“是枝監督初”の韓国映画『ベイビー・ブローカー』、過去作との共通点とは?今だからこそ見てほしい一本

2022年06月25日 映画 #韓国映画

大人は子供の存在によって成長できるということを教えてくれる作品だった。

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日本の是枝裕和が監督を務め、韓国のトップ俳優たちが出演していることで、日韓両国で注目を集める『ベイビー・ブローカー』。

本作は、赤ちゃんポストに預けられた赤ん坊を、子宝に恵まれない夫婦に秘密裏に斡旋するブローカーのサンヒョン(演者:ソン・ガンホ)、ドンス(演者:カン・ドンウォン)の2人が、ひょんなことから赤ん坊の“実母”ソヨン(演者:イ・ジウン)とともに新たな親(=買い手)を探す過程を描いている。そこにブローカー一行を現行犯逮捕しようと追いかける2人の刑事(演者:ペ・ドゥナ、イ・ジュヨン)が加わり、これまでにないロードムービーへと仕上がった。

“是枝監督初の韓国作品”という触れ込みもあり、これまでとは違う作品という印象を受ける人もいるのではないだろうか。

(『ベイビー・ブローカー』、6月24日(金)TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー、ⓒ 2022 ZIP CINEMA & CJ ENM Co., Ltd., ALL RIGHTS RESERVED、配給ギャガ)

だがそこはカンヌ常連の巨匠。今作もこれまで同様、日常に潜む社会問題を家族というフィルターを通して見事に描き出している。また、これまでの日本映画との共通点も見られた。

2013年公開の『そして父になる』では、病院での赤ちゃんの取り違えを軸に、エリートとして順調な人生を送っていた父・野々宮良多(演者:福山雅治)が、あらゆる葛藤を経て、真の父親へとなっていく精神的な成長を描いていた。

そして2018年公開の『万引き家族』では、ネグレクトを受けていた子供を誘拐したことで歪な絆で結ばれた擬似家族を表現した。最後には2人の子供に万引きをさせていた偽の両親・治(演者:リリー・フランキー)と信代(演者:安藤サクラ)が、実子ではない子供のためを思った決断を下している。

そして今回の『ベイビー・ブローカー』も2作品同様、物語の軸となる子供(=捨てられた赤ん坊)が中心となっているが、実母であるソヨンとブローカーのドンスの精神的な成長が描かれている。

とある理由から赤ん坊を手放さざるを得なかったソヨンの葛藤・成長を見事演じきったイ・ジウンはもちろんのこと、それ以上に目を引いたのはカン・ドンウォンだった。

日本では『新感染半島 ファイナルステージ』(2020)でのサバイバル・アクションが記憶に新しいが、今回は心の移り変わりを繊細に表現している。ブローカーとして最初は赤ん坊を早く、高く売ろうとしていたが、ソヨンたちと触れ合う過程で成長し、最後には立派な“覚悟を決めた男”の顔を見せてくれた。

(『ベイビー・ブローカー』、6月24日(金)TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー、ⓒ 2022 ZIP CINEMA & CJ ENM Co., Ltd., ALL RIGHTS RESERVED、配給ギャガ)ソヨン役のイ・ジウン
(『ベイビー・ブローカー』、6月24日(金)TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー、ⓒ 2022 ZIP CINEMA & CJ ENM Co., Ltd., ALL RIGHTS RESERVED、配給ギャガ)ドンス役のカン・ドンウォン

前述した『そして父になる』『万引き家族』と『ベイビー・ブローカー』の3作品は、取り扱っている社会問題こそ異なるものの、“血縁”を超えた絆、大人の成長という点では似た雰囲気を感じられた。

現在の日本社会では子供への大人の暴力などが多く、学校、家庭問わず、連日、痛ましいニュースが報じられている。そんな心が荒れやすい現代だからこそ見てほしい一本だ。

(文=高 潤哲)

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