光州FC快進撃の立役者は、1年前にはベンチにも入ることができなかった。
アルバニア代表FWヤシル・アサニ(29)は、誰もが認める光州(クァンジュ)FCのエースだ。右サイドのカットインから左足シュートで得点を量産するパターンが、彼のトレードマークである。
3月12日、ホームの光州ワールドカップ競技場で行われたヴィッセル神戸とのAFCチャンピオンズリーグエリート(ACLE)ラウンド16第2戦でも同じプレーで決勝ゴールを決め、光州を3-0勝利、そして劇的なベスト8進出に導いた。
今大会すでに9ゴールを決め、東西地区合わせ得点ランキング首位タイ(同率に横浜FMのFWアンデルソン・ロペス)。8ゴールのFWリヤド・マフレズ(34、アル・アハリ)、7ゴールのFWクリスティアーノ・ロナウド(40、アル・ナスル)など世界的選手をも上回る。
もっとも、1年前には想像もできなかった。当時のアサニはイ・ジョンヒョ監督と“緊張関係”にあったからだ。
2023年より光州に加入し、同年はリーグ戦33試合7ゴール3アシストの活躍を見せたアサニだが、昨年は体重管理ができていない状態でシーズン前の冬季キャンプに合流。すると、イ・ジョンヒョ監督は100%のコンディションでなかったアサニをシーズン前半戦で1試合しか起用しなかった。それも途中出場、プレータイムはわずか8分だった。
その間にもアサニはアルバニア代表に招集されていたのだが、当時の指揮官は「実力がないから試合に出られないのだ。アサニが今のコンディションでなぜ代表に選ばれるのかがまったく理解できない。本人もその事実を認識しなければならないし、代表監督も考えるべきだ」とコメント。
「(アサニの)コンディションは試合に出場できる状態ではない。体脂肪がかなり増えた。フィジカル面で、体脂肪やコンディション関連のトレーニングをさせているがついていけない。そんな選手はチームの助けにならない。代表選手でも駄目だ。例えチームが10連敗をしても、私がいる限り、今のコンディションではアサニは試合に出場できない」と厳しく指摘していた。
そんななかでEURO2024に出場し、グループステージ全3試合出場で1アシストを記録したアサニに、海外メディアは欧州クラブへの移籍説を報じた。当時の新天地候補にはスペインのラ・リーガやイタリア・セリエAのクラブが挙がった。
ただ、アサニは最終的に光州残留を決断すると、夏以降のシーズン後半戦から本調子を取り戻す。そんな彼をイ・ジョンヒョ監督も「アサニは明らかに良くなった。メンタルも身体面もかなり良い」と評価した。
そして、昨年9月に開幕したACLEでは横浜F・マリノスとの初戦でハットトリック+1アシストという衝撃の活躍を見せると、リーグステージだけで7ゴールを記録。ACL初出場の光州の躍進をけん引し、神戸とのラウンド16でも“奇跡の男”になった。
Kリーグでも屈指の低予算クラブで知られる光州は、今冬の移籍市場で多くの主力が退団した。
厳しい財政事情のなか、チームの中核を担ったMFイ・ヒギュン(26)とFWホ・ユル(23)は蔚山(ウルサン)HD FCに引き抜かれ、MFチョン・ホヨン(24)は米MLSのミネソタ・ユナイテッドへ移籍した。
ACLEリーグステージでの活躍から、アサニも移籍可能性の高い一人とされていた。それでも紆余曲折の末に残留し、光州の奇跡の主人公となった。
準々決勝に進出した光州は、いよいよサウジアラビアで集中開催されるファイナルステージの舞台に足を踏み入れる。今度は自クラブと対照的に、潤沢な資金で“武装”した西地区の強豪たちを相手することになる。
アサニ自身、マフレズやロナウドといったスター選手たちと同じピッチで自身の能力を披露する機会を得た。アサニの活躍が続く限り、光州の快進撃は終わらない。
(構成=ピッチコミュニケーションズ)
Copyright @ 2018 Sportsseoul JAPAN All rights reserved.
前へ
次へ