過ちを犯すと罰を受ける。簡単な理屈なのに、このことを理解できない人がまだ存在する。
シーズン開幕目前にもかかわらず不祥事が続出する韓国プロ野球KBOリーグの話だ。
選手だけでなくGM(ゼネラルマネージャー)まで波紋に包まれた。
たった一度の逸脱行為が、リーグ全体を沈没させかねないことを理解しなければならない。
元ロッテ・ジャイアンツの投手ソ・ジュンウォン(22)は現在、未成年者に関する性犯罪の容疑がかけられている。
警察を経て、検察の調査を受けている状況だ。警察から資料を受け取った検察が拘束令状を申請したが、棄却された。検察が一定以上の証拠を確保したと見なければならない。
ソ・ジュンウォンは当初、犯罪を隠そうとした。しかし、窮地に追い込まれてからようやく球団に打ち明けた。それが3月23日のことだ。
ロッテは直ちに懲戒委員会を開き、「放出」という最高水準の懲戒をソ・ジュンウォンに下した。その後、高校時代の2018年に受賞した「高校チェ・ドンウォン賞(高校最優秀投手賞)」も剥奪され、韓国野球委員会(KBO)からは「参加活動停止」措置が下された。
最初の警察調査の段階で球団に伝えたとしても、結果は変わらなかっただろう。未成年者への性犯罪という許されない蛮行であるからだ。
しかし、何かあった場合は球団にすぐに知らせることが先だろう。
にもかかわらず、ソ・ジュンウォンはすべてを隠した。警察の調査が始まって以降、オフシーズンにはジーロング・コリアに合流し、オーストラリアのウィンターリーグに参加した。ロッテの春季キャンプも消化し、オープン戦でも3試合に登板していた。
ロッテとしても、ソ・ジュンウォンを2023年シーズンの先発の一角として期待を寄せていた。そんな最中の犯罪発覚なだけに、球団がソ・ジュンウォン相手に民事訴訟を起こしても言うことがない状況だ。
選手だけが問題ではなかった。フロントでも問題が発生した。
KIAタイガースでGMを務めていたチャン・ジョンソク氏は、パク・ドンウォン(32、LGツインズ)と契約交渉をする過程で“裏金”を要求したという申告が受け付けられた。KIAはすぐに懲戒委員会を開き、チャン・ジョンソク氏の解任を決めた。
KIAは「チャン・ジョンソクGMが交渉しながら冗談交じりに話したというが、いかなる場合でも金品要求は容認できない」とし、「すべての球団役職員及び選手団の遵法教育に一層努める」と明らかにした。
KIAは昨年4月にトレードを行い、パク・ドンウォンを獲得した。シーズン途中からの合流も活躍を見せ、長期契約を結ぶものと見られていたが、これといった進展がなく、結局シーズン後にFAとなった。パク・ドンウォンはわずか半年でKIAを退団し、LGに移籍した。
当時はパク・ドンウォン移籍に驚きの声も挙がっていたが、いざふたを開けてみると、チャン・ジョンソク氏の裏金要求が問題になっていたことがわかった。
パク・ドンウォンはチャン・ジョンソク氏との通話内容を録音し、先週、韓国プロ野球選手協会に意見を求めた。選手協会のチャン・ドンチョル事務総長は「交渉過程で不適切な単語が出た。それも一度ではなく二度ずつ聞こえた。冗談だとは絶対に思わない」と強調した。
続けて、「その立場にいる人物が選手にそのような提案をすれば、選手は断ることが難しい。この先、ほかの選手にもそのような状況が発生するのではないか」とし、再発防止のために通報したことを明らかにした。
ただでさえ、2023年WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)の惨敗でファンの心が良くない状況だ。
それでもKBOリーグのオープン戦には多くの観客が入り、依然として国内ではトップレベルに人気のスポーツであることは再確認されたが、相次ぐ国際大会の不振で「愛想が尽きた」という人も少なくない。
そんな状況で悪いニュースが重なり、非常事態に陥った。「それでも球場に観戦に来る人はいるし、テレビで観る人もいる」とも言えるだろう。しかし、現実問題として観客数は減った状態にある。
昨シーズンの観客数は607万6074人だった。全10球団もいるにもかかわらず、かつて8球団体制だった2010年(592万8626人)と同じ水準だ。
コロナ事態の緩和で今後は観客数が増加するとも予想されるが、コロナ禍以前の2019年(728万6008人)程度まで到達さえすれば幸いだという声も出ている。今後の新規ファン獲得は難しいかもしれないという意味だ。
ソ・ジュンウォンはこうなると思わなかったのだろうか。もし韓国代表がWBCで好成績を収めていれば、その熱気に埋もれて自身の過ちが軽く見過ごされるとでも思ったのだろうか。例え一般の会社員でもそんなことはしない。
チャン・ジョンソク氏は本当に“冗談”で言ったのだろうか。反復的にそうだったのであれば、聞く立場としては重く受け止めざるを得ない。いつまでも“2人だけの話”で貫き通せるとでも思ったのだろうか。
今回の件を、ほかの球団や選手たちは必ず“反面教師”にしなければならない。
すでにKBOリーグでは過去にあらゆる事件が発生し、大きな困難に直面したことがある。
どんな過ちもいつかは明らかになるものだ。世の中に“永遠の秘密”は存在しない。
SNSで“裏アカウント”を作り、外部に知られて苦境に立たされたケースもある。それでも、これは個人の逸脱程度に整理できる部分だ。
ただ、犯罪は話が違う。いくら高い人気を得て、大金を稼いだからと言って、「すべてが許される」という考えは捨てなければならない。そして、万が一間違ったことをしたならば直ちに球団に知らせなければならない。
隠したからと言ってやり過ごせるわけがない。良いことでもない。結局、被害を受けるのは野球に携わるすべての人だ。
そもそも最善の方法は、“過ち”を犯さないことだ。
熾烈な勝負の世界に身を置いていることは事実だ。選手もフロントも人間なのだから、日々のストレスはどこかで解消しなければならない。
しかし、ストレス解消を“違法行為”でしてしまうのは大問題だ。それはただの犯罪行為である。
他人がするな、法がするなと言ったことはしなければ良い。このことだけ、肝に銘じてもらいたい。
(構成=ピッチコミュニケーションズ)
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