韓国語の崩壊か、文学的な表現か…ドラマ『君へ行く速度493km』のタイトルに物理学者は呆れ顔

2022年05月26日 話題 #韓国ドラマ

韓国語の崩壊なのか、文学的許容なのか。ドラマや映画、バラエティ番組の“タイトル”に対する議論が繰り返されている。正式な表記ではない、ハングルの使い方が増えているのだ。

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2012年のソン・ジュンギ主演ドラマ『優しい男』の原題(『世の中どこにもない、チャカン男』)が、ハングル団体の反対で『世の中どこにもない、チャッカン(優しいの正式表記)男』にタイトルを変更して以降、ハングルの正式表記から外れたタイトルへの議論が続いている。

その一例として2021年に放送されたMBCのオーディション番組『放課後のときめき』は、番組ローンチ前に、正式な表記ではない表記(ときめきを「ソルレイム」と表記。本来は「ソルレム」)でタイトルを打って広報したが、国文表記法に合わせて正式な表記に変更された。

ハングルの正式表記から外れたタイトルにこだわる作品も少なくない。tvNのドラマ『優雅な女」(2013)は、標準語「優雅な(ウアハン)」の代わりに「ウワハン」という当時の流行語を使って議論になったが、そのタイトルを最後まで固守した。映画『ファイヤー・ブラスト 恋に落ちた消防』(2012)も、原題の「パンチャンコ」について商業的な理由でタイトルを付けたとハングル団体から批判されたが、最後までタイトルを変更しなかった。

左から『ファイヤー・ブラスト 恋に落ちた消防』『優しい男』『ストリート・マン・ファイター』

昨年、人気を博したMnetのダンスバトル番組『ストリート・ウーマン・ファイター』と、まもなく放送が始まる『ストリート・マン・ファイター』も、やはり「路上」を意味する「street」の正確な外来語表記「ストリート」の代わりに、「ストリット」という縮約語を使った。TV朝鮮の『ミス・トロット』『ミスター・トロット』の「トロット」も標準語表記とは異なる。

『君へ行く速度493km』の違和感

今年4月20日から放送されたKBSドラマ『君へ行く速度493km』(原題、邦題は『時速493キロの恋』)は、そんな“タイトル議論”を過去最高といえるほど沸騰させた。

タイトルに使われた「493」は、バドミントン競技で出たシャトルの最高速度の非公式世界記録である「493km/h」を意味するが、速度を表現するためには「km/h」という表記にならなくてはならないはずだ。しかしタイトルでは「km」と距離を意味する表記となっている。

(画像=KBS)『君へ行く速度493km』

これに対して多くの物理学者たちは、『君へ行く速度493km』の題名表記の問題点を指摘。慶熙(キョンヒ)大学・物理学科のキム・サンウク教授は4月24日、自身のフェイスブックに「物理学者が見るに、ドラマタイトル『君へ行く速度493km』は次のようなものと似ている」とし、「最近の政界最大イシューである“検捜完バ”(検察捜査権完全剥奪を略した造語、本来はバではなくバク=奪)、『You Quiz on the Block』の進行者ユ・ジェ“ソ”(本来はユ・ジェソク)、韓国最高の知識バラエティ番組芸能アルスルシン“ジャ”(本来はアルスルシン“ジャプ”)」と書いた。

KAISTバイオおよび脳工学科チョン・ジェスン教授もフェイスブックを通じて、同じ趣旨の意見を明らかにした。チョン教授は「このドラマが作られる間、kmをkm/hと表記しなければならないということをきちんと指摘した人がいなかったり、無視されたりして、結局このようなタイトルが世の中に出てきたということが不思議だ」と伝えた。

さらに「速度ではなく速力と書かなければならないということは百歩譲歩したとしても」とし、「文科出身のための詩的許容として理解してあげようという意見も、時速なのか秒速なのか、科学的に開かれた結末だという意見ももらったが、私は受け入れられない」と付け加えた。

これに対して最近、とある報道機関の見習い公開採用試験にまで、『君へ行く速度493km』のタイトルを文学的許容と見るかを尋ねる論題が登場し、記者準備生の間で話題になった。

KBSが国民の税金で運営される公営放送という点で、正式表記を確実に守らなければならないという意見も提起されている。国立国語院の関係者は、本紙『スポーツソウル』の取材で「公営放送と民営放送の言語的な物差しを異にすべきかについては、KBSが慎重に判断することだと思う」とし、「文学的許容が意味的に矛盾するのは事実だが、それに対して許容するかどうかは別の領域だ」と即答を避けた。

番組のタイトルに対しては、柔軟に文学的表現を許容しなければならないという意見もある。忠南(チュンナム)大学・国文科のユン・ソクジン教授は、『スポーツソウル』に「『君へ行く速度493km』は象徴的で比喩的な意味で使われたものであるため、タイトルだけを見れば、これが“バドミントンのシャトルの速度”だとしても、それほど問題視することはなく、あまりに考えが固いようだ」との意見を出した。

続けて「このように問題提起が続けば、文学的比喩や象徴を使うことが難しくなる。これがスポーツや科学で使う用語であれば、そうかもしれないが、ドラマのタイトルは文学的な部分がより強いため、なぜ問題になるのかがわからない」と明かした。

いずれにしても作品のタイトルをめぐる議論は、今後も続いていきそうだ。

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