東京五輪の男子サッカーに挑むU-24韓国代表の輪郭が見えてきた。
韓国サッカー協会(KFA)は6月16日、東京五輪を準備する第2次招集リストを発表。先月末から今月16日まで済州(チェジュ)合宿に招集した30人のうち21人が選ばれた。
言い換えれば9人も脱落したわけだ。その中にはFWイ・スンウ(ポルティモネンセ)、MFペク・スンホ(全北現代)など、バルセロナのカンテラ育ちで、それぞれ“韓国のメッシ”“韓国のシャビ”となぞられえられ期待されていた逸材たちも含まれていただけに、少なからず衝撃も走ったが、今ではオーバーエイジの人選について持ち切りだ。
2018年から東京五輪を目標にしたチームを率いてきたキム・ハクボム監督も、ことあるごとにオーバーエイジ枠をフル稼働させることを明言してきただけに、最終的に誰が選ばれるかに注目が集まっている。
現時点でもっとも有力と思われるのは、ファン・ウィジョ(ボルドー)。かつてガンバ大阪で活躍したストライカーだ。
もともとファン・ウィジョとキム・ハクボク監督は師弟関係。延世大学を中退してKリーグの城南FC入りするも伸び悩んでいたファン・ウィジョの才能を開花させたのが当時の城南FC監督だったキム・ハクボム監督だった。
そんなこともあって2018年アジア大会でもキム・ハクボム監督はオーバーエイジとしてファン・ウィジョを指名し、ファン・ウィジョも大会で2度のハットトリック達成で韓国の金メダル獲得に貢献している。
ふたりの関係は今も良好で、五輪出場経験がないファン・ウィジョもかなり前向きだという。
キム・ハクボム監督は今回、FWオ・セフン(金泉尚武)とFWチョ・ギュソン(金泉尚武)といった長身ポストプレーヤーたちを、不調を理由にあえて最終メンバーから外したが、それはKFAとファン・ウィジョが所属するボルドーとの協議がスムーズに進み、オーバーエイジ招集の了解を得たからだろうとさえ言われているほどだ。
このファン・ウィジョがFW枠のオーバーエイジとすれば、DF枠で有力視されているのはキム・ミンジェ(北京国安)とパク・ジス(水原FC)だ。
2018年ジャカルタ・アジア大会に出場し、韓国の金メダル獲得に貢献したキム・ミンジェは、最近まで行われた2022年カタールW杯アジア2次予選でも優れたパフォーマンスを見せた。
北京国安が派遣を拒否することも考えられるが、仮にキム・ミンジェ招集が叶わなかった場合、代替者はDFパク・ジスとなる可能性が高い。昨シーズンまで中国スーパーリーグの広州恒大に所属していたパク・ジスは、今年3月の日韓戦にも出場していた。
もっとも読めないのは、最後の1枠だ。
例えばサイドバックの人材不足がU-24韓国代表の弱点のひとつとされているが、その穴を埋めるならカン・サンウ(浦項スティーラース)が候補のひとりだろう。W杯アジア2次予選で韓国代表に初選出されたカン・サンウは、左サイドバックを主戦場とするだけでなく、右サイドバックや両ウィング、さらにはトップ下までこなせるポリバレントさもある。
兵役のためドイツ・ブンデスリーガのフライブルクを退団し、古巣の水原三星(スウォン・サムスン)に復帰したMFクォン・チャンフンも、オーバーエイジ枠選出の可能性があるひとりだろう。
現在のU-24韓国代表にはMFイ・ガンイン(バレンシア)、FWイ・ドンジュン(蔚山現代)、FWソン・ミンギュ(浦項スティーラース)など、2列目のタレントが豊富なだけに、ほかのポジションよりも優先度は低いかもしれないが、6月のW杯アジア2次予選で復調をアピールしたクォン・チャンフンにもチャンスはあるかもしれない。
ただ、ソン・フンミンのオーバーエイジ選出の可能性は、残念ながら低いのではないか。
ソン・フンミンは「僕が本当に助けになるのであれば拒む理由はない」と語り、5月下旬にはほかのU-24韓国代表候補たちとワクチン接種もしたが、所属するトッテナムが許可するかどうかは未知数。
むしろ東京五輪はFIFA主催大会ではないため拘束力はなく、ましてトッテナムは過去に、2016年リオ五輪、2018年アジア大会と2度もソン・フンミンのオーバーエイジ選出を許可した。3度目はないと見るのが現実的だろう。
韓国が本大会の決勝トーナメントで激突する可能性のあるU-24日本代表は、MF遠藤航(シュトゥットガルト)、DF吉田麻也(サンプドリア)、DF酒井宏樹(浦和レッズ)と、中盤以降にオーバーエイジ枠を採用した。
果たしてキム・ハクボム監督はどのような決断を下すのか、6月30日の最終発表を楽しみに待ちたい。
(文=慎 武宏)
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