蔚山現代(ウルサン・ヒョンデ)と浦項(ポハン)スティーラースによる韓国Kリーグ伝統の“東海岸(トンへアン)ダービー”が、アジア・チャンピオンズリーグ(ACL)準決勝の舞台で実現することになった。
ACL準決勝で韓国勢同士が対戦するのは、全北現代(チョンブク・ヒョンデ)モータースとFCソウルが激突した2016年以来5年ぶりだ。
韓国勢は前身のアジアクラブ選手権を含め、ACLでアジア最多12回の優勝回数を誇る。ただ、2010年代以降は中国勢や日本勢の勢いに押される形が多かった。
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それでも、昨季は蔚山現代が8年ぶり2回目のACL優勝を果たしたのに続き、今季は2年連続で決勝進出チームを輩出することに成功した。“アジア最高リーグ”という地位にKリーグが回復しつつある。
内容も見事だった。準々決勝で浦項は客観的な戦力で優位と見られたJリーグの強豪・名古屋グランパスを3-0で下し、12年ぶりにベスト4へと進出した。
また、Kリーグ1(1部)で優勝争い真っ只中の蔚山現代と全北現代(チョンブク・ヒョンデ)モータースは、ベスト4の座をかけて120分の死闘を繰り広げた。結果は蔚山現代が3-2で勝利したが、Kリーグ頂上対決に相応しい試合にファンからは拍手喝采が沸き起こった。
特に、因縁の“現代家(ヒョンデガ)ダービー”を制した蔚山現代は、大会2連覇に向けてさらなる自信を抱くようになった。
ACLにおける韓国勢の快進撃は、昨季に続き新型コロナウイルス感染症という変数に合わせて徹底的に大会を準備した各クラブのコーチ陣、フロントの努力が大きかった。そこに起爆剤の役割を果たしたのが、準々決勝と準決勝の国内開催だ。
仮に準々決勝が日本や第三国で開催していれば、浦項が名古屋に3-0で勝利することもなかったかもしれない。蔚山現代と全北現代による名勝負も、上限1万人でスタジアムに駆け付けた観客の熱気がなければ生まれなかったはずだ。
アジアサッカー連盟(AFC)は去る7月のグループステージ終了後、ACL参加国に準々決勝及び準決勝の中立開催を提案した。ACLは新型コロナの感染状況を考慮し、昨季から決勝トーナメントを中立地で開催することを優先している。
AFCの提案を受け、Kリーグを管轄する韓国プロサッカー連盟がベスト16に全4チーム(全北現代、蔚山現代、浦項、大邱FC)が勝ち残ったことを考慮し、自国への誘致を検討した。
何より、韓国がアジア諸国のなかも最も防疫が優秀だと評価されるだけでなく、Kリーグの選手を海外に送るよりも国内で安全に試合させた方が良いということで意見が一致した。
また、韓国開催となれば4クラブともホームゲームの雰囲気で試合に臨めるだけに、誘致をためらうことはなかった。
韓国プロサッカー連盟はAFCに全州(チョンジュ)開催(全州ワールドカップ競技場)を申し込んだ。全州を選んだ理由としては、当時ベスト16で全北現代がBGパトゥム・ユナイテッド(タイ)と対戦することもあり、川崎フロンターレと対戦する蔚山現代よりもベスト8進出の可能性を高く見たからだ。
結果、AFCは7月30日に韓国プロサッカー連盟の申請を承認し、東地区の準々決勝と準決勝を全州で行うことに決定した。
韓国プロサッカー連盟はAFCの承認を確認した後、政府の文化体育観光部と協議に臨んだ。当時は日本が新型コロナ変異株流行国のリストに含まれていたことで、隔離免除の適用から除外されていたため、調整が必要だった。
韓国プロサッカー連盟と文化体育観光部は徹底したバブルシステムの運営計画を立て、大会期間中の各チームの外部接触遮断、周期的なPCR検査、医学専門家の現場投入などを計画した。
韓国プロスポーツ協会も、文体部と防疫当局にACL国内誘致の当為性を伝えることに注力するなど、韓国プロサッカー連盟を援護射撃した。文体部も「アジアのサッカークラブ大会を通じた国威宣揚」という名分に肯定的な回答をしたという。
防疫当局は当初、オリンピックやワールドカップなど国家代表の試合のみを例外として認める基調だった。ただ、文体部の前向きな見解に共感したことで、最終的にACLの国内開催を受け入れた。
また、Kリーグ勢の活躍には韓国プロサッカー連盟の技術委員会TSG(技術研究グループ)の分析資料も一役買った。
TSGはACLに際し、対戦相手の自国リーグでの試合を分析した映像をKリーグのチームに提供した。浦項を率いるキム・ギドン監督も、グループステージ前の記者会見で「TSGから提供された映像が相手の戦力分析に大きく役立った」と話したことがある。
結果として、ACL準々決勝と準決勝の国内誘致は“神の一手”となった。新型コロナによる特殊な状況のなかでも、パフォーマンスはもちろん、ACLに対するファンの関心を再び高めることにも成功した。それだけでなく、国内防疫の優秀さもアジア全域に再度強調することができた。
クラブ、連盟、プロスポーツ協会、文化体育観光部による“官民協力”が、プロスポーツの活性化にポジティブな影響を及ぼした前例として残ることになった。
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