会(KBO)は可能な限りの最善を尽くした。韓国系選手の招集に積極的に動き、トミー・エドマン(27、セントルイス・カージナルス)という現役メジャーリーガーの代表入りに成功した。
ほかにも、「飛行機ビジネスクラスの提供」「最高級ホテルでの宿泊」「毎食で韓国料理の提供」「一人ひとりに戦力分析用タブレット支給」「負傷に備えた傷害保険加入」「巨額の褒賞金」など。バックアップの体制は万全だった。
あとは試合で結果を出すだけだったが、それも惨敗に終わり、KBOの苦労は報われなかった。
それでも打線は奮闘した。チーム打率(0.336)、OPS(出塁率+長打率/0.967)はいずれも1位を記録した。
中国戦の22得点を除いても、オーストラリア戦7得点、日本戦4得点と悪くなかった。特に、今大会で日本相手に4得点以上を記録したのはメキシコ(5得点)と韓国だけだ。
結局、問題なのは投手陣だ。オーストラリア戦の8失点、日本戦の13失点がそれを物語っている。最も重要な2試合で、マウンドが完全に崩れてしまった。
「コンディション調整の失敗」が真っ先に頭に浮かぶ。
大会までのスケジュールを振り返ると、アメリカ→韓国→大阪→東京という順だった。長距離移動は選手のコンディションに大きく影響を及ぼす。そもそも、多くの選手が自主トレのため1月から日本やアメリカに渡っていた。空で過ごした時間も多かったわけだ。
3年後の2026年に行われる第6回WBCでは、より早い時期に代表が集まり、より長い期間練習に取り組んではいかがだろうか。
もちろん、所属チームの春季キャンプを無視することはできない。しかし、韓国野球の「名誉回復」が重要なのであれば、一時的でもたった一度でも“試す”必要がある。
次回大会の組み合わせがどうなるかはわからないが、最初からアメリカに渡ることはないはずだ。であれば、韓国に近い日本や台湾でキャンプを組み、長距離移動の負担なく体を作ることが悪いはずがない。
最初から1月に集まることも方法の一つだ。
少なくない数の選手が、自費で早い時期から海外の温暖な地域に向かう。それを自主トレではなく、代表レベルで招集するというのはどうだろうか。代表活動の名分にもなるだろうし、より体系的に体作りができるメリットもある。
当然だが、これを可能とするには選手と協議し、同意を得る必要がある。といってもひたすら過去に回帰しようというわけではなく、ひとまず“一時的に”調整をしようという意味だ。
日本のプロ野球の場合、韓国プロ野球KBOリーグよりオープン戦開幕が早い。また、オフ期間の自主トレも韓国とは概念が少し異なる。
サムスン・ライオンズのパク・ジンマン監督は、「日本の選手はキャンプ開始初日からすぐに100%で投げられる。そのことを我々の選手たちも感じてもらいたい」と話した。
今回のWBCを戦った侍ジャパンも2月17日に初めて集まった。招集日そのものは韓国代表よりも遅かったが、それだけ各自が体をしっかり作り上げてきたという意味だ。加えて、自国で1次ラウンドを戦うだけに移動の負担もない。
ただ、より大きな問題なのはアマチュア野球、すなわち学生野球だ。
“高校最高の選手”と期待して獲得したはずが、「基本から教えなおさなければならない」とため息をつく監督が大多数いる。
とにかく比較対象は日本だ。韓国と比べてインフラも底辺も違うという事実は理解してるが、かといってこれ以上何もしないわけにはいかない。最初から野球ができないのであればともかく、発展の余地があるのであれば、発展するための方策を講じなければならない。
数千を越える高校野球部が存在する日本といっても、すべてがエリートというわけではない。日本のとある球界関係者は「国内でも名門と呼ばれる高校は50校程度で、100校は越えない」と説明した。
韓国には全体で95校の高校野球部がある。“エリート野球”の側面だけで見れば、決してついて行けないわけではない。これまで日本と対等に戦えた理由もそこにある。
しかし現実として、今回のWBCで日韓の野球の格差が広がったことは確認した。プロだけではなく、アマチュアの格差も認識しなければならない。
そのために最も必要なのは親善試合や強化試合などだが、試合を組むことは簡単な作業ではない。
であれば、次の手段となるのは「指導者研修」だ。野球の本場アメリカに行くことも良いが、隣国の日本から学ぶのはどうだろうか。
韓国ではある瞬間から、誰もがメジャーリーグのことばかり口にするようになった。
アメリカがトップレベルの先進野球をする国であることは事実だが、そもそも身体条件が違う。それを自国に直接適用させてしまっては危険だ。
むしろ日本の場合、独自のノウハウにアメリカの先進野球を上手く融合させている評価だ。実際、日本の名門高校はプロのトレーニング方法も共有している。プロ選手として上手く投げ、上手く打つ“方法”については模索を続け、ひたすら練習に励んでいる。そこに韓国もついていくときだ。
日本側の協力や費用問題が残るが、これはKBOが力を入れなければならない。韓国野球ソフトボール協会(KBSA)とも連携し、研修のサポートに出れば良いのではないか。
KBOはWBCの惨敗を受けて、韓国野球発展のための「中長期的な対策を立てる」と伝えていた。プロ野球と代表の競技力向上のために最も必要なことは、選手たちの原点となるアマチュア野球の成長なのかもしれない。
WBCは最悪の結果に終わったが、韓国高校野球でも最速150km超えの投手が相次いで登場し始めた。キム・ソヒョン(18.ハンファ・イーグルス)やムン・ドンジュ(19、ハンファ・イーグルス)などがその代表例だ。“球速革命”の時代に韓国野球も追いつこうとしている。
しかし、今はスピードを上げる段階だ。「平均」で150km超えの球を投げられる投手は、日本を始め世界各国に多く存在している。数人出てきた有望株に満足し、現状の発展速度に安住するようであれば、この先も相対的に他国から後れを取るだけだ。
(構成=ピッチコミュニケーションズ)
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