ドラマには、Netflix話題作『ザ・グローリー ~輝かしき復讐~』の主演女優ソン・ヘギョのような“スター”という存在が必要だ。
それはスポーツも同様で、チームを優勝に導かなければならないスーパースターの存在を誰もが望んでいる。
スーパースターは時に、マーベル映画に出てくる“スーパースター”になる。例えば2022年カタールW杯では、アルゼンチン代表を頂点に導いたリオネル・メッシが真のスーパースターとなった。
であれば、今回の2023年WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)では、侍ジャパンの大谷翔平(28、ロサンゼルス・エンゼルス)が“スーパーヒーロー”だった。
3月22日(日本時間)、米フロリダ州マイアミのローンデポ・パークで行われたWBC決勝。侍ジャパンがアメリカ代表を3-2で破って優勝を決め、大会MVPの栄光は大谷の手に渡った。
アメリカの最終打者であり、エンゼルスの同僚マイク・トラウト(31)を空振り三振に仕留めた真のMVPだった。
アメリカ野球殿堂入りしたレジェンド投手であり、現在は『MLBネットワーク』の解説を務めるペドロ・マルティネス氏は試合後、大谷にインタビューした際、「メジャーリーグとWBC、そして我々すべての野球関係者は大谷に感謝している。サンキュー大谷!」と伝えていた。
決して褒めすぎではない。ほかにも中継を担当した『FOX-TV』のアレックス・ロドリゲス氏やデビッド・オルティーズ氏なども、マルティネス氏と同じ反応を示していた。アメリカの主要ニュースは、侍ジャパンのWBC優勝と大谷にすべてのフォーカスを合わせていた。
前回の2017年大会以来、6年ぶりに開催されたWBCは、「大谷に始まり大谷で終わった大会」と言っても過言ではなかった。
同時に、来る3月31日に開幕するメジャーリーグも、“オオタニ効果”で観客動員にポジティブな影響が及ぶものと予想される。スーパースターが果たすべき役割が一体どんなものなのか、大谷が自ら証明してくれた。
大谷は2018年のエンゼルス加入以降、MLBポストシーズンの舞台に一度も立ったことがない。弱体化が進むチームの限界だ。トラウトも同様で、現役最高の打者と呼ばれながら、プロ12年間でポストシーズンは2014年の一度しか経験していない。
今回のWBC準決勝、決勝はチケット完売を記録しただけではなく、アメリカ以外に全世界で試合が中継された。そして、世界各国の野球ファンは侍ジャパンの高い技量と大谷の真価を改めて確認することになった。
2022年カタールW杯では、世界的なスーパースターであるメッシがアルゼンチンの優勝をけん引し、母国のみならずすべてのサッカーファンに感動をもたらした。アルゼンチン国民にはまだ余韻が残っており、永遠に忘れることはないだろう。
サッカーのすべてを成し遂げたメッシは、自身一度も成し遂げられなかったW杯優勝をついに叶え、これまでの悔しさをカタールの地で吹き飛ばした。
野球とサッカーはプレーの特性が異なる。サッカーはスーパースターが活躍してチームを優勝まで導かなければ、まともな評価を受けることができない。
ただ、野球は層ではない。打者は1試合に4~5回打席に立つ。相手投手が勝負をしなければ四球で塁に出る。投手は毎試合の登板が難しい。球数制限のあるWBCであればなおさらだ。
しかし、大谷は打席でもマウンドでも圧巻の活躍を見せ、スーパースターらしい技量を誇示した。
大谷は今大会に出場した投手のなかで最多イニング数を記録。9.2回を投げて5被安打、2四球、11奪三振、2失点とした。打者では故意四球含む最多の10四球を記録した。それと同時に、大会最多タイの10安打も放っている。投打でまさに非の打ち所のない活躍だった。
カタールW杯がメッシによって最後を飾ったとすれば、WBCは大谷がいたからこそ、数々の名勝負が演出された大会となった。
(構成=ピッチコミュニケーションズ)
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