米メジャーリーグ(MLB)も韓国プロ野球KBOリーグも、今は“スイーパー”ブーム一色だ。
今年3月に行われたWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)で、大会のラストを飾った大谷翔平(28、ロサンゼルス・エンゼルス)の魔球には韓国でも注目が集まり、すでに多くの投手がスイーパーを研究、駆使している。
もっとも、スイーパーはまったく新しい球種というわけではない。
アメリカの現地メディアはスイーパーについて分析を重ねた結果、「スイーパーは以前から存在していた」と結論付けた。
併せて、ここ数年で特定の投手だけが投げた特定の球種について振り返った。
スティーブン・ウィルソン(28、サンディエゴ・パドレス)のスプリットとスライダーを合成した“スラッター”、ジョーイ・ルケーシー(29、ニューヨーク・メッツ)のチェンジアップとカーブを合成した“チャーブ”などがそうだ。握りを参照しながらも、球の動きが握りと違って動くことを考慮し、新たな球種を命名してきた。
現在“スイーパー”と呼ばれる球種は、球の動きだけを見れば1979年から1992年までトロント・ブルージェイズで活躍したデーブ・スティーブ、1994年にア・リーグのサイ・ヤング賞を受賞したデビッド・コーンらが投じたスライダーに似ているという評価だ。
スライダーとカーブの中間の球速でありながら横の動きが強いスイーパーを、スティーブやコーンはすでに駆使していたというわけだ。
近年の投手に目を向ければ、サンフランシスコ・ジャイアンツで抑えとして活躍したセルジオ・ロモ、2014年ア・リーグのサイ・ヤング賞受賞者コーリー・クルーバーなどが挙げられる。
ロモのスライダーも、スライダーとカーブの中間の球速ながら横の動きが大きかった。ロモは決して剛速球を投げる投手ではなかったが、クローザーの責任をまっとうできた秘訣もこの球種にあった。
クルーバーもスライダーとカーブの中間にあたる球種を積極的に活用し、マウンドを守り続けた。
何より2人とも、現在の大谷のスイーパーの握りに似たツーシームの握りでそれらの球を投げていた。つまり、スイーパーは過去からすでに存在していた球種と見るのが正しい。
ただ、握りと関係なく過去を振り返ってみると、韓国にもスイーパーはいた。主人公は、韓国球界史上最高の投手とされる元中日ドラゴンズのソン・ドンヨルだ。
ソン・ドンヨルの決め球も、今振り返ればスイーパーだった。当時は“高速スライダー”という名称が使われていたが、スライダーとしてみるには球速が速いのはもちろん、横の動きがかなり強かった。ソン・ドンヨルは日本プロ野球でもこの球を積極的に活用し、アジア最高の抑え投手として位置づけられた。
KBOでは11シーズン通算367試合(1647回)146勝40敗132セーブ、防御率1.20。STATIZ基準の通算WARは101.29だ。中日時代も通算162試合10勝4敗98セーブ、防御率2.70という大活躍を見せた。
今季KBOではキウム・ヒーローズのエース投手アン・ウジン(23)と、NCダイノスの外国人投手エリック・フェッド(30)がスイーパーブームに合流した。
アン・ウジンは4月25日のKTウィズ戦で、スライダーとカーブの中間のような球を投げた。同球種はキウムの投球分析表では「その他の球種」に分類されていた。
ただ、本人は「まだこの球をスイーパーと呼ぶのは恥ずかしい。今は角度の大きいスライダーだと言いたい」と謙遜した。
フェッドは意図的にスイーパーを駆使している。投球分析表ではスライダーかカーブで区分されるが、本人はオフ期間からスイーパーを磨いてきたと明かした。
MLBのワシントン・ナショナルズ時代も着実に先発ローテの一角で活躍したフェッドは、今季5度の先発登板で3勝1敗、防御率0.58という優れた活躍を見せている。
投手と打者は常に戦い続け、発展を重ねるものだ。アメリカ現地メディアはスイーパーの出現が「縦に落ちる変化球に適応した打者を破るための方法だ」と見通した。
カーブ、スプリット、カットファストボール、縦スライダーなどに打者が適応し始めたことで、投手は横に動く変化球を駆使し始めたという話だ。
MLBの潮流は韓国にもそのままつながると言って良いだろう。
すなわち、MLBに合わせてKBOでも、今後スイーパーを使用する頻度が上がる可能性は高い。
(構成=ピッチコミュニケーションズ)
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