韓国Kリーグ1(1部)の新シーズン開幕を控え、FWイ・ドンジュン(25、ヘルタ・ベルリン)、MFイ・ドンギョン(24、シャルケ)、FWオ・セフン(23、清水エスパルス)といった若手の主力アタッカーが続々と退団したことで危ぶまれた蔚山現代(ウルサン・ヒョンデ)だが、4試合を終えた現在、堂々の首位に立っている(4勝1分け)。
しかも、4勝のうち1勝は、ライバルである全北現代(チョンブク・ヒョンデ)モータースとのダービーを1-0のクリーンシートで制しての勝利なので、その価値はより高い。
このスタートダッシュには、MF天野純(30)、MFヴァレリ・カザイシュヴィリ(29、登録名ヴァコ)、FWレオナルド(24)の助っ人3人の働きが大きかったが、彼らの輝きを陰ながらアシストしていたのは、ベテランとしてのリーダーシップでチームを引っ張るMFイ・チョンヨン(33)と、元ガンバ大阪のDFキム・ヨングォン(32)だった。
キム・ヨングォンは、昨年ホン・ミョンボ監督が就任した当初から熱望していた選手だが、2年目にしてようやく獲得が叶った“切り札”だ。まだ開幕から4試合しかプレーしていないにもかかわらず、ホン・ミョンボ監督が何故強く渇望していたのかを早くも証明している。
2010年、JリーグのFC東京でプロデビューを果たしたキム・ヨングォンは、昨シーズンまで日本と中国でプレーしてきた。そして満を持して韓国のピッチに踏み込んだ今シーズン、アジアの他リーグよりもパワー、スピードが特徴的なKリーグで、どれほど早く適応できるかに関心が集まっていた。
だが、彼は長きにわたってKリーグでプレーしてきたかのように、早くもピッチ上でスペシャルな存在感を発揮している。11年のプロ生活、2度のワールドカップ(2014ブラジル、2018ロシア)で積み上げた経験は伊達ではないようだ。
現役時代、偉大なセンターバックとして名を馳せたホン・ミョンボ監督がキム・ヨングォンを望んだ最大の理由は、頼れるディフェンスリーダーが欲していたからだ。
昨年まではオランダ人DFデイブ・ブルタイス(31、水原三星ブルーウィングス)がDFラインを統率していたが、シーズン中の波が激しく、仲間とのコミュニケーション力に欠けていたことが弱点だった。
しかし、キム・ヨングォンは期待通り、韓国代表チームメイトとの円滑なコミュニケーションをベースに、チームをリーグ最小失点1位(1失点)に導いている。
また、プロ入り前にフットサル代表にも選ばれた経験を持つキム・ヨングォンは、左利きのセンターバックという希少性と高いパス精度を武器に、後方からのビルドアップで攻撃を牽引している。
事実、蔚山の攻撃のスイッチを入れているのはキム・ヨングォンだ。開幕からの4試合、キム・ヨングォンは279回のパスを成功させ、同部門のチーム内1位に君臨。Kリーグ1全体としては7位にランクインしている。
縦パスだけをみれば130回で、やはりチーム内1位であると同時に、こちらはリーグ4位の回数を誇っている。
なお、キム・ヨングォンよりもパス成功回数が多いのは、スペイン人MFオスマル(212回)、元韓国代表MFキ・ソンヨン(33、155回)、イ・ハンボム(19、145回)で、FCソウルの3選手しかいない。しかも3選手とも中盤より前のポジションという事実が、キム・ヨングォンの攻撃時における貢献度の高さを雄弁に語っているのではないだろうか。
ほかにも、キム・ヨングォンの価値はプレー以外でも際立っている。
天野、レオナルドのように、Jリーグ出身の外国人と日本語でコミュニケーションしながら、チームに適応する上で誰よりも大いに役立っており、試合中、韓国語が不慣れな彼らがチームメイトに伝えたいことがある際は、キム・ヨングォンを経由することも多いという。
2人の助っ人アタッカーが、いかに早くKリーグに順応できるかだけにとどまらず、蔚山現代が今季を大成功で終えることが出来るかは、キム・ヨングォンにかかっていると言っても過言ではない。
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