コロナ禍の試合観戦で問われる「声出し応援禁止」の是非…韓国の“超満員”W杯予選で見られた現象

「6万4375人」。サッカー韓国代表が11年ぶりにイラン代表を破った現場である去る3月24日のソウルワールドカップ競技場には、コロナ禍において史上最多となる人数の観客が一堂に会した。

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チケット予約販売が開始した初日には、23万人余りが一挙に予約サイトに殺到し、サーバーがダウンしてしまったほどだ。

チケットは試合当日午前までに6万2000枚が売れ、キックオフ2時間前の午後6時に現地での当日券も完売。これにより、久しぶりに韓国代表の国際Aマッチで満員試合を打ち立てた。

チケットの興行に劣らないほど、会場内は熱く盛り上がった。キックオフ直前には「会いたかったです」というキャッチコピーとともに、韓国国旗や韓国代表エンブレムなどがコレオグラフィーとして掲げられ、試合中には事前にファンから集った録音音声による「テーハンミングク(大ー韓民国)!」の掛け声が場内に響き渡った。

そんななか、前半ロスタイムにFWソン・フンミン(29、トッテナム)、後半にDFキム・ヨングォン(32、蔚山現代)のゴールが生まれた際には、約6万人の歓声が絶頂に達した。

これまで約2年続いたコロナパンデミックによって、二度と訪れることはないのではないかと思わせるほど、夢のようなサッカーな夜だった。

会場に駆け付けた満員の観客

今回の満員試合は、新型コロナワクチンの接種有無と関係なく、室内外の競技場で100%入場を認めた政府の新たな防疫指針に合わせて実現した。

新型コロナに苦しんだサッカーファンたちは、これまでの喉の渇きを癒すかのように、思い切り歓呼して試合を楽しんでいた。

ソウルワールドカップ競技場で6万人以上の観客が集まったのは、2019年6月のイラン代表との国際親善試合以来だ。この間、昨年9月にはカタールW杯アジア最終予選のイラク代表戦を無観客で戦うなど、国際Aマッチを冷ややかな雰囲気のなかで戦わなければならなかった。

今回のイラン戦をきっかけに、国内のプロスポーツも以前より多くの観客を受け入れ、コロナ時代以前の雰囲気を取り戻せるという自信を持つようになった。

現地を訪れたKリーグ関係者は、「このような日がいつかまた来ると思っていたが、いざ目の前にその風景が広がると胸にじんと来る」とし、「コロナがもっと落ち着いて、サッカーだけでなくさまざまな種目のチームとファンがお互いに向き合える日が来てほしい」と話した。

現在、新シーズンの開幕を控えている韓国プロ野球KBOリーグも、100%観客動員の方針を示し、雰囲気の巻き返しを描いている。

「現地観戦の醍醐味は応援だが…」

ただ、こうした流れのなかでも政府はすべてのプロスポーツに対し「声出し応援禁止」の方針を貫いている。「マスクをしていても歓声などによって飛沫が飛ぶ」という理由から防いでいるのだ。

しかし、防疫パスの適用外とともに競技場内への入場、さらには飲食も認めたなかで、声出し応援を統制することで感染リスクが大きく減少するというのは、納得することも数値で証明することも難しい。

政府のウィズコロナ政策は各産業の正常化と結びついている。

昨年末、韓国プロ野球のポストシーズンとW杯最終予選のUAE代表戦は100%観客動員で行われたが、期待よりも来場した人数は少なかった。寒い天気、コロナ感染リスクも主な原因に挙げられたが、そこにはいつまでも続く声出し応援禁止に対する疲労感もあるだろう。

サッカー界のとある関係者は、「どんな種目でも現地観戦の最大の興味は応援だ。これを防ぐとなると、あえて現地に観に来ようとする人は少なくなるしかない」と訴えた。

前述の通り、イラン戦では韓国サッカー協会の声出し応援禁止の政策により、録音された声援を場内に流した。ただ、社会的距離置きの制約もなく、約6万人が集まった状況ともなれば、“飛沫統制”をすることは現実的に不可能だった。

時間が経つにつれ、ほとんどの人が飲食はもちろん、「テーハンミングク!」と声援を上げ始めた。

プロスポーツの100%観客動員時代において、声出し応援の禁止がどれほど無意味な指針であるかを感じさせる試合だった。

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