「代表チーム側が一方的に招集するのではなく、Kリーグチームと疎通する場が開かれることを願う」
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蔚山現代を率いるホン・ミョンボ監督は、去る3月16日に行われたKリーグ1(1部)第5節済州ユナイテッド戦の試合前、直近の韓国代表招集に関してこう述べていた。
少し前には「大局的な次元で支援しなければならない」と、代表への積極的なサポートを語っていたホン監督。ところが、数日後には韓国代表の“疎通不足”を指摘するようになっていた。
去る15日に発表された韓国代表メンバーは、全24人中14人がKリーグ所属選手だった。
そして、そのうちの42%にあたる6人(チョ・ヒョヌ、ホン・チョル、キム・テファン、ウォン・ドゥジェ、ユン・ビッカラム、イ・ドンジュン)が、蔚山現代の選手だった。
トッププレーヤーが多く揃う蔚山現代は優勝候補のクラブなだけに、大量選出は予想されていたことだ。一方で、Kリーグ1で4連覇中の王者・全北現代モータースからは、たったの1人も選ばれなかった。
蔚山現代は守護神から前線の攻撃陣まで、主力の半数を代表に派遣することになった。それだけに、ホン監督やコーチ陣、フロントとしては敏感にならざるを得ない。
日韓戦終了後、Kリーグ所属選手は帰国してすぐに坡州のサッカー国家代表トレーニングセンター(NFC)へ向かい、1週間のコホート隔離(集団隔離)を行う。そして、隔離を終えてようやく各クラブに復帰する。
蔚山現代は国際Aマッチ期間終了直後の4月3日に城南FC戦を控えているが、代表帰りで隔離を終えたばかりの主力選手は正常なコンディションで臨めないはずだ。
ただ、ホン・ミョンボ監督が韓国代表について指摘したのはそこではない。
ベント監督は新型コロナの影響で海外組の招集が難しい点を考慮し、国内組を多くメンバーに含めた。選抜の基準として、“直近のパフォーマンスとコンディション”を提示していた。
この時点で、ホン監督はベント監督の選抜に疑問符を付けた。
というのも、ホン・チョルは負傷によって今シーズン開幕からまともに出場していないからだ。開幕後2試合を欠場したホン・チョルは、第3節と第4節で先発出場するも後半途中に交代。今回の済州戦に至っては、招集メンバーすらも外れた。だが、ベント監督は左サイドバックの人員としてホン・チョルを招集した。
ホン監督は「代表でホン・チョルが数試合プレーしているので大丈夫だと判断しただろうが、ホン・チョルの状態は我々が一番正確に知っている。あらかじめ(代表チームと)調整や協議が行われていればホン・チョルは選ばれなかったはずなのに、そのような過程がなかったことが残念だ」と述べた。
実際、複数の専門家は、現在のホン・チョルは代表に行けるほどのコンディションではないと指摘している。むしろ、現体制で選出経験のある全北現代のイ・ジュヨンが選ばれなかったことに疑問を抱いている反応だ。
代表メンバーの選抜は監督固有の権限だ。ベント監督は“全北現代0人”について「我々が追求するサッカー、望む試合と結果を得るにはこのメンバーが最善だった」と、特別な意図はなかったことを説明している。
だが、代表監督は各クラブの監督やコーチ陣と頻繁にコミュニケーションを取ってお互いの希望を共有し、信頼を築く“協力関係”なければならないのも事実だ。
ベント監督は権限通りメンバーを選抜しただけだろうが、選手を派遣する側のクラブからすれば、今回の選抜基準に疑問を感じるのも致しなかったはずだ。
ホン・チョルにしても、果たしてベント監督が提示した“直近のパフォーマンスとコンディション”に合致した選抜だったのかは疑わざるを得ない。
ホン・ミョンボ監督は世代別代表からA代表まで指揮官を務め、韓国サッカー協会でも専務理事を務めた人物だ。すなわち、代表チームのこととなれば、誰よりも先頭に立ってサポートを行うだろう。そんな彼が代表の“疎通不足”を指摘するのだから、客観的に見ても問題があるのは明白なはずだ。
これをめぐり、周囲ではベント監督と各クラブの疎通を協会レベルで増やさなければならないという話も出ている。
実際、かつて代表監督を務めた外国人指揮官は、不定期的にKリーグの監督たちと会っていた。
ウリ・シュティーリケ監督も去る2014年12月9日、当時のイ・ヨンス技術委員長の主宰でKリーグ1の監督と昼食会を行い、主力選手のトレーニング方法やコンディションについて話を聞いた。クラブと選手のやり方を理解しつつ、代表チームに合流させようとする努力も見せた。
ただ、ベント監督はこれまで公式的に一度もKリーグの監督と会ったことがない。
代表監督と自国リーグの監督は垂直的な関係ではなく、一国のサッカー発展のためお互いに助力しなければならない関係だ。代表選手が多いビッグクラブともなればなおさらだ。
こうした点からも、韓国サッカー協会には代表監督と各クラブの監督を結ぶ緻密な架け橋の役割が求められている。
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