“アザディのトラウマ”を破ることはできるのだろうか。
韓国代表にとってイラン代表、特にテヘラン遠征は恐怖そのものだ。というのも、韓国はアウェーのイラン戦で過去一度も勝利したことがないからだ。
韓国はアウェーでのイラン戦で通算2分5敗と未勝利。初めて敵地で対戦した1974年以降、7試合で一度も勝っていないのだ。特に、2009年に南アフリカW杯アジア最終予選で引き分けたのを最後に、直近3試合は全敗としている。
加えて、韓国は通算対戦成績でも9勝9分13敗と負け越しており、延長戦の末勝利した2011年アジアカップ準々決勝を除けば、90分で勝利したのは約16年前の2005年にソウルで行われた国際親善試合に遡らなければならない。
つまり、戦績だけを見れば、韓国は事実上イランの餌食と言える。
韓国ではテヘラン遠征は悪名高いことで有名だ。
試合が行われるアザディ・スタジアムは海抜1273メートルの高地に位置しており、適応が非常に難しい。酸欠で体力的に疲れやすく、さらには熱狂的な現地ファンによる一方的な応援は選手たちの士気を下げる。長年、女性のサッカー観戦が禁じられてきたことで、伝統的に険悪な雰囲気が形成されたのだ。
しかも、よりによってイランサッカー協会は、韓国戦で1万人の観客入場を許可することにした。韓国としては嬉しくない話だ。
こうした試合ほど経験が重要となるが、現在の韓国代表メンバーでアウェーのイラン戦を経験した選手はわずか3人。
キャプテンマークを巻くFWソン・フンミン(29、トッテナム)は、2012年10月に行われたブラジルW杯アジア最終予選で途中出場から初めてアザディの芝を踏んだ。その後、2014年11月の国際親善試合、2016年のロシアW杯アジア最終予選にも出場した。現在、最もテヘラン遠征の経験が多い選手だ。
そのほか、GKキム・スンギュ(31、柏レイソル)とDFホン・チョル(31、蔚山現代)も、2016年のロシアW杯アジア最終予選に出場した。この試合では、MFイ・ジェソン(29、マインツ)とMFチョン・ウヨン(32、アル・サッド)もベンチ入りをしていた。
選手だけでなく、コーチングスタッフの経験も足りない。韓国を率いるパウロ・ベント監督はまだアウェーのイラン戦を経験していない。どれほど難しい試合なのか、なぜこれほどにも韓国サッカーが“アザディのトラウマ”に悩まされているかも詳しくわからない。
ベント監督は「まずは初戦のシリア戦に集中し、その後でイラン戦を考える予定だ」とし、イラン戦に向けた詳細な計画については明らかにしなかった。
ベント監督は10月に行われる2022年カタールW杯アジア最終予選2試合の目標を「勝ち点6獲得」と掲げた。ホームでのシリア代表戦だけでなく、イランにも勝利するという覚悟だ。
もっとも、勝利への並々ならぬ意欲を示してはいるが、実際のところ、アウェーのイラン戦では引き分けでも悪い結果ではないと言える。負けることさえなければ善戦したと評価されるだろう。
しかし、9月の最終予選2試合で拙戦を繰り広げ1勝1分と振るわないなか、今回のイラン遠征でも敗れることがあれば、ベント監督の立場も危うくなる。仮にシリアに勝利できたとしても、4試合で2勝1分1敗では本大会出場の確信をつかめないからだ。
ただ、宣言通り本当にアウェーで勝利して勝ち点3を獲得できれば、ベント監督は韓国サッカーに新たな歴史を築いた人物として評価されるだろう。それと同時に自身の立場も確固たるものとし、以降の予選も巡航できる。
あらゆる意味で、アウェーでのイラン戦はベント監督率いる韓国にとって非常に重要な試合となるだろう。
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