蔚山現代(ウルサン・ヒョンデ)と川崎フロンターレによる死闘は、試合以外に防疫面でも輝きを見せた。
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9月14日、アジア・チャンピオンズリーグ(ACL)決勝トーナメント1回戦の蔚山現代対川崎フロンターレが行われた蔚山文殊サッカー競技場。
試合はアジアサッカー連盟(AFC)と韓国プロサッカー連盟の新型コロナウイルス感染拡大防止の勧告を受け、無観客で行われた。
この日、現地を訪れた取材陣の間で注目が集まったのはボールパーソンと担架を務めたメンバーだ。見ると、ホームチームである蔚山現代のフロントがこれらの担当を担っていた。
企画運営チーム長に広報マーケティングチーム長、強化部課長など。主要な責任者から実務者まで8人のフロントスタッフが集まり、4人一組に分かれてそれぞれの任務を遂行した。
無観客開催により、運営スタッフを最小限に抑えたことで可能となった状況ではある。とはいえ、フロントスタッフ自ら担架やボールパーソンを引き受けることは珍しい風景だ。
彼らは互いにぎこちない姿を見せ、最初は表情にも笑顔が見えた。だが、いざ試合が始まると、まるで以前から担架やボールパーソンを務めているかのような一糸乱れぬ動きで、円滑な試合進行に貢献した。
フロントスタッフが担架とボールパーソンを自任した背景には、ホームチームの蔚山現代がスタジアムに出入りする人員を最小化し、防疫に尽力したことにある。
当初、蔚山現代対川崎の試合は開催可否が不透明だった。というのも、韓国政府の保健当局が指定した新型コロナウイルス変異株流行国のリストに、日本が含まれていたからだ。
韓国では今月から新型コロナ防疫指針により、日本から入国する場合はワクチン接種の有無を問わず2週間の隔離を経なければならない。
保健当局は、ACL参加チームであっても隔離免除の例外適用は難しいという考えを示した。これにより、開催地を日本や第3国に変更する話も浮上した。
しかし、これに先立って韓国代表と2022年カタールW杯アジア最終予選を戦うため来韓したレバノン代表との公平性をめぐる議論が浮上した。レバノンも日本と同様、新型コロナ変異株流行国のリストに含まれていた。
結局、Kリーグを管轄する韓国プロサッカー連盟と韓国政府の文化体育観光部が、保健当局と緊密な協議を行った。そして、徹底したバブルシステムと内部防疫を約束したことで、蔚山現代対川崎の試合が予定通り開催されることになった。
多方面の協力によって開催が実現しただけに、蔚山現代はいつになく徹底した防疫プロセスを稼働した。本日(9月15日)、ホームの全州(チョンジュ)ワールドカップ競技場でBGパトゥム・ユナイテッド(タイ)と対戦する全北現代(チョンブク・ヒョンデ)モータースも、川崎戦に向けた蔚山現代の動向を見守ったという。
蔚山現代はスタジアムに出入りする動線を徹底的に区分した。日本から来たメディア関係者は別途の活動区域を設け、日本語の案内板を設置した。また、ピッチレベルで選手と間接的に接触するカメラマンも従来の記者室の使用を禁止し、ピッチの片隅に作業スペースとしてテーブルと椅子を設置した。
ACL東地区の準々決勝と準決勝は10月に韓国・全州で開催される。当然、保健当局が感染拡大のリスクを懸念するなかで国際大会を行うわけだが、今回の決勝トーナメント1回戦をホームで戦う蔚山現代と全北現代が、どれだけ安全に環境を整えて試合を進めるかが関心事だった。
そうしたなか、“トップバッター”の蔚山現代がフロントの献身を土台に、川崎戦を無事終えることになった。
“事実上のACL決勝”とも呼ばれた蔚山現代対川崎フロンターレの日韓対決。最終的にはPK戦の末に蔚山現代が準々決勝に進むことになったが、その裏側にはフロントスタッフをはじめとする各関係者の多大な尽力があった。
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