数年前から韓国で、熱気を帯びている“マッスル・ブーム”。
便宜上「マッスル」と呼んでいるが、ボディビルダーのようなムキムキの筋肉ではなく、美しく健康的な肉体を目指す女性が増えているのだ。
日本の「筋肉女子」や「ボディメイクブーム」と同じ文脈といえるだろう。
韓国でそのブームのキッカケを作ったのは、“奇跡のDカップ女神ボディ”と呼ばれるユ・スンオクだろう。
もともとはミス・コリア出身のモデルだったユ・スンオクだが、2014年にアメリカで行われた『マッスルマニア・ユニバース世界大会』に出場し、東洋アジア女性としては初の5位入賞を果たした。
その実績と美しく鍛え上げられた“Sライン”が注目の的に。彼女が栄冠に輝いた『マッスルマニア』が韓国で有名になった。
『マッスルマニア』とは、1991年からアメリカで始まったボディビル&フィットネスで鍛えた肉体美を競う大会のこと。イギリス、ブラジルはもちろん、かつては日本でも地区大会が行われたイベントで、年に一度、アメリカのラスベガスで「マッスルマニア・ウィークエンド」なるものも行われている。
韓国では2009年から行われるようになり、ユ・スンオクたけではなく、多くのマッスル美女たちがそのステージに立っている。
例えば“脱アジア級美ボディ”と称されるレイヤンだ。
2007年の釜山ミス・コリア選抜大会で1位となり、2015年マッスルマニア・ユニバース世界大会選抜戦では、スポーツモデル部門とミズビキニモデル部門の2冠を達成。
その年に出演した通信会社のテレビCMが話題になり、今やはタレントとしてだけではなく、女優としても活躍している。
2016年にはキュートなマッスル美女が脚光を集めた。2016年4月の『マッスルマニア世界選抜戦』で4冠に輝いたチェ・ソルファがその一人だ。
もともとはやせ細っていたが、中学2年生の頃からバレエを習い始め、ボディシェイプ。以降10年間、バレエをやりながらセクシーでスレンダーな女性らしい美ボディの基礎を作った彼女は、美しく伸びのあるボディラインを作るためにポールダンスも始めたという。
そんな苦労を経て作り上げた“美ボディ”が次の写真でもある。
一見すると少女のような風貌と“美ボディ”のミスマッチは大きな話題になった。
チェ・ソルファはその後、フィットネス・タレントして活躍。
プロ野球の始球式などにも呼ばれて披露した“開脚投球フォーム”は、日本の写真週刊誌でも紹介された。
また、今年8月には自身の名を冠したフィットネスジム「ソルファ・ジム」をオープン。
チェ・ソルファは、ジムのオープンに合わせて自身のYouTubeチャンネルも開設し、ユーチューバーとしても活動している。
このチェ・ソルファと同じようにマルチな活躍を見せているマッスル美女がイ・ヨンファだ。
彼女も『マッスルマニア』出身。2017年4月に行われた『2017 MAX Q マッスルマニア・オリエント・チャンピオンシップ』でファッションモデル女子部門のグランプリを獲得した。
『マッスルマニア』はボディビルディング部門、個性的で美しい筋肉を審査するフィジーク部門といった男性部門だけではなく、 ポールダンスなども披露するフィットネス部門、文字通りビキニが似合う美ボディを競うミズ・ビギニ部門といった女性たち限定のコンテストもある。
イ・ヨンファはスタイルの良さに加え、健康的な美しさを兼ね備えていることが条件となるファッションモデル部門で見事にグランプリに輝いているわけだ。
しかも、彼女は単なる“美ボディ”の持ち主ではなかった。突発性難聴と耳管開放症というハンディキャップを乗り越えて、見事にグランプリに輝いたのだ。そのため、韓国では“感動マッスル美女”と呼ばれている。
そんなイ・ヨンファは日本でも取り上げられている。今年2月には日本の『週刊プレイボーイ』でグラビアも披露。日本テレビ系列のバラエティ番組『人生が変わる1分間の深イイ話』にも出演した。
現在、イ・ヨンファはモデルやフィットネス・タレントとして活動する傍ら、ソウル大学のデザイン学科で講義も行っている。
もともとデザイナーとして活動していたこともあるが、彼女が講師に抜擢されたのは、フィットネス大会での受賞以降、人気と知名度が急上昇したことと無関係ではないだろう。
その一方で、チアガール、ミス・コリア、そして大学の客員教授など、もとの経歴とは想像もつかない“美ボディ”を作り上げ、そのギャップが話題になった“マッスル美女”たちも多い。順に紹介していこう。
まずはチェ・ミジン。
彼女は韓国プロ野球のKIAタイガースをはじめ、プロバレーボール(Vリーグ)、プロバスケットボール(KBL)などでチアリーダーとして活躍している。
身長170センチということから“長身チアドル”、“美脚の健康美女”と言われる存在だ。
そんな彼女が筋肉美を磨くほかの女性たちに刺激を受け、本格的なトレーニングを開始。ボディビル国際大会出場歴もあるパーソナルトレーナーからレッスンを受けて体作りに励んだ結果、『2017 マッスルマニア・アジアチャンピオンシップ』のファッションモデル部門で2位に輝いた。
「自分の限界に挑戦したくて『マッスルマニア』に出場しました。今は達成感でいっぱいです」という受賞のコメントは、野球ファンはもちろん、一般女性たちを大いに感動させたという。
このチェ・ミジンが“元気ハツラツ系”だとすれば、ソン・ソフィは韓国の伝統美を備えた“マッスル女神”だ。
というのも、ソン・ソフィはもともと2015年の『ミス・コリア慶南』で「美」部門グランプリを受賞したモデル。ミス・コリア受賞後、たまたま『マッスルマニア』の存在を知り、出場者たちの輝かしい笑顔と美しい肉体美に惹かれて、トレーニングするようになったという。
そして2016年にラスベガスで行われた『マッスルマニア』世界大会でコマーシャルモデル部門4位に入り、2017年4月には『マッスルマニア』韓国大会でミズビキニ・トール部門1位に輝いた。
まさに本来の美しさを土台に、肉体美まで身に着けたパーフェクトウーマンだろう。
ただ、“才色兼備”という点ではアン・インソンの右に出るものはいないかもしれない。何しろ彼女は名門・西江(ソガン)大学の教鞭に立つ客員教授なのだ。
西江大学は、韓国でも有名なカトリックのミッション系大学で、ソウル大学や高麗(コリョ)大学、延世(ヨンセ)大学らと肩を並べる名門大学として有名だが、アン・インソンはその西江大学で心理学を教えているのだ。
しかも、彼女はフィットネス大会での受賞歴も華々しい。
2017年9月に行われた『マッスルマニア』では、フィットネス大会初出場にしてコマーシャルモデル部門とミズ・ビキニ部門で1位を獲得。
同年11月にアメリカ・ラスベガスで行われた『マッスルマニア』世界大会でも、コマーシャルモデル部門4位に入賞を果たしている。
2018年4月の『マッスルマニア』でも、ミズ・ビキニ・トール部門4位入賞を果たしたことからも、彼女がトレーニングに本気で取り組んでいることがわかるだろう。
アン・インソンは言っている。
「身体が元気になると、心もポジティブになります。例えば、憂鬱な気分のときは散策をしてみなさい、楽しいことをしてみなさいといいますが、それすら楽しめないときもありますよね。そういうときは、運動をして身体を動かすと、不思議と心も晴れるんです。
今もまだ勉強中ですが、少なくとも、心と身体は密接に関係している。そう確信しています。
最近は韓国でも、心の病気が増えていますし、自殺も絶えません。そういった人たちを幸せにできる方法を研究したいと考えるうちに、思い立ったのが、まずは自分を実験台にしてみようということでした。自分が実験台となって体を鍛えてみようというわけです」
この研究を進めるうちに、心や身体の不調で悩んでいるひとが多いこともわかったので、その悩みや苦しみを解決できる方法を見つけられるように、今後も研究を続けていきたいですね」
アン・インソンだけではない。多くのマッスル美女たちが、「体作りは自分と向き合い、心身を鍛える過程でもある」と語っている。『マッスルマニア』を機に世に飛び出し、多くの人々から憧れと尊敬の眼差しを集める韓国の“マッスル美女”たち。ある意味で彼女たちは、時代が求める新しい“ミューズ(女神)”たちなのかもしれない。
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