Jリーグ勢も連破! ACL決勝を戦う浦項、その内情とサウジ強豪アル・ヒラルとの相性

2021年11月23日 サッカー #ACL #Kリーグ

アジアの頂点に立つのはどこか。

11月22日(日本時間で11月23日)にサウジアラビアのキング・ファハド国際スタジアムで行われるアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)決勝でその王者が決まる。

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決勝に駒を進めたのは、ACL西地区を勝ち上がってきたサウジアラビアの強豪アル・ヒラルと、韓国Kリーグの浦項スティーラースだ。

名門から“草刈り場”へ。それでもJリーグ勢撃破

浦項は、グループリーグで名古屋グランパスに1敗1分けながら組2位で決勝トーナメントに進出し、ラウンド16ではセレッソ大阪、準々決勝では名古屋相手に3度目の正直と言わんばかりに3-0の大勝を飾って準決勝に進出。

川崎フロンターレ(ラウンド16)、全北現代(準々決勝)と死闘を演じてきたディフェンディング・チャンピオンの蔚山現代さえもPK戦の末に下して、決勝に駒を進めた。

(写真提供=韓国プロサッカー連盟)浦項スティーラース

浦項がACL決勝に進出するのは2009年大会以来12年ぶり。かつてはホン・ミョンボ、ファン・ソンホン、イ・ドングッら歴代韓国代表を数多く輩出するKリーグ屈指の名門にして強豪だったが、近年は親会社POSCO(旧・浦項製鉄)の業績不振でクラブ予算も縮小。毎年のように主力選手を引き抜かれては泣き寝入りするしかない状況だっただけに、今回は決勝進出だけでも “奇跡”とも言われているほどだ。

ドイツの『トランスファーマルクト』が算出したチーム市場価値でも、浦項はKリーグ1(1部)12クラブ中9位の1078万ユーロ。横浜FC(1095万ユーロ)や大分トリニータ(1090万ユーロ)にも及ばないクラブなのだ。

生え抜き知将、厳しい状況をどう打開?

それでもACL決勝進出できたのは、チームを率いるキム・ギドン監督の手腕によるところが大きいだろう。

1991年に高卒練習生から浦項でプロデビューを飾り、2009年ACLでは浦項のキャプテンとして優勝トロフィーを掲げたレジェンドだ。

U-23韓国代表コーチや浦項での首席コーチ生活を経て2019年に監督に昇格すると、2020年にはチームを3位に押し上げてKリーグ最優秀監督賞を受賞。今季ACLでも対戦相手によって戦術に修正を加える緻密さで、浦項を決勝まで導いてきた。

(写真提供=韓国プロサッカー連盟)キム・ギドン監督

ただ、決勝を戦う台所事情は厳しい。正GKカン・ヒョンムは足首負傷でセレッソ大阪戦を最後にシーズンアウト。グループステージ名古屋戦でゴールを決めたFWポリス・タシチーは8月以降出場なし。FWクォン・ギピョも10月を最後に負傷離脱した。国内リーグ戦では12チーム中7位と大苦戦が続いているのだ。

しかも、ACL決勝ではセレッソ大阪戦、名古屋戦で得点したゼロトップのMFイ・スンモが出場できない。

というのも、イ・スンモは2018年の第18回アジア競技大会で金メダルを獲得したU-23韓国代表メンバーとして兵役特例の恩恵を受けていたのだが、代替服務中に遂行すべき奉仕活動時間544時間が未達であるため、現行の兵役法により出国が許されず。このため、出場はおろか試合が行われるサウジアラビアに帯同することもできなかった。

アル・ヒラルには韓国、ブラジル、フランスの代表経験者も

まさに満身創痍の浦項だが、ACLにおいて韓国勢はサウジ勢に強い。前身のアジアクラブ選手権を含めると、韓国勢vsサウジ勢の対戦は過去5回で、韓国勢が4勝1敗と勝ち越している。

ただ、アル・ヒラルとは初対決。アル・ヒラルは、2009年に FWソル・ギヒョン(元アンデルレヒト、ウォルヴァーハンプトン・ワンダラースなど)、2009年~2011年 にDFイ・ヨンピョ(元PSV、トッテナムなど)、2011年~2013年に FWユ・ビョンス(現チョンブリーFC)、2013年~2016年にはDFカク・テヒ(元京都サンガ)ら韓国代表クラスが在籍し、現在はかつてFC東京で活躍したチャン・ヒョンスがプレーしている。

(写真提供=韓国サッカー協会)韓国代表時代のチャン・ヒョンス

さらに、元フランス代表FWバフェティンビ・ゴミス、元ブラジル代表MFアンデルソン・タリスカ、ブラジル人MFマテウス・ペレイラ、マリ代表FWムサ・マレガなど前線の爆発力は凄まじい。

まして試合会場はアル・ヒラルの本拠地キング・ファハド国際スタジアムだ。韓国では2019年10月にBTSのコンサートが開催されたことでも知られる約6万8000席のスタジアムが「100%有観客」で埋まるのだ。

そんな完全アウェーの敵地で浦項はどう戦うか。ラウンド16から一発勝負で行われた今季ACLで、格上を次々となぎ倒してきた勝負強さに期待したい。

(文=慎 武宏)

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