韓国サッカー協会(KFA)の“行政力”は後退している。
KFAは5月20日、6月の北中米W杯アジア2次予選2連戦で韓国代表を率いる暫定監督として、キム・ドフン氏を選任したことを発表した。
韓国代表は6月の北中米W杯アジア2次予選で、6日にアウェイでシンガポール代表、11日にホームで中国代表と対戦する。キム・ドフン氏はこの2試合のみ、暫定監督としてチームを指揮する。
KFAは5月までの選任を目標に、新監督招へいのための作業を進めたが、結果として失敗に終わった。
事実上の最有力候補とされ、交渉にすべての力を注いでいたジェシー・マーシュ氏をカナダ代表に奪われ、その後も接触した候補たちと結論を導き出すことができなかった。
結局、右往左往したKFAは3月に続き今回も、暫定監督体制を選択することになった。
冷静に見れば、新監督選任の延期は合理的な選択だ。5月中の選任を急いで下手に監督を確定してしまえば、「第2のシュティーリケ事態」「第2のクリンスマン事態」を引き起こす恐れがある。
慎重に考え、選任時期を先送りした方が、長期的な観点では良いかもしれない。
とはいえ、正監督の長期不在が懸念すべき状況であることは間違いない。
ユルゲン・クリンスマン前監督は、アジアカップ準決勝敗退に終わった直後の2月16日に解任された。代表監督のポストが空席になってから、すでに3カ月が経過したわけだ。
今年3月のW杯予選では、当時U-23代表監督を務めたファン・ソンホン氏を暫定監督に据え、タイ代表との2連戦を戦った。そして今回、再びキム・ドフン氏を暫定監督に据えるなど、KFAは臨時体制でのその場しのぎを繰り返している。
そもそも、5月までに確定するとされた代表監督の選任過程でも、KFAの中途半端でスピード感のない交渉力が俎上に載せられた。
交渉で最も重要な金額面の条件を最初から上手く議論しなかったため、マーシュ氏はより良い条件を提示したカナダに向かった。
そんななか、KFAは12日に「交渉が終結した状況はまだ発生していない」と自信を持って伝えていたが、カナダでKFAの発表からわずか一日でマーシュ氏の新監督就任を発表した。
知っていたにもかかわらずメディアにそう伝えたのであれば無責任かつ欺瞞であり、知らなかったのであれば自らを“無能”と認めたも同じだ。
今回のキム・ドフン氏の暫定監督就任をめぐっても、議論の余地がある。
暫定監督としては、キム・ドフン氏は十分に良いカードだ。
現役時代にヴィッセル神戸でも活躍した指揮官は、クラブを率いた経歴が豊富であり、2022年8月にシンガポールのライオン・シティ・セーラーズと契約解除して以降、現在まで無所属の状態だったため、議論のクラブチーム監督選出のイシューに巻き込まれることもない。キム・ドフン氏を選任すること自体に問題はない。
ただ、韓国サッカー界ではキム・ドフン氏がU-20韓国代表の新監督候補だったという点を、不快な視線で見つめている。
KFAの事情に詳しいとある関係者は、「U-20代表監督候補だった人物がA代表の暫定監督となれば、例え事実ではなくてもKFAが誤解を受ける恐れがあるのではないか。ややもすれば、キム・ドフン監督にも被害が及ぶ恐れがある」とし、KFAの決定に問題意識を提起した。
別のサッカー関係者も、「暫定だとしても、A代表の監督になり得る人物がU-20代表の候補になったかと思えば、A代表の監督に選ばれる構図も不自然ではないか。協会は一体どんな基準で監督を選任するのかわからない」と批判した。
KFAの無能力な仕事処理のなかで、韓国サッカー界は黒歴史に沈んでいる。このような国内の状況を、チョン・モンギュ会長は一体どう考えているのだろうか。
(構成=ピッチコミュニケーションズ)
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