8年在籍のチェルシー退団した韓国女子代表チ・ソヨンが帰国。母国での挑戦に「ときめきしかない」【現地取材】

2022年05月20日 サッカー #女子サッカー

「最初は心残りがありましたが、今はWKリーグに対するときめきしかありません」

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さまざまな感情が行き交ったのだろう。彼女はインタビューの間、ずっと目頭を熱くしていた。

8年間在籍したチェルシーFCウィメンを退団した韓国女子代表MFチ・ソヨン(31)が、5月19日、仁川(インチョン)国際空港を通じて韓国に帰国した。

「まだ実感が湧きません。夏にまた荷物をまとめて、(イングランドに)戻らなければならないような感覚があります。季節が過ぎたら実感できると思います」と、率直な心境を明らかにしたチ・ソヨン。

帰国直後、記念撮影に応じるチ・ソヨン

帰国直前には、イングランドで元韓国代表パク・チソン、妻のパク・ミンジ、韓国代表FWファン・ヒチャン(26)と食事をしたという。

「帰国前日にチソンさん、ミンジさん、ヒチャンと食事をしました。みんなが“お疲れ様”と励ましてくれました。“韓国に行っても女子サッカーの発展に役立つよう頑張ってほしい”と伝えられました」

また、「ヒチャンはウォルヴァーハンプトンからロンドンまで来るのが難しかったと思いますが、食事のときに青い花をプレゼントしてくれました。センスのある弟です」とし、「ミンジさんはビタミン、チソンさんはご飯をおごってくれました」と、当時のエピソードを語った。

なかでも、パク・チソンはチ・ソヨンのチェルシーでもホーム最終戦を見守っていた。去る9日のFA女子スーパーリーグ最終節でマンチェスター・ユナイテッドに勝利し、優勝トロフィーを掲げたチ・ソヨン。試合後には優勝メダルをパク・チソンの首にかけ、2人で記念写真も撮った。

「海外生活を続けられた原動力は…」

韓国復帰への意志が強かった。チェルシーの同僚から「“新しい挑戦を応援する”と伝えられました。“終わったわけではない。連絡は続けよう”と」伝えられたチ・ソヨンの頭は、来年7月にオーストラリアとニュージーランドで開催される女子ワールドカップの考えでいっぱいだった。

「最後になるかもしれない来年のワールドカップに集中したい思いがありました。ただ、(韓国復帰を)短期間で決定したわけではありません。長い間考えました。心はいつも韓国に向かっていました」

“チェルシー”という単語が出てくるたびに感情がこみあげてきた。「チェルシーは私を“チ・ソヨン”という選手にしてくれたチームです」というチ・ソヨンは、目を潤ませながら次のように続けた。

「初めてチェルシーに行ったときは、決して強いチームではありませんでした。ですが、入団後、多くの優勝をともにしました。一番記憶に残っているのは、デビュー初年度のFAカップで決勝ゴールを決めて持ち上げたトロフィーです。今季最後のホームゲームも同様です」

チ・ソヨンはチェルシーで背番号10番をつけ、数多くのトロフィーを持ち上げてきた。

在籍8年間で公式戦通算210試合に出場し、68ゴールを記録。この間、FA女子スーパーリーグで6度、FA女子カップで4度、リーグカップで2度の優勝を果たし、昨季にはUEFA女子チャンピオンズリーグ(CL)準優勝も経験した。今季はリーグ戦とFA女子カップの2冠を達成し、有終の美を飾った。

「8年間でトロフィーを13個集めました。成し遂げたいことはすべて成し遂げましたが、CLだけが名残惜しさはあります」というチ・ソヨンは、「世界的な選手たちと争いながら、自分がどれだけ発展できるかがいつも気がかりでした。それに、“自分が長くプレーすれば後輩たちも来られる”という考えも大きかったです。これだ、海外生活を勝ち抜いた原動力です」と打ち明けた。

(写真提供=ロイター/アフロ)今季FA女子カップ優勝当時のチ・ソヨン

日本人もいるWKリーグへ

そんなチ・ソヨンは今、新しいスタートラインに立っている。2011年に日本のINAC神戸レオネッサでプロデビューし、2014年から今季までチェルシーに在籍したチ・ソヨンにとって、自国のWKリーグはキャリア初の挑戦となる。

「チェルシーでプレーしていたからと言って、WKリーグで上手く行くという保障はありません。早く適応するべく努力する必要があります。チームメイトの助けをもらいたいと思います。善良な影響力も届けたいです」

スター1人がリーグ全体に及ぼす影響力は大きい。韓国女子サッカーの看板選手であるチ・ソヨンの復帰がWKリーグに及ぼす影響を無視することはできないはずだ。

「海外での経験を後輩たちに共有したい」と伝えたチ・ソヨンは、「イングランドではファンと多くの時間をともにしました。韓国でもそのような部分が上手く行ってくれたらと思います」と、ファンとの積極的なコミュニケーションの場を設けられることを願った。

いよいよ始まる韓国での新しい挑戦。チ・ソヨンは今後、家族と休息の時間を過ごした後、新チームでメディカルチェックなど入団手続きを行う予定だ。チーム合流後、早ければ7月4日からWKリーグ出場が可能となる。

なお、今季のWKリーグでは、慶州韓国水力原子力に元なでしこジャパン(日本女子代表)MF田中明日菜(34)、水原FCにMF田中萌(26)、昌寧WFCに元なでしこFW木龍七瀬(32)と元なでしこFW安本紗和子(31)、世宗スポーツTOTOにMF櫻本尚子(31)、華川KSPOにDF吉見夏稀(28)と、6人の日本人選手がプレーしている。

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