Kリーグ王者の本拠地でさえも“田んぼ状態”だった。アジア最高峰の舞台で韓国国内の劣悪なピッチコンディションが露呈した。
韓国代表が北中米W杯アジア最終予選を戦ったソウルワールドカップ競技場をはじめ、韓国国内の各スタジアムは今夏、深刻な“芝の損傷”に苦しんだ。
例年にない長期的な猛暑が芝の生育に大きな影響を及ぼしたこともあるが、根本的には“スタジアムの環境”が問題視されている。
韓国の大半のサッカー専用スタジアムは2002年日韓W杯に合わせて建設され、そのほとんどに屋根が付けられている。
ただ、見た目は美しいスタジアムでも、大半のピッチ面が外部の地面より低く作られた。風通しなど芝の生育と関連した科学的接近がなされないまま設計されたわけだ。
また、大半のスタジアムで、欧州で主に使用されるケンタッキーブルーグラスを敷かれている。ただ、寒地型の西洋芝とあって韓国の高温多湿な気候に耐えられず、深刻な損傷に繋がっている。
Kリーグ1(1部)2連覇中の王者・蔚山(ウルサン)HD FCの本拠地・蔚山文殊(ウルサン・ムンス)サッカー競技場のピッチコンディションも非常に深刻だ。
9月18日に行われた川崎フロンターレとのAFCチャンピオンズリーグエリート(ACLE)リーグステージ初戦は、「Kリーグが最悪のピッチコンディションで行われている」ということを国際的に広報する格好になった。“国際的な恥辱”にほかならない。
劣悪な芝はホームの選手も苦しめた。前半14分、DFキム・ヨングォン(34)は自陣でロングボールを試みるつもりがないように見えたが、味方のパスがでこぼこした芝によって跳ね上がると、相手のプレスを受けたこともあって前線に大きく蹴らざるを得なかった。
その2分後には、FWキム・ミンジュン(24)が右サイドのタッチライン付近でドリブルをした際、ボールが思うように転がずロストしてしまった。
対する川崎Fもピッチ状態が戦い方に影響を及ぼした。鬼木達監督は「(芝の影響で)お互いにミスが多く出る難しい試合だった」と話す。
日本は韓国よりもさらに高温多湿な気候だ。しかし、多くのスタジアムはグラウンド設計の過程でピッチの下に冷水・温水を流す設備を設置するなど、科学的接近に基づいて韓国より優秀な芝を保有している。
川崎Fで9年目のシーズンを過ごす元韓国代表GKチョン・ソンリョン(39)は、「昨年も(蔚山で)プレーしたことがあるが、(芝の状態が)さらに悪くなった。最も大きいのは選手の負傷を心配することだ」と指摘した。
17日にはACL初出場の光州(クァンジュ)FCが光州ワールドカップ競技場で横浜F・マリノスに7-3で勝利したが、やはり同会場でも劣悪なピッチコンディションが問題視されていた。
プロの選手が、自分のパフォーマンスを100%発揮できない環境でファンと向き合うのは理屈に合わない。
今回の試合は、ブラジル人FWマルシーニョ(29)の決勝点で川崎Fが1-0と勝利を収めたが、両チームの全員が“最悪の芝”で自身の技量を最大限発揮できなかったことに不満を示した。
7月から蔚山を率いるキム・パンゴン監督も「(このような環境で)選手に何と言うには公正ではない」とし、「もう少し良い環境で試合をしたい」と残念がった。
鬼木監督は「プロ同士の試合は勝敗がかかっているだけでなく、毎回観客に最高のプレーを見せなければならない。だからこそ、今日は残念だ」と声を上げた。
蔚山も、スタジアム管理の主体は市の施設管理公団だ。施設チームなど約20人の関係者がピッチ状態の改善作業に努めているが、“田んぼ状態”の改善に関する根本的な対策がない。
蔚山の関係者は「公団側と引き続き芝問題を話している。最大限改善するよう努力する」と話した。
蔚山文殊サッカー競技場で次に試合が行われるのは、来る10月6日のKリーグ1第33節の金泉尚武(キムチョン・サンム)戦だ。ACLEでは同月23日、ヴィッセル神戸が同会場で蔚山と対戦する。
(構成=ピッチコミュニケーションズ)
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