ホン・ミョンボ監督は済州(チェジュ)ユナイテッドへと移籍した前10番ユン・ビッカラムの代わりとして天野を選択。この過程には、ホン・ミョンボ監督を補佐する日本人の池田誠剛コーチの助言もあったという。
正確な左足が武器の天野は初のKリーグで躍動。特にシーズン序盤、オ・セフンが清水エスパルスへと移籍したためストライカー不足にあえいでいた蔚山はゼロトップを採用し、天野が軸として活躍したのだ。
蔚山での一年間でリーグ30試合に出場し、9ゴール1アシストを記録した天野は、フィールド上での数字だけでなく、マルティン・アダム、レオナルド、ヴァレリ・カザイシュヴィリといった蔚山の優勝に貢献した外国人FWが輝いた裏には、天野がピッチ内外で助力した影響もあった。
そんな天野が、4年間リーグ優勝争いをしてきた“最大のライバル”全北へと移籍することは、大きな注目を集めるに値するビッグニュースだ。
全北は今年、リーグ16連覇達成には失敗したが、カップ戦を制し、キム・サンシク監督との再契約を最近終えた。そしてメンバーの刷新に乗り出している。そのなかでキム・サンシク監督が最優先に望んだのが天野だった。飲酒運転で邦本宜裕がクラブを離れた全北にとって、天野はアジアクォーター枠を埋める最上のカードだった。
そのためキム・サンシク監督は早くから天野側と接触し、ビデオミーティングで積極的にラブコールを送っていたという。
蔚山も天野を慰留するために尽力。「HYUNDAI」を親会社とする両チームが、マリノスに支給するレンタル料は15万ドルと知らされたが、年俸が明暗を分けた。本紙の取材によると、全北は蔚山が天野に支給する年俸のデッドラインよりも10万ドル多く出し、天野は自身の価値を高く評価してくれた全北の手を取った。
天野の移籍に蔚山コーチ陣は困惑している。
とある関係者は「天野がシーズン終了後、ホン監督はもちろん池田コーチと面談しながら蔚山に残りたいという意志を伝えたと聞いている。しかし、全北の積極的な提案に心が揺れたようだ。蔚山もアジアクォーターに使う予算限度を決めている状況なので、これ以上進展がなかった」と話した。