まさに「リアル宮城リョータ」だ。河村勇輝(24)が新天地シカゴ・ブルズでも力強いアピールを披露している。
昨季まで在籍したメンフィス・グリズリーズから放出となる苦難を味わった河村は、今夏のサマーリーグで”底辺”から再びNBAへとチャレンジ。ブルズでの熾烈な生存競争で生き残り、7月20日に2Way契約を締結した。サマーリーグでは5試合平均10.2得点、6.2アシスト、2.2スティールを記録した。
そして迎えたプレシーズン初戦。10月8日に行われたクリーブランドキャバリアーズ戦で、河村は約14分の出場で3得点5アシストをマークし“及第点”を得た。この活躍により、NBAレギュラーシーズンでのロスター入りの可能性も高まった。
身長172cmでNBAでは小柄な河村だが、彼の武器は爆発的なスピードと広いコートビジョンだ。キャバリアーズ戦でも第3Q終盤に登場すると、鋭いスピードでゴール下に入り込み、正確なバウンドパスでザック・コリンズのツーハンドダンクをアシストした。
「チームメイトを活かす能力」こそ、河村の最大の強みだ。コリンズへのピック&ポップからの3点シュート、ジェヴォン・カーターへのコーナースリーを演出し、速攻ではクォーターバックのように正確なロングパスも届けた。
小柄さもハンデにならなかった。195cmのキリアン・ヘイズをスピードで振り切り、さらに203cmのトリスタン・エナルナが全力でブロックに跳んだ場面でも、河村は落ち着いて3点シュートを沈めた。
終了7秒前、118-117とブルズがリードした場面では、ステップバックから3点シュートを放つ“強心臓ぶり”も見せた。惜しくもシュートは決まらなかったが、その後キャバリアーズが最後の攻撃で失敗し、ブルズが勝利を収めた。
2Way契約のため、シーズンの大半は下部リーグ(Gリーグ)で過ごすものと見られている。それでも、“身体能力の怪物”がひしめくNBAの舞台で、低身長のアジア人選手が存在感を示していることは驚異的だ。河村のコートビジョンとパス、スピードはNBAでも通用するレベルにある。
何より、ドラマ性を高めているのはチームとの縁だ。
河村が加入したブルズは、韓国でも大人気のバスケ漫画『SLAM DUNK』において、湘北高校バスケ部のユニホームなどのデザインに大きな影響を及ぼしたとされている。
同作が大ヒットした1990年代は、アジア人がNBAでのプレーを夢見ても笑われた時代だった。ただ、その夢が30年後に現実のものとなった。ブルズのユニホームを着てコートを縦横無尽に駆け回る彼の姿はソン・テソプ(宮城リョータの韓国名)を彷彿とさせる。作中の宮城も身長は168cmで、河村とはわずかに4cm差。唯一、背番号が宮城は7番を着けているのに対し、河村は8番を着用している。
映画『THE FIRST SLAM DUNK』では、宮城が高校時代にアメリカへバスケ留学する設定も描かれたが、漫画の中で成し得なかった宮城の“NBA進出”を、河村が現実で体現したと言える。作者の井上雄彦氏は現在も、『SLAM DUNK』の印税の一部などを原資とし、日本の有望なバスケ選手をアメリカに留学させる「スラムダンク奨学金」を運営している。
ブルズでの河村の活躍を目の当たりにした日本のファンたちは、「『SLAM DUNK』ファンとして、ブルズのユニホーム姿を見るだけで涙が出る」「マイケル・ジョーダンがいたチームに日本人が入団するなんて感動だ」「大谷翔平と並ぶ日本の宝だ」といった喜びの声を挙げている。
河村のNBA挑戦は日本だけでなく、同時代を生きる韓国の選手たちにとっても大きな刺激になるに違いない。
(記事提供=OSEN)
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