サッカーのアジア王者を決める大会として4年に一度開催されているアジアカップ。
本来ならば来年の2023年6月~7月に中国で開催予定だったが、新型コロナウイルス感染症の影響を理由に中国が開催を辞退したことで、その代替地がどこになるか注目されている。
5月17日には、日本サッカー協会(JFA)の田嶋幸三会長がアジアサッカー連盟(AFC)から非公式ながら日本開催を打診されたことを明かしたが、実はアジアカップ代替開催については、韓国でも議論されている。
そもそもKFAは2023年アジアカップの開催に立候補していた。ただ、その後、2023年女子ワールドカップ招致に専念するという理由で立候補を取り下げ(こちらも招致できずオーストラリアとニュージランドの共催に)、中国に決まったという経緯がある。
そのため、KFAは韓国でのアジアカップ代替開催に興味を示しているのだが、『スポーツソウル』サッカー班が取材したところによると、現時点ではまだ「青写真を描く」段階でもあるらしい。
というのも、AFC側からはまだ具体的な指針が出されていないためだという。『スポーツソウル』のチョン・ダウォ記者がKFA経営本部のイ・ジョンソブ本部長に取材したとこころによると、本部長はこう語ったという。
「ひとまず我々も開催を推進するという方向性は決めたが、具体的にどの程度の段階まで来たと申し上げることは難しい。AFCから開催のための条件を伝えられなければ、我々も詳細な計画を立てることができない。5月中には条件が伝えられるようなので、6月には計画を立てられるのではないかと予想している」
では、代替開催のためにクリアせねばならない問題は何か。
まずは開催時期にある。海外メディアの間では、カタールやサウジアラビアなど中東諸国での開催が言及されているが、それも“開催時期”がネックになるだろうというのが、韓国の見方だ。
というのも、2023年アジアカップは6月~7月の開催がスケジューリングされているが、この時期のカタールやサウジアラビアの平均気温は40度に迫る。深刻な猛暑のなかで試合をすることになれば、選手はもちろん、関係者の健康をも害する恐れがある。
「そのため、仮に2023年アジアカップを中東で開催することになれば、国際サッカー連盟(FIFA)のカレンダーに変更を加えなければならない。AFCの立場としては、開催国変更のために過度なエネルギーは注ぎたくないし面倒なはずだ」(チョン・ダウォ記者)
つまり、AFCが「中東開催は不可能」と判断すれば、韓国や日本など東アジア諸国が代案となる。KFAのイ・ジョンソブ本部長も『スポーツソウル』の取材にこう答えている。
「AFCがアジアカップの日程を変更しない方針を定めるのであれば、中東諸国よりは我々の方が開催条件に適しているだろう」
もっとも、日程の条件を満たしたとしても、開催までの道のりはまだ遠い。
AFCの指針を詳細に確認する必要があるが、アジアカップではグループステージで最少2万席、準決勝以降は4万席以上の規模を持つスタジアムを確保しなければならない。このほか、参加国の練習拠点や宿舎、さらにはスタジアムの照度など、クリアしなければならない条件は多数存在する。
ましてアジアカップは2019年大会から出場国が増加。それまでの16カ国から24カ国と拡大され、2023年大会でも計24カ国の出場が決まっている。
当然、チームはもちろん、関係者の数も多く、試合数も多い。さらに来年もコロナ対策は必要となるだろう。
そうなると各地方自治体の協力が必要となるのだが、韓国では今年6月に地方選挙が控えており、政権交代で何かと変更が予想される今の時期に、地方自治体からサッカー国際大会開催の同意約束を取り付けるのは簡単ではない。2023年大会は中国の10都市で開催予定だったが、韓国で10都市開催はかなり難しいだろう。
また、韓国代表の試合ならともかく、そのほかの国同士の試合となれば、観客動員も不確実で、チケット収入面などの商業性も考慮しなければならない。そのため、KFAのイ・ジョンソブ本部長の発言も慎重だったという。
「AFCも急を要している状況なので、条件を以前よりも低くする可能性はある。それらを確認してから、我々も計画を立てなければならないが、アジアカップはAFCから補助金も出ない。自主的に収益を創出する必要がある。このような点も含めて総合的に考慮して、開催計画を作っていきたい」
はたして、中国が手放したアジアカップを拾い代替開催することになるのはどこか。同じく中国が辞退した東アジアE-1選手権は日本が代替開催することになったが、来年のアジアカップは…。
(文=慎 武宏)
前へ
次へ